ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんのつよきす3学期 Full Editionの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
つよきす3学期 Full Edition
ブランド
CandySoft(きゃんでぃそふと)
得点
84
参照数
254

一言コメント

ライターさんが変わりどうなることやらと思っていたが、想像以上に出来が良かった。それも個人的に無印よりも。ギャグのキレとノリはやや劣りはするものの、個別シナリオに関しては明らかに出来が上がっている。ライターさんの無印への愛が伝わってきた、ありがとう

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

二学期があまりにも酷すぎたのでだいぶ期間を空けてからのプレイになってしまったが、なんで今までやらなかったんだろう、そう自分を責めずにはいられないほど、笑えて泣けてどっと寂しさが押し寄せてくるような作品だった。もう本当に楽しかった。

一学期の時のキャラ性を遵守しながら、話もそのキャラを腐らせぬように展開していく。まさにあっぱれ。好みの問題だが私はこちらのライターさんの解釈がとても馴染んだ。

一学期の時に比べて個別√の出来がはるかに上がっているのだ。その分、ギャグのキレやノリというは幾分か劣っていたが、私としては個別√の話がきっちりしている方が好みなので本作の方が良かった。

また、√分岐した後も主人公とヒロインだけでなく、周りのキャラの様子がしっかりと描かれていく、これも良い。こういった描写は勿論、一学期の時にもあったが、本作はより繊細に描かれているように感じた。

二人が好き合っていることを知り、いきなり後押しをするのではなく、各キャラが本当の気持ちを一度表情に出す。そして一呼吸置いたところで後押し、祝福をする。これが実に丁寧で、そのキャラの√でもないのに、そのキャラに目が言ってしまうこともしばしば。

ああ、このライターさんは一学期の時からつよきすのキャラ達が本当に大好きで、一人一人を大切にしていきたかったんだなというのがよく伝わってきた。二学期のこともあるので尚更。

二学期から登場した素奈緒、瀬麗武も、お前らこんなに可愛かったのかと言わんばかりのキャラ、エピソードを持っている、驚いたと同時に嬉しかった。よくぞここまで持ち直したなと、ライターさんにはどこまでも感謝の気持ちでいっぱいである。

おまけシナリオに関しては正直要らなかったものも多いが、グランドEDにはやられた。まさかあのタイミングでIsolationを流してくるとは…。曲が流れ始めた瞬間、涙が流れるよりも先に呼吸が苦しくなった。嬉しすぎて呼吸困難、なんと無様で、なんて幸せなんだろう。



そろそろ√ごとの感想…は長くなりすぎるのでキャラクターごとに軽く感想を語っていきたいと思う。

●乙女さん
相変わらず厳しい。でも時たま見せる天然っぷりにやられてしまう。先輩キャラとしてレオ達より一足早く卒業していった。瀬麗武への引継ぎも含めて最後まで風紀委員長としての職務を全うしてくれた。お疲れさまと一番言いたいキャラだ。√は個人的に乙女さんの我が強すぎて少し嫌気がさす瞬間こそあったものの、熱さに富んだ良い話だったと思う。

●甲殻類
そうそうこのやかましくてうるさいところがこいつの良さなんだ。一学期の時からそうだったがこいつが調子に乗る瞬間、人を煽る瞬間というのがいつもツボに入ってて、それは本作でも同じだった。もうケラケラ笑った。バスケの試合でのレオとのタッグは必見。あれだけ足を引っ張り合っていたのに…幼馴染らしさが光った場面でもある。

√に入ると完全にヒロインになるのも一学期の頃と同じく何とも可愛らしい。まあ√に関して話すとスバルの話になってしまうのでこの辺で。

●なごみ
クーデレちゃん。また”センパイ”が聞けて私は嬉しい。この娘の√もより私好みのシナリオになっていて、問題解決までの流れが以前よりも自然で違和感のないものになっていた印象を受けた。ただ、人との境界線という私が一学期で好きだった話がやや削られていたのは残念かなと。まあ、あんまり詰め込み過ぎても仕方ないのだが。

●姫
容姿端麗、暴虐武人。まさしく姫。改めて見るとすごい濃いキャラだなと思う。でも不快感はなく、むしろ…。本作では前とは打って変わって非常に女の子らしいシナリオが練り込まれていた。始めこそ、うん?と思ったが、これはこれで違う角度から姫が見ることができ、新しい良さも発見できたから良かったかなと。しかし”姫らしさ”は薄れてしまったので人によって評価は分かれそうではある。

●よっぴー
他のキャラが濃すぎなのであれだが、よっぴーは相当可愛い。たまに毒を吐いたりするのも…とても良い。大幅に改良された√の一つ。この娘の√に関しては絶対にこっちの方が良いと自信を持って言える。最後のシーンなんか彼女がようやく救われたような、そんな気持ちに包まれた。

●瀬麗武
クーデレ枠で被るじゃんと思いきやそんなことはない、彼女は言うなれば”ちょろイン枠”なのだから。レオに好かれたいがため、無意識に彼の話題に合わせようとするその行動の一つ一つは恋する女の子のそれ。この娘はこんなにも可愛かったのかと、株が爆上がりした。武人+キスをせがんでくるのコンボは効く。ギャップ萌えというやつかな。

●素奈緒
これは二学期の頃から思っていたのだが、一学期の時点で”定番のツンデレ”という超メジャー属性を欠いたいたという事実が未だに驚きだ。強気な子はいたけれど、こうもわかりやすい定番ツンデレはいない。

だからこそ浮かないか心配でもあったがやはりツンデレは強かった。いや、私が好きなだけなんだが、もーたまらなかった。他の√でレオが誰かと付き合うことになると気付くたびに表情をゆがませていたのが非常に印象的だ。蟹√なんかはそれが顕著に見られた

学生らしいカップルという点ではこの娘とレオが一番お似合いだったのではないかと思う。中学の時の回想をその都度入れてくるのにも愛を感じた。合わない性格だから付き合わないんじゃない、付き合っていく上で合わせていく。なんとも初々しくて眩しい二人だった。

●フカヒレ
愛すべき馬鹿。つよきすはやっぱりこいつがいないと。こいつの面白さとかっこ悪さはいつ見ても一級品だ。そしてどの√でも地味に登場して、地味に活躍する。こんな仲間が欲しかったで賞はこいつで決まり。

こいつの欲に塗れた面白い行動はたくさんあるが、個人的に後ろから女子の手帳を覗き見て、記憶するという行為が気持ち悪すぎて笑えるし、なによりその後のよっぴーの反応が面白い。

●スバル
最高の親友キャラ。やはり私は伊達スバルというキャラが大好きなようだ。四人の中で誰よりも友達想いで、誰よりも熱い男。彼の思いやりというのはどの√の、どの場面が~という話ではなく、作中の全場面で見られる。さりげなくレオを助けたり、蟹を抑えたり、フカヒレを気遣ったり。三人の親のような存在なのだ。

そして三人の誰かがピンチあるいは危険が及んだ時には激しく怒る。普段温厚な彼だからこそ、そういった場面は印象に強く残り、それを見るたびに彼の想いの強さというものを思い知る。

そんな魅力的なキャラである彼に一番スポットを当てられる√が蟹√。これは一学期と同じ。しかし話の展開が全く違う、私はこちらの方が好みだった。一学期の時に見られた殴り合いというのも青春らしくかなり好きだったが、こちらはこちらでスバルの優しさに満ちた良い話だった。本音でぶつかり合う熱さはないが、友を想って苦しむ、そんなスバルの姿に心を打たれた。

バスケの試合が終わった後に言った「決着、着いちまったか」という台詞に始まり、フカヒレにだけ失恋の涙を見せたりするのがまたなんとも。極め付けはテラスでの会話。特にタイムマシンの下りは気付いたら涙が流れていた。本作で一番好きなシーンだ。彼の友達に対する想い、生き方がはっきりと示されたと思う



彼らの物語はここで終わりと思うと悲しいし、寂しい。終わった後すぐにボイスメッセージのページに飛んだがこれまたくるものがあった。またいつの日か彼らに会えますように…