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asteryukariさんのギャングスタ・リパブリカの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
ギャングスタ・リパブリカ
ブランド
WHITESOFT
得点
78
参照数
240

一言コメント

物騒なタイトルからは考えられないくらい温かさに満ちていて、読後はもっと彼らの世界に浸っていたと思うように。「仲間」という存在が魅力的に描かれた良い作品でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「悪投どもの共和国」ということでOPの弾け具合といい、何やら危ない予感がする本作だが、いざプレイしてみると凄く優しくて温かい空間が広がっていた。

主人公こと時守叶は幼い頃の体験から「悪」に憧れているちょっぴり痛いタイプのキャラクターで、そんな彼が中心となって活動している篤志部こそが本作の舞台であり、メイン…というより全てと言ってもいいかもしれない。「悪が世界を変える」のスローガンの下で行動する変わり者たちの軌跡が描かれていた。

主人公の仲間という事でヒロイン達もまともではないのかというとそうではない。半分は常識人で半分は変わり者といったところか、なかなかバランスが良かった。まずは常識人である所のこおりと希について語っていく。

こおりはよくいるタイプであり、私の好物でもあるツンデレ幼馴染で、叶を悪の幻想から解き放とうと日々尽力していた。叶がいるから部活に身を置いているし、叶が好きだからいつも何かと声をかけてくる。何とも可愛らしい女の子だ。まあ大好きなタイプなので他ルートへの分岐の為に彼女の誘いを断るのがとても辛かった。

そして希はというと先生であり妹であるという中々にぶっ飛んだ設定をしていた。ろりっこ教師はさほど珍しくないが、妹が飛び級してそのまま教師になっているパターンはわりとレアなのではないだろうか。学校にいる時と家にいる時でオンオフを使い分けている感じが凄く良かった。彼女もまたツンデレさんなので、そういう身だと立場は違えどこおりとよく似ている。

で、次に変わり者組についてみていくがまずはゆとりについて。ギャング部の部長という事でまあ変わっていて、個人的にも感情を読み取るのが一番難しいキャラクターであった。他のヒロインはデレるとすぐに赤面し、叶のペースに乗っけられてしまうのだが、彼女はわりと自分のペースを崩さないようなタイプだった。まあ、だからこそ彼女のルートで明かされる秘密には驚かされたが。彼女がなぜ部長の地位にいるのかがよく分かる。

そして、禊ちゃんだ。一目見た時から可愛いと思っていたが…単純にキャラクターとして萌えたという意味では彼女に勝るヒロインはいないかと。個人的にこおりちゃんも好きだったのだが、告白シーンで完全にやられてしまった。普段そっけない彼女だからこそ、叶がこれまで行ってきた事に対して、一つ一つ丁寧に感謝の言葉を述べた後に告白という流れが映えたのだと思う。



とまあ軽く振り返っても魅力的なヒロインばかりの本作だったが、ただ可愛いヒロインがいたから評価しているわけではない。シナリオの方もきちんと面白かったからこそ評価しているわけだ。

一部をやった時点ではキャラクターの可愛さを前面に押し出しただけの作品かと、多少落胆したりもしていたわけだが、二部になるとこれまで語ってきた「悪」と隠れていた「ループ」の設定が上手いこと調和し始めて、純粋に読むのが楽しくなっていった。

また、二部では特定のヒロイン同士が対立し、互いの考えをぶつけ合う事になるわけだが、それも一過性のものではなくちゃんとシナリオに絡めているのが非常に良かった。対立関係を描くことで、各々のキャラクターの感情や信念が曝け出され、その結果、仲間同士の繋がり「絆」というものも深まっていく。まさに悪なのに共和していたわけだ。この辺の話運びが本当に上手かった。

正直、途中まではキャラクターが可愛いだけの作品だと思ってプレイしていただけに、良い意味で予想が大きく外れた。それにより生まれた不明点や不満はあるものの、気持ちとしては充分満たされたかなと。読んでいて楽しい作品だった。