ただ女体化させるだけでなく、親友から彼女へと変わっていく過程が丁寧に描かれていた。振り返ってみるとTSモノの中でも、かなり自分好みな作品だったなと。
自他共に認める最強の不良である青年が、ひょんなことから女体化してしまう。本作はいわゆるTSモノであり、読み始める前はブランドの色も含めて恐らくはただただHシーンが連なっていくだけの作品なのだろうなと思っていた。しかしながらそんな事はなくて、プレイ後に偏見の目で見ていた自分を恥じるくらいにはよくできたお話であった。
何がそんなに良かったかというと、それはすばるが最強の不良から、やがて親友の女になっていくまでの過程だ。女体化し、共に生活していく事で不良時代には気付かなかった親友の優しさと逞しさに触れ、次第に心惹かれていく。それが非常に丁寧に描かれていた。
まあ、身体が初体験から感じてしまうわけだが、即オチ肉便器などにはならず、その後もしばらく男としての意識が続いてくれたのが非常に嬉しい。親友としては好きだが、あくまで男×男なのだと、そう自分に言い聞かせながらも、ふとして時に自身を女だと感じてしまう瞬間がある。その揺れ具合が本当に絶妙で、そんな葛藤が描かれているシーンの数々は見事に私の心を昂らせてくれた。
そして、こんなにも良い作品に仕上がったのはやはり「親友」という設定を用いてくれたからなのかなと。女体化不良×オタクや女体化不良女×おじさんといった類ではこの良さは生まれなかっただろうし、それこそ単なる抜きゲーになっていただろう。元々、仲が良くて人として好きな状態から始まっていたからこそ、こんなにも愛に満ちた物語になったのだ。
すばるが女として生きることを決断するシーンは本当に素敵で、「女のままの方が、都合がいいんだよ」と、ツンデレの鑑みたいな告白をする彼女を見て何とも言えない幸福感に包まれた。喧嘩だけが生きがいの不良くんは、いつの間にか立派なヒロインに変わっていたのだ。
女の悦びを教え込んでくれただけでなく、女として人を愛する気持ちまで目覚めさせてくれた。そんな彼を絶対に逃がすまいと、告白後は何かが吹っ切れたようにえっちする彼女は本当に幸せそうで、彼女の選んだ答えは決して間違っていなかったなと、ちょっとした感動すらあった。女になったことの証か、ボテ腹までやってくれるのは素晴らしいとしか言いようがない。この手のジャンルでここまでやってくれる作品は中々ないと思う。
久々に設定が自分の中で上手く嵌ったと感じる作品であった。内容としては深みなんてないし、ジャンルとしてもかなり狭め。しかしだからこそ、好きな人はとことん褒めちぎってしまうと思う。素敵な作品をありがとうございました。