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asteryukariさんのアオリオの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
アオリオ
ブランド
ad:lib
得点
72
参照数
191

一言コメント

部活動を売りにした作品ではなく、あくまで学園ものらしさを描くことに注力していた。ほろりと泣けるお話や腸が煮えくり返るようなお話もあり、それなりに楽しむことができたかなと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

入学直後に入院したため、クラスに馴染めず孤立していた主人公。そんな状態で学校生活を過ごしてる人間が突然、美少女に手を差し伸べられたらそりゃあ掴むに決まっているわけで、見事に何もわからいまま演劇部に入部していた。

 

本作の演劇部はあくまでみんなで集まる場所として存在していて、他作品で見られるような皆で協力しコンクールを目指すような本格的なものではない。その代わり「場所」としては凄く良い役割を果たしていて、この演劇部で過ごす時間は本作の大きな魅力となっていた。何がそんなに良かったのかというと、学園ものに必要なイベントが豊富に盛り込まれている点だ。

 

皆で何処かに遊びに行ったり、舞台が成功した後は皆で打ち上げをしたりと学園ものでほしい光景がしっかりと詰まっていた。打ち上げもお店でなく主人公の家でやるところがまた良くて、皆で卓を囲みながら酒を飲み飯を食らう彼女達はとても楽しそうだった。

 

そうして他の部員たちと交流を深め、距離も近づいてきたところで個別ルートへと派生していくわけだが、共通ルートの尺が長めだったのに対し、個別ルートはやや短めであった。どの話にも言えることだが、ここからというタイミングで終わってしまっていたので、もう少し粘ってほしかった名という気持ちが強い。ただ、それを加味しても良いルートだと思える話も揃っていたので、良いなと感じたルートとそれから酷過ぎて唖然としてしまったルートの二つについて書き綴っていきたいと思う。

まず良い方について、真紀ルートと迷うところではあるが私としては由佳ルートが非常に印象的だった。ヒロインの由佳に関して語ると、まあ単純に可愛いの塊みたいな女の子で、強気で真面目ながら弱る時はとことん弱るという性格がとても愛らしかった。付き合うまでの流れも実に私好みで、ちょっぴり強引な彼女の告白を見て悶えずにはいられなかった。「私と付き合うのが嫌なの」なんて、そんな表情と声色で言われたら落ちない男などいないだろう。

 

付き合った後の恋愛描写こそ特筆すべき点はないが、彼女の家庭事情に目を向けた部分の話は凄く良かったと思う。両親を失った者同士が寄り添い、お互いがお互いの事を考えながら、支え合って生きている。血の繋がりこそないが、その関係性はまさしく家族であった。奈々さんがそれまで少し厄介なお姉さん的な立ち位置にいたからこそ感動も大きかったのかなと。ただ、だからこそ二人の話をもっと読んでいたかったという気持ちが強い。恋愛メインの作品なので仕方ないかもしれないが...。

 

次に酷かった方のルートについて、これはまあプレイした方の誰しもが感じただろうが、更紗ルートになる。実は宇宙人であったという事実だけでも中々にぶっ飛んでいるのに、これまで描かれてきた爽やかな学園生活、青春の日々といったものをぶち壊すような無駄シリアスをぶっこんでくる。本当に何がしたいのかわからないお話だった。良かったところと言えばHシーンがやたらえっちだったことくらいだろう。

 

といった感じで共通部分は良かったものの、個別ルートは良い部分がいまいち伸びていかず、終いには最悪な爆弾を打ち込んできたといった感じの作品であった。