タイトルが良くできていたと思います。純愛は時に美しく、時に儚い。
エロゲをプレイし始めた時から認知はしていたのですが、不良ものということで好きになれなそうだと思い、手を出せずにいました。しかしプレイしてみると登場キャラが皆可愛く魅力的で、会話も面白い。それでいてギャグだけでなく熱い場面と切ない場面があり、まさか涙を零すとは思いませんでした。この作品は実に内容がタイトルに合致していて、シナリオによって攻略対象のキャラこそ違いますが、どのシナリオにおいても辻堂さんの主人公に対しての想いは変わらない。まさに“辻堂さんの”純愛ロードなんですよね。ただこの作品に不満があるとすれば主人公ですかね。人の話を聞かない、感情が理解不能、自分のことは置いておきながら相手のことは攻めまくる、頭おかしいんですよね。それ故にヒロイン達が主人公に惚れる要素がわからない、そういった部分は大きかったと思います。しかし話自体は面白いので主人公の不快さに耐えられれば満足のいく作品になると思います。
三大天の三人の√について、まずは辻堂愛√についてですが、辻堂さんは本当に良い子なんですよね。彼女の良さが真に発揮されるのは他√だと思っているのですが、この√は必要不可欠ですし、この√があるからこそ他の√で彼女が映えます。そして何よりも可愛い。不良としてこれまで生きてきた彼女が新しい世界に触れ、見える喜怒哀楽は無邪気な女の子のそれで、だからこそ誰よりも別れることを怖がってるし、主人公を大切に想ってる。そんな彼女に対して自分は部屋に女を置いておきながら、嫌だから不良はやめてほしいと言う主人公、そのことを辻堂さんが指摘しても主人公わけのわからない誤魔化しを続ける。もう悪い男に騙された健気な女の子にしか見えませんでしたし、それでもなお主人公を好いている彼女は見ていて辛かったです。この√は主人公の自分勝手さが非常に目立つ√のため、好きになれませんでしたが、辻堂さんの女の子としての魅力が溢れた√だったため終始モヤモヤしていました。
次に片瀬恋奈√ですが、可愛いし熱かったです。三人の中では一番好きなヒロインですね。日頃は傍若無人でありながら実は努力家であり、仲間想いであり、乙女らしい初心な反応を見せる。そりゃあれだけ人が集まりますよね。ついでにツンデレテインテールと来たら私も好きになっちゃいますよね。主人公とは流れでキスしていたら好きになっていったというクソみたいな展開で付き合い始めるのですが、彼女が幸せそうなので許しました。前述したようにこの√でも辻堂さんが重要なキャラであり、別れる理由が主人公がヤンキーにはなれないから、辻堂さんとは合わないからって別れたのに、恋奈と付き合ってる。そりゃ辻堂さんからすればなんで別れたのか怒りますし、正しい反応だと思います。そう問い詰められ何も言えない主人公を恋奈が手助けを加える。面白くないですよね、辻堂さんは。そんな中、突如発覚する梓の裏切り。全ての原因は主人公にあり、愛する人のために次々に仲間を失い、それでも主人公を愛している恋奈ちゃん...。残った50人ほどの仲間と共に300以上の梓の軍勢に加え、辻堂さんと腰越さんと闘わなければならなくなった際は、どうなるかハラハラしましたが流石は三大天の一人。喧嘩という自由な戦場で勝つためにありとあらゆる手段で対抗する、そんな彼女らしい闘い方でした。また、一旦は見限った良子が軍団と共に戻ってきて宝冠と共闘するシーンは熱かったです。最後は梓と恋奈の一騎打ち。彼女がなぜ三大天として呼ばれるのか、喧嘩をする上でのタフさという格闘技では見られない強さを発揮した気持ちのいい勝ち方でした。また、この戦いでの影の功労者は辻堂さんで、梓の集めた精鋭たちをボコボコして「何やってんだろ...」と呟く彼女は切なかったです。本当に良い人なんですよね。
最後に腰越マキ√ですが、この√が主人公の行きつく結末としては一番良いと思います。恋奈√のように辻堂さんが主人公をこちらの世界に巻き込んだのは自分のせいだからと、責任をもってこの世界から出そうとする。すべては主人公のために動いてるにも関わらず、主人公はマキを好きなのを理由にことごとくその気持ちを踏みにじる。本当に何でこんな主人公を好きになってしまったのか可哀想で仕方ないです。そして、この√の光る場面もやはりラストのマキと辻堂さんの喧嘩シーンでしょう。今までは見られなかった辻堂さん自身の気持ちを爆発させる。「側に来るたびたまらなくなる。優しく笑うたび胸が痛くなる。涙が出そうになる。」別れてもなお主人公のことを忘れられない姿に涙が止まりませんでした。なぜこんな喧嘩をふっかけたのか、彼女なりのケジメをつけたかったんですよね...。そして辻堂さんがマキにヤンキーをやめさせることで主人公とマキが別れずに、危険にも晒されない状況を作る。彼女がどれだけ願っても叶えることのできなかった幸せの形を主人公のためとはいえ、他の女共々叶えてしまう。良い人過ぎるし、それでもなおエピローグで主人公を気にしているのが切ない。
この作品を三角関係モノといっていいのか疑問なのですが、三角関係モノの作品をやる時いつも思うのは大体主人公が優柔不断で綺麗事を並べるどうしようもないやつなんですよね。でもそんなカスだからこそ三角関係が生まれるわけで、こちらとしてもなんだかんだ三角関係モノは好きなので三角関係というものが好きである以上、いい加減主人公に分別を求めるのは間違ってるのかもしれません。
今まで何となく喧嘩してきた辻堂さんがいつの間にか主人公のために闘っていくことになる。別れた後も主人公のことを守りたいがために、周りや、あまつさえ主人公が何と言おうとやめない。それは一人の女として男を好きになってしまった彼女の気持ちであり、まさに純愛なんですよね。この作品は辻堂愛という女の子の物語だったのですね。