TRUE√だけでなく、個別√もしっかりしている話があったり、だからこそ生まれる不満もあったりと評価の難しい作品であったが、私としては好きな場面が多く見られたため、満足の出来だったように感じる。
曲が良さそうという単純な理由で購入したわけだが、内容の質、ボリュームに驚かされた。初めの方こそペンダントをクリックすることによりルート分岐していくシステムに慣れなかったが、物語を進めていくうちに気にならなくなっていった。それほど話の深みにハマっていったのだ。TRUE√の解き明かしには勿論、個別√も心惹かれるキャラ、展開があり、TRUE√がある作品は他の個別√がおざなりになっていることもしばしば見られるのだが、この作品に関してはその辺もしっかりしていた。まあ、大きな不満もあったがそれは後述する。
まずは個別√についての感想。
●深羽√
自分からパンツを見せておいて、たまたま目撃してしまった主人公に対してキレる。それが何回も続く。常に主人公に対して敵対心を剥き出しにしていて、そのくせ主人公によく絡んでくる。主人公くんが何したって言うんだ...本当にそう思う。と言うのもこの作品、深羽に限らずありとあらゆるキャラクターが主人公に対して当たりが強いのだ。わかってもらおうとしない主人公にも多少の非はあると思うが、それでも彼のボコられっぷりといったらない。
まあ主人公についてはこれくらいにして肝心の深羽√について、正直こんなに刺さるとは思っていなかった。いきなり深羽が告白してきた時は???という感じであったが、主人公に好意を抱くようになった時期、きっかけが非常に私好みだった。主人公にしてみれば、しょげている人にかけるような、なんとない励ましの言葉だったが、深羽にとっては救いの言葉だった。その言葉がきっかけで主人公に興味を持ち、次第に好きになっていったと。素敵だよ...少し青臭過ぎる気もするがこのくらいが丁度いい。
互いに惹かれ合ってるのに付き合うことが出来ない、このもどかしさといったらない。義兄妹問題の解決方法については拍子抜けするようで妥当な方法だったと思う。何より深羽の溢れんばかりの笑みを見れて嬉しい限りだ。
●旭√
毎朝起こしに来てはご飯をねだる。素晴らしい幼馴染。しかもこの作品の幼馴染は旭だけでなく、双子の妹の夕までいる。幼馴染好きの私としてはたまらなかった。話としては旭√なので夕とは結ばれないのだが、それが少し残念だった。まあ夕と結ばれるというのは立ち位置的にも難しいのはわかる。それでも双子の強気な妹という属性があまりにも私好みだったんだから求めてしまう。
それだけにこの√で、半ば投げやりの様子で主人公に迫ってくる夕は残念。長年共に生活してきた、ずっと一緒だった幼馴染としての恋心が確かにあったはずなのだ。彼女が壊れる前に感覚共有の話をしている時の、彼女の表情、台詞を思い出すとそのことに気付けるかと思う。あのシーンを見返すと、どうかこの路線で彼女の√を...と度々思ってしまう...。
ただ、自分の心臓を旭のために使ってもらえばとトラックに突っ込もうと彼女に関しては、行動こそ褒められたものではないが、生まれながらに一緒だった、双子だったからこそ訴える強い姉妹愛を感じた。そんなことをしても旭は喜ばないのというのも事実ではあるが、彼女の気持ちは決して生半可なものではなかったと思う。夕のことが好きなのでどうしても彼女を擁護してしまう笑。
√の結末としては奇跡が起きて無事解決というかたちではあったが、助からなかったらどうなっていたのかと思うと、それはそれで怖い。
●雀√
チュンチュン言うな。かわいい。この√は話の流れよりも雀と主人公の関係性が非常に合っていたように感じた。彼氏彼女というよりは友達としての仲の良さが映えていたように見えたからである。ファーストキスを事故とした上で、だんだんと仲を深めていくうちに恋になる。友達発、彼女行が邪念なく綺麗に描かれていたと思う。雀に関しては好きなポイントもたくさんあるのだが、それは後にTRUEで語らせていただく。
●柚姫√
正直この√に関しては擁護する気が全くない。というのも敵キャラの桐生のゲスさに目が行きがちだが、主人公と柚姫サイドにも問題があると思うからである。停学中なのに学校に来て行為に及んでいたなんて彼らの落ち度じゃないか。盗撮していた桐生も悪いにしても、それに声を荒げて消せ消せつっかかろうとする主人公は正直とてもダサかったし、なんならあのままNTR展開になっていくのが見たかったという気持ちまである。
●TRUE√
隠しヒロイン雲雀ちゃん登場。あの無垢な口調と優しげな表情がたまらない、庇護欲に駆られる。この√での彼女の立ち位置は最後まで、あくまで患者として語られていくため、他の個別√と異なりイチャイチャなどはほぼほぼないが、彼女のために頑張ろうとする主人公及び仲間を見るとやはりこの√のヒロインは彼女に相違ない。この仲間という部分が大きく関わっていて、今まであまり登場しなかった司君の存在が際立つ。
ここでこの作品の種明かしが行われるのだが、それが人によってはガッカリするものに見えるかもしれない。個別√で見た奇跡、事態の収拾は全て司が裏で手を回していたからだということがわかる、わかってしまう。「大抵のことは、お金の力でどうにでもできる」という発言が非常に印象的。
ここだけ見ると、じゃあ茶番だったのかと思いがちではあるが、そうではないはず。信じたい気持ちから穴を突くような発言の様であれだが、大抵のことは何とかなっても、最後の一押しはやはり主人公の存在があったからではないのか。全てが全てお金の力ではないはずだ。
しかしながらこの発言のせいで、個別√が好きな私としては少なからず感動が冷めてしまったのも事実である。司君がドヤ顔で言いすぎなんだよ...。
また、この√の雀の、姉としての在り方には感銘を受けた。
「雲雀は、私にとってこの世でたった一人の血を分けた妹だ」
「その妹を守るのに、理由なんて必要ないだろう?」
作中屈指の名シーン。このシーンを見て雀が一番好きなった。
不満もあったがそれ以上に名場面が多い良い作品だったなと思う。個人的に"姉妹愛"について多く描かれていたのも良い。