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asteryukariさんの初恋1/1の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
初恋1/1
ブランド
tone work's
得点
70
参照数
228

一言コメント

ヒロインとの恋愛模様だけ見るとそれなりの満足感も得られるが、核となるシナリオはどれも不純物を含んでいた。もう少し純粋な恋愛物語が読んでみたかったというのが正直なところである。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

tone work'sの処女作であり、後に発売された作品たちがどれも好みの内容だったのもあり、純粋に楽しみな気持ちで臨んだ。パッと見てヒロインに二、三人ほど可愛いなと思える子がいて、全体的にグラフィックが綺麗(2012年としては)だったので、プレイ前の作品に対する印象は良かった。

共通部分では学食向上委員会なる謎の組織の勧誘から始まるわけだが、活動内容及び勧誘の仕方が笑ってしまうほどに適当で、先行きに不安すら覚えた。ただまあ、本番は個別ルートからだと思いつつ読み進めていたので、共通部分に関しての不満は小さい。面白さはないものの、ヒロイン達と知り合うまでの時間がわりと長めに用意されていたのは個人的に良かった点かなと思う。

個別ルートに突入するとヒロインと恋仲になり、気になっていたヒロインが女の子らしい表情を見せるようになる。そこについては素直に楽しむことができたし、シーンについてはも他の恋愛モノと比べると少し過激な、満足度の高いものが用意されていた。特に叶、摩耶あたりの積極的なえっちには思わず頬を緩めてしまった。恋愛部分とシーン部分に関して言えば、それなりに高い評価を付けていたかなと思う。ただ、肝心なのは核となるシナリオなわけで...。

シナリオに関して、全体的に不純物を含んでいた印象を受けた。それは人物だったり、やりとりだったり...攻略4人目くらいになると「今度こそは...!」と祈る気持ちすらあった。先にも述べた通りヒロインはなかなか好みの子がいただけに、シナリオによって打ち消されている様は見るに堪えなかった。
以下ルートごとの感想。


〇碧
生徒会長であり、お嬢様なヒロインのシナリオは...まあ予想はついていたけれど案の定、毒親がやってきて引っ?き回されるという展開。娘を愛するが故に行動していた実は良い親とかだったらまだ許せたのだが、正真正銘の毒親だったのでシナリオについては擁護できないかなと。

また、親だけでなくヒロインである碧の行動もまた憤りを感じるものだった。委員会を疎かにするくらい尽くしてくれた主人公に対して、まるで魔法が解けたかのように冷たく突き放す彼女。それでいて父親が主人公を認めたら、何もなかったように彼女面してくる。最初から最後まで、彼女自身が変わることはなく、親の操り人形である点が非常に残念だった。ルートの中で唯一、主人公に同情したルートでもある。


〇瑠奈
雪乃と付き合い始めた時点で嫌な予感はしていたが...地獄のようなシナリオが待ち受けていた。三角関係シナリオは結構好物だったりするわけだが、こんな一人が一方的に暴走するような三角関係もどきに用はないし、ましてやヒロインを好きになることもない。純粋に雪乃が可哀想だったし、主人公と瑠奈に対しては殺意すら沸いた。

委員会も解散し、雪乃とも離れて、問題しか残っていない状況にもかかわらず、全てを忘れたかの如く二人きりの時間を楽しむ瑠奈と主人公を見て、もう笑ってしまった。お前らみたいなやつらが幸せになれると思うなよと、何度喉元から出そうになったかわからない。その後の急速ハッピーエンド展開も含めて、滑稽なシナリオだった。いっそのこと自己中を貫いてくれた方がまだ評価したかもしれない。


〇雪乃
幼馴染という属性が好きで、また瑠奈ルートを先にやっていたのもあり、彼女に対する第一印象は良かった。ただ、シナリオを読んでしまうと彼女に対する興味が失せてしまったのも事実であり、幼馴染という魅力的な存在を扱っているのだから、もう少し読んでいてポジティブな気持ちになれるお話に仕上げてほしかったなと思う。

好きな人のために、好きだからこそ別れる。そういった展開自体は嫌いではないが、結局のところ確固たる意志を持って発言したわけではなかったのが残念だなと。また別れを切り出すタイミングも極めて不自然で、緩急をつけるためにライターが下手な手を打ってしまったようにしか感じなかった。


〇摩耶
見た目通りのクールな一匹狼少女で、見た目はヒロインの中だと一番気に入っていた。他のヒロインとは違い、簡単には主人公に靡かず、それどころか揶揄ってくる点も非常に良い。そして、そんな彼女が個別ルートに入ると、妖艶な雰囲気を纏ったまま女の子らしい姿を見せていくようになるのが堪らない。普段はクール強気な彼女だからこそ、主人公に主導権を握られて喘ぐ姿はなかなかそそられた。

で、シナリオについて語ると...なんでそっちを選択してしまったのだと言わざるを得ないシナリオだった。摩耶がトラウマから立ち直るという部分に着目させたかったのだろうが、私としてはあの糞母親の思い通りになったことが腹立たしくて仕方がない。また、序盤の摩耶の発言から芸能界に戻りたいという意志は全く感じられなかったので、ああいった方向性で話が進んでいくことも違和感しかなかった。どうして、逃げた場所に帰らせようとするのか。今の彼女が幸せならば、逃げたままでもいいじゃないか。


〇叶
ピザ屋の娘で、ピザに対するこだわりが強いクラスメイトの少女。はじめはそのオタク過ぎるピザ好きっぷりに引く場面もあったが、見た目と性格はピカイチだし、シナリオとしても五人の中では一番良かったように感じる。ヒロインとくっつくとすぐに崩壊を辿る学食向上委員会の活動も、今回は珍しくしっかりしていた点も嬉しい。

終盤、主人公が勝負を持ち掛けてきた際は少し吹きそうになってしまったが、叶の止まった時間を動かすという意味ではよくやってくれたかなと。全体的に言えるが、主人公がもう少し器用で頭の良い奴だったらもっと良かったかなと。あとは由香里というキャラクターがとても私好みだった。彼女と付き合う話なんかも見てみたかった。きっと彼氏の事を考えてくれる良い彼女になる。





所々に不純物を含んでいて、ヒロインの魅力を落してしまうケースもいくつか見られたが、恋愛パートはそこそこよかったのでそれなりには満足しているかなと。後に出た作品の踏み台になってくれたのだと思うと、自然と受け入れられる。