ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんのLEGEND SEVEN ~白雪姫と7人の英雄~の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
LEGEND SEVEN ~白雪姫と7人の英雄~
ブランド
NONSUGAR
得点
87
参照数
153

一言コメント

熱さを武器に変な路線変更をしたりしない、最後まで王道且つ面白い作品でした。グランド√も勿論良かったですが、那岐√が非常に良かったです。これほどまでに素晴らしい親友キャラは久しぶりでした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

王道バトル物。途中で感動路線に持って行ったりせず、最後に解釈問題や宗教チックになったりもしない、終始分かりやすく、話の展開、変身、キャラの心情などなどあらゆる面で熱さが際立っている作品でした。変にご都合主でキャラを復活させたりもしなかったため、感動を台無しにしたりすることもなかったです。始めたての頃こそ、導入の雑さに戸惑ったりもしたのですが、世界や用語の説明、最終的な目的などが明確だったため、すんなりと物語に入ることが出来ました。

個別の話は那岐√がよかったです。那岐√がというよりは永次くんが大好きだったという部分が大きいですが。しかしながら那岐と永次の姉弟関係が良かったのもあるのでそれら全部ひっくるめて那岐√が一番好きでした。馬鹿っぽくて情に熱いキャラって少年漫画の定番みたいなところがありますよね、最初は暑苦しくて鬱陶しいのに、共に時間を重ねていく信頼できる仲間になっていく。主人公自身もそう思ってるでしょうし、読み手である私達もだんだん慣れてきて気付いた頃には好きになっている、そんなキャラクターだと思います。

私が永次くんを好きになり始めたのはパ〇コをベンチで食べてるシーンですね。この作品で今まで感じることのなかった"夏らしさ"と、そんな夏の夕日をバックに語り合う青春のような光景が目を引きました。それに加えて永次くんの語る親との思い出を聞いて好きになりましたね。姉とは違って親から手品の技術等は学べなかったけど、親の教え、生き方はしっかり学び取ってる、良い奴なんだなと思いましたよ。

そして、この√最大の見せ場と言ってもいい「真鏡」を使うシーン。泣きましたね、後に明かされるのですが、真鏡とは「自らを変えるために、ありとあらゆる願望をかなえるもの」であり、その強大な力を手にする代償として魂を失うという禁術。そんな奥の手を使わざるを得ない状況であったからこそ永次は使ったのですが、それだけじゃなかったんですよね。姉を託せる人間、親友となった優がいたからこそ後悔なくその力を使えたんだということ。このシーンで一番泣いたのは永次が消える間際に言った「ずっと......ずっと小さい頃から俺の事見ててくれた姉貴を守れたんや。これ以上の幸せがあるかいや......」というセリフなのですが、優といつの間にか姉を任せられるくらいの仲になっていたということもわかって二度泣きました。

その後の姉である那岐が優に話す弟の思い出話も中々秀逸で、失ったモノの大きさが伝わってきました。また、間接的とはいえ結果的に永次を失う原因を作った修也に対しての那岐の態度もよかったですね。簡単には許さないその人間として、姉としての姿には賛辞の拍手を送りたいほどでした。

不幸なことに真鏡の本当の効果により永次と戦う展開になった時は、那岐の思いと同じでしたね、なんでそんなことするんだって思いましたよ。ただ、そこからがまた熱くて、戦っていくうちに永次くんの本心の姿がチラつくんですよね、「どーぞ幸せになりやがれェっ!!」とか ね、何度泣かせれば気が済むんだお前は...泣。最後まで永次くんが良いキャラしていました。

那岐√が良すぎたため、グランド√となる白雪√は楽しめるか不安だったのですが、しっかり最後まで楽しませてくれました。白雪√は、最後の皆の想いを託された七英雄たちが覚醒するシーンもいいのですが、個人的にティキータの本心が語られる部分が良かったですね。今まで巨悪として度々、優の前に立ちはだかってきたティキータが、実は世界を守るために行動していた。これも王道且つ熱いですよね。それに加えて母親として白雪を想う発言も良かったです。「お前の大切なものを守るために......っ!あたしはあんた達を守んなきゃなんねェんだからなっ!!」母親としての愛情よりも、母親としての強さが表れるカッコいいシーンでしたね。しかもこの辺でセーブしてみると分かるのですが、この章の名前が「母」なんですよね...。こういったちょっとしたこだわりが案外嬉しかったりします。

そして最後に白雪と別れることになっても、また出会うことなどなく桜が咲くのみにしたのも感動の冷めない良い終わり方だったと思います。不満もいくつかありますが、一番は戦闘シーンですね。変身シーンでは主題歌をバックに効果音も合わさって毎回鳥肌立ててたのですが、肝心の戦闘場所が田んぼだったり、学校だったりしてちょっとシュールな絵面になっていましたし、戦闘自体も演出にキレがなく単調でした。また、ラークスの手のひら返しも最初は「ん???」と思いましたが、そもそも彼は最初から敵にも味方にもなれない外れ者の立ち位置だったので落としどころとしてはこうなるよなという感じでしたね。

たまに熱ゲーはやりたくなるのですが、最後まで勢いで突っ走る作品とはなんだかんだ出会うことが少ない気がするので非常に満足度の高い作品でした。