英雄気質な主人公のおかげで物語はシンプル且つ気持ちのいいものに仕上がっていた。加えてヒロイン勢も皆愛らしい子ばかりなので、攻略するのは勿論、ちょっとした日常会話にも魅力があった。ゲーム性はあまり良いとは言えないものの、期待には応えてくれたかなと。
イケメンで自信家の策士
あかべぇそふとTRYの二作目という事で、前作と同じように単なる美少女ノベルではなく、ゲーム要素が追加されたものとなっていた。前作に関しては正直、必要だったのかと問いたくなるくらいの出来であったが、本作はなんと領土争奪SLGだという。ようやく自分好みの系統の作品ができるなと、始まる前から既に喜びに満ちていた。
領土争奪SLGということで、美少女ゲームを嗜む方なら誰しも遭遇したことのあるようなジャンルだが、例によって本作もどこか既視感のある作りになっていた。というか木彫りのクマ―とか大丈夫なのかと心配すらしたが、まあそれはさておき相変わらず楽しいシステムだなぁと。結局楽しい楽しいと言いながら一周目を終えてしまった。
ただ、楽しいと感じたのは一周目だけであり、まあ二周目も自分なりにはそこそこ楽しめたのだが、続く三周目と四周目は苦痛に感じる瞬間もあったりした。そう感じた理由はいくつもあるが、一番大きいのはやはり戦略性の無さ。
はじめはどこから攻めるのか、敵はいつ攻めてくるかなど色々糸施行を巡らせる楽しみがあったものの、実際はそんなに考える必要はなかったりするので、二周目以降なんかは本当に淡々と作業をこなしていくだけになってしまっていた。
また、戦闘時の操作性の悪さも飽きを感じてしまう要因の一つであり、テンポが悪いことに加え敵の行動にほとんど変化が見られないため、燃える場面もなければ苦戦するようなこともない単調なものだった。そのわりに敵に避けられてターンを無駄にしてしまうことなんかもあるので、少なくとも快適さと爽快さはなかったかなと。
と、ここまで酷評続きだが良い部分もちゃんとある。まずは主人公が物語上で光りまくっていたのが好印象だった。落ちこぼれとは言われつつも、行動力(主に下半身の力)は中々のもので、そのユニークな性格もあって味方からの信頼は勿論、敵ヒロインも次々と堕としていった。特に彼を奈落の底へと突き落とした元凶である晴明を犯すことになった際にはもう、眺めるのが気持ち良くて仕方がなかった。
戦闘でも序盤こそあまり頼りにならないものの、終盤はかなり強くなってくれて、敵を一人で次々と蹴散らしていけるほどになる。落ちこぼれと言われた男が都を手中に収めていく光景は痛快であり、物語と戦闘面の強さがリンクしている感じも好みだった。
そんな強くて逞しい彼だが、会話パートでは意外といじられ役、ボケ役なのがまた良い。本当に主人公が一番の魅力だったとつくづく思う。
そして、ヒロイン達も中々良い面子が揃っていて、絵が非常に私好みなので可愛いヒロインは誰かと問われると迷ってしまうのだが、好きなヒロインはとなると絞ることが出来る。まあ、はじめて出会った時から一番好きになるだろうなとは思っていたが、やはり私は顕光ちゃんになる。
どんな状況でも主人公の事を考え、どんな扱いを受けようが主人公を慕う。健気な忠犬のような彼女が大好きだった。ちっこいのに槍の腕は一級品であったり、かと思えば実は可愛いものに目がなかったりと乙女らしい部分もちゃんとある。相棒キャラとして見ても、ヒロインとして見ても圧倒的だった。
あとは光栄ちゃんなんかも好みの女の子で、もう少し過去に触れたエピソードが用意されていたらもっと好きになっていたかもしれない。
といった感じでゲーム性は低いものの、主人公及びヒロインについてはかなり良かったと感じるので、そこにどれくらい意識を向けてプレイできるかが本作を楽しむためのターニングポイントになると思われる。