シナリオはやや単調に感じるが、中には素敵な結末が用意されていたりもするのでそれなりには楽しめたかなと。浅田小春という素敵な女の子に出逢えた事を嬉しく思う。
吸血鬼である主人公が吸血鬼であることを隠して学園生活を謳歌していく物語であり、物語が進行するにつれて吸血衝動を抑えきれなくなり、やがては仲間達に打ち明けることになる…といった感じなので、展開としては個別ルートでありながら似たようなものが多く、そこが少し残念な部分でもある。ただでさえ短い尺の中にヒロインとのえっちシーンも忘れずに三つほど盛り込んでくるので、読んでいて面白いと感じる事はなかったかなと。
ただ、ブラコンお姉ちゃんこと霧ルートの結末は中々良くて、共通部分の和気藹々としたやりとりが上手く活かされているなと感じた。単なる人間ではなく友達だからこそ、友達の地だけは吸いたくないからこそ別離の道を選択する主人公は見ていて本当が良かった。寂しい選択ではあるが彼の友達に対する情がよく分かると同時に、霧の存在も際立つよく出来た結末だったと私は思う。
といった感じでルートだけ見れば霧ルートが群を抜いて好きだったわけだが、霧が最も好きなキャラクターかというとそれは違う。勿論、お姉ちゃんも魅力的だが、浅田小春という少女がその上をいってしまった。
主人公の友人であり、軽口を叩き合える仲でもある彼女。この時点で既に好感度がやや高めだったが、加えて実は前々から主人公の事が好きだったなんて事実がわかると、それは明確な好きという気持ちに変化した。彼女が主人公の事を意識し始めたきっかけ、即ちいじめのエピソードも凄く良くて、ああ、彼女はずっとあの時のことを感謝しているのだなと思うと心が温かくなった。
付き合い始めてからのやりとりも頬が緩んでしまうものばかりで、女の子らしい態度を見せるようになっていくのも素晴らしいのだが(特にゆっくり歩いたほうが~のくだり)、何より元の元気な性格が生きているのが嬉しかった。主人公が小春の為にと別れることを提案すると力強く反発してくれる、それもきちんと納得できる理由を添えてくれるからもう彼女の事しか見えなくなってしまった。
最終的に流れでハッピーエンドを迎えてしまう点や聖来との一件など、腑に落ちない事が多いシナリオではあったものの、小春ちゃんという中々ピンポイントに私の好きなタイプのヒロインに出逢えたこと自体はとても嬉しかった。欲を言えばシーンの為に会話を繋げるのではなく、もっと普通のデートシーンなんかを用意してもらいたかったが、尺的に厳しいだろうか。
思い返してみるとなんだかんだ楽しむことはできたかなと。本当に小春ちゃんの存在が評価に大きい。いつの日か銀弾が復活して、小春ちゃんのミニFDが出ますように...。