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asteryukariさんのスイートロビンガール -Sweet Robin Girl-の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
スイートロビンガール -Sweet Robin Girl-
ブランド
Chuablesoft
得点
74
参照数
121

一言コメント

優しさと温かさで満たされた空間はとても心地よく、いつまでも羽を休めていたいと思わせてくれる。不満要素もちらほらあるが、それを差し引いても作品の良い部分が頭に残り続ける。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ヨーロッパを思わせる都市「レヴィンダム」の喫茶店を舞台にした作品であり、とある事情で意気消沈していた主人公の下に現れた四人の少女を軸に物語が展開していく。しっかり者やトラブルメーカー、ふわふわした子などなど個性的な面々が揃っていて、そんな彼女たちが同じ場所で働いているというのがなかなか面白い。

共通ルートはとにかく平和で明るい日常が映し出されており、店で一生懸命働く彼女たちを眺められたり、街では意外な一面が見られたりする。また、メグやエレンなんかは他の二人と比べると序盤はやや警戒心が強いので、そんな彼女たちがやがて主人公を信頼するようになっていくも大きな見所の一つである。

嬉しいのが一緒にいて何となく距離が縮まっていくのではなく、距離を縮めるための明確なエピソードが用意されている点。主人公の活躍どころも豊富で、誰がどう見ても心を開くようなぁと、納得できるような作りになっていた。こういう地味なところを丁寧にやってくれるのはとてもありがたい。

主人公を含めて悩み彷徨っていた者たちが一つの場所集まり、楽しそうに笑顔を振りまきながら過ごしている。そんな「とまり木」という空間が大好きで、やや尺長めにも関わらず飽きずに共通パートを読み切ることができた。本当に大きなイベントが起きるわけでもない日常劇の連鎖なのだが、それがよかった。

で、個別ルートに派生するとヒロインと一気に距離を詰めつつ、彼女達の抱える悩みへと足を踏み込んでいくわけだが、これが結構シリアス成分多めというか、胸糞悪い話も合ったり、ヒロインの魅力を削ぐものがあったりする。言ってしまうとプリス、メグルートについてはマイナスの感情のまま終わってしまった。

ただ、エレン、フィオナルートに関してはそれなりに楽しめたかなと。特にエレンルートについてはヒロインが可愛いのは勿論の事、ヒロインの性格が見えてくるようなやりとり、エピソードが詰め込められており、彼女のことを一層好きになることができた。しっかり者で強気の彼女だが、本当に脆くて弱い。そんな彼女を見て心を掴まれない男などいまい。

また、エレンちゃんはよくあるルート派生後デレデレヒロインというわけでもなく、しっかりと自分の夢を持って生きている点が素晴らしい。心地いい場所だけれど、だからこそ羽ばたかなければいけないんだと、「とまり木」という場所の意味をはっきりと示した彼女の答えは胸に沁みた。

そのため、結末としても恋人編より内縁編の方が好きだったりする。恐らくは恋人編が好きなユーザの方が多いと思うので、そういった意味でも複数のエンドを用意してくれたのは英断だったと思う。


個別ルートの半分は残念だったり、システムの影響で話のテンポが悪くなっていたりなど、目につく不満もあるが、全体を通して空気感が凄く好みだったので、それなりには満たされたかなと。優雅な時間をありがとうございました。