各話の始まりこそミステリーホラーのような感じですが、どのお話も人の温もりに触れた良い結末を迎えます。単なる霊との出会いと別れだけでなく、霊の心情が若干ではありますが描かれていたり、霊視点に切り替わったりするのが良かったですね。最後まで登場人物が皆優しく、スッキリする終わり方を迎えていたと思います。
やはり一番印象に残ったのはトリを飾る"姉妹草"ですかね、このお話の良いところはいくつもありますが、中でも葉の行動、そして活躍が印象に強く残りました。大体こういったお話だと、亡くなった側ではなく、残された側の人間の気持ちが沈み、やがて恨みや自分を責めるといった状況に陥りがちだと思いますが、この話では違う。葉が立ち直り姉を成仏させに行く、この展開がとてもよかった。
葉が立ち直れたのは、葉自身の強さであったり、姉を想うからこそ成仏させ様という気持ちが大きく関わっているのですが、同時にそれを支えた人達もいたはずです。そう、すみれ達ですね。葉が強い娘なのであまりピンとはきませんが、日常でそれとなく彼女を気遣っていた人達の存在もこのお話のいいところだと思います。
最後は姉に元気であると、心配いらないことを伝えるために皆ではしゃいで終わる。これは葉一人では成しえないことですし、作品全体を通して見ると霊達の優しさが目立ちますが、登場人物のほとんどが優しい人たちばかりであった事が最後にはっきりと描かれていて、読了感が非常に良かったですね。