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asteryukariさんの霊刀キザクラ ~桜花の剣と惑竜章~の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
霊刀キザクラ ~桜花の剣と惑竜章~
ブランド
雨傘日傘事務所
得点
82
参照数
141

一言コメント

水場仕事は本職じゃないの!接客も本職じゃないの!もっと主に磨いてもらったり、研いでもらったり、ボンボンでお手入れしてほしいの!!!!!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

隷妃双奏の最後に見事、擬人化したキザクラさんと、黒曜鏡の魔獣にて十騎士第二位を務めていたラベンダードラゴンの物語。そのため今まで以上にシリーズの作品をやっている必要がある(最低でも黒曜鏡、エリュズニールの騎士、隷妃双奏)。しかしまあやっていれば楽しめる要素が満載で、特にディール関連の話なんかはついほくそ笑んでしまう。

また、単純にお話も面白く、ボリュームもある。「かみさま」の話やラベンダードラゴンの妻の話などを聞くに、中盤まではそういった少し切なめな話が多い作品なのかなと思っていたが、やっぱり終盤で熱い死闘の数々を見せてくれてた。最後のララクロス&キザクラも悪くないが、人の身でありながら邪龍と互角に戦う惑竜ことラベンダードラゴンがかっこよすぎた。

やはり「めちゃくちゃ強い普通の人間」というのがたまらない。ダークエルフやら邪龍やら何かと化物の強さが目立つシリーズだが、結局好きなのはこういうタイプなのかもしれない。武器にも特にこだわらず、普通の剣でばっさばっさ斬り倒していくというのが見ていて気持ちいい。

どうしても終盤の戦闘の連続が印象に残りがちだが、先ほども言った切ないお話というのも中々。かみさまのお話もラベンダードラゴンの話も結局は犯してしまった過ちという点で共通しており、駄目だとわかっていても縋ってしまう、情けないが気持ちはとても理解できるものだった。

特にかみさまのお話に関しては、短い語りの中にきちんとストーリーがあり、不覚にも少しじんときた。いきなりぶち込んできたのにこんなにも魅せてくれるのだから凄い。「変わり続けること」を求めていたのにあんなの…皮肉すぎる。しかしそれがたまらない。

以下はキャラクターごとの感想。


○キザクラさん
嫉妬深い寂しがり屋なキザクラさん可愛いよ!あの2・5頭身verの姿でちらちら見に行くのがとっても愛らしくて、まあ背中は哀愁が漂っていたのだが。本作ではディールと一緒にいる時よりもずっと生き生きしていた。それもそうだろう、今や包丁代わりにしか使ってもらえなかったのだから…。

終盤のご活躍も素晴らしいが、個人的にお飾り部隊を率いている時が一番楽しそうで良かったかと。お飾り部隊とラベンダードラゴン、そしてキザクラさん。バランスの取れた良い部隊だったなぁ。

○ラベンダードラゴン
かつてロードが十騎士を統率していた時は二位だったが、ついに零位まで上り詰めた。戦場を離れてもその実力は圧巻。かと思えば何かとかっこつけたり、ウケを狙って滑ったりとユーモア溢れる御方なのだ。そんなお茶目さんもやるときはやる。最終戦はその実力を確かに示してくれた。

ディアボロス戦でディールが見せた剣の陣を、今度は18本で。彼の戦い方はいたってシンプルで、とにかく攻めるということ。私も普段アクションゲームをやっている時にふと考えることがある、それは攻めることの重要性。攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。

黒曜鏡ではチラッと出ただけだったので、まさかこんなにも強く、面白いキャラだとは思わなかった。また彼の活躍が見たいものだ。

○ベルザンドス
普段はへらへらしているが実は良い奴。と思っていた頃もあった。裏切り者が!でも終盤はなんやかんやサポートしてくれたし、あそこまで屑だと逆に清々しくもなってくるというか。ああ、本当にディアボロスを思い出す。それもそのはずだ、同じデュエルの名を持つものなのだから。上手いなぁ…。

「古都の剣ってどこかで売ってないかなあ。」じゃあないんだよ、最後まで彼女らしくてついつい笑ってしまった。

○ララクロス
素手で戦う女に限ってめちゃんこ強かったりする。引率者として行動している彼女だったが、強さの裏で、自分を責め続けているんだと思うと、逞しく見えたあの背中もなんだか寂しく見えた。

キザクラさんを装備した彼女の獅子奮迅っぷりは確かにかっこよかったし、あの過剰なほどの技の演出も素晴らしい。ただ、欲を言えばラベンダードラゴンとキザクラさんの共闘で締めてほしかったかなと。

○白竜
最後にポッと出てきたにしてはキャラが濃すぎるし、役に合い過ぎている。ここにきて最高の敵キャラを用意してきたなと。そのでたらめな強さと化物らしい姿に惚れ惚れした。そう、こういう悪の中の悪みたいなやつが敵だと、戦闘もより一層盛り上がるものだ。

何かを守る、あるいは止める味方陣営と違い、それだけのためにと言いたくなるような理由の下、戦闘を楽しんでいた。理屈ではない、自分の欲求に忠実なところがまさに獣そのもので、人間のような姿をしていても所詮は獣、話し合いなどできるはずがないのだ。それが戦闘を通じてよくわかった。

○ディール
まさかラベンダードラゴンとも交流があったとは。平穏な生活を送るようになってもなお彼の存在感は大きい。ティタ様の名前を聞いた瞬間、本気で殺しにかかってくるしやはりこの子は怖い。あのラベンダードラゴンでさえ怖気づいていた。でも同時に溢れんばかりの愛が伝わってきた。



脇役だったキャラクター達視点で語る物語をこんなに面白く描けるとは…。