多少の不満はあれど、ディールの物語に一区切りがついたということで、私としては喜びの方が大きい。
前作、エリュズ二ールの騎士の続編であり、黒曜鏡の魔獣の続編でもある。黒曜鏡の魔獣で謎だった部分や、その後の話が描かれているため、ディールの話をもっと見たかった自分なんかはとても嬉しかった。黒曜鏡ではなあなあになってしまったディアブロに対するディールの復讐心が濃く描かれており、その分戦闘にも覇気があった。
七本の剣を拵え、誰にも何も言わずに母の敵を討ちに行くディール。昔とはずいぶん見違えたものだ。その心持ちは騎士として歩んできた経験か、あるいは時の流れか。本人も言っていたが、彼は相当不幸の人生を歩んでいる。母を奴隷にされ、自信は闘技場の玩具にされ、いくらか立ち直り、やっと心が通じたと思ったクリステルは命を落とす。
怒りに身を任せ戦っていた時にたまたま側に居り、前々から尊敬の念を抱いていたグリムロックの部下になり、やがては騎士になった。そしてウェイトレスになった。ウェイトレスが一番似合ってて、幸せそうなのが笑いを誘う。挙句の果てには客から「姉ちゃん」呼び。どうしてこうなったのか、しかも実際可愛いのがまた。
そんな可愛いディール姉ちゃんも殺る時はやる。元来の気迫を取り戻していた。ただ、この戦闘で残念なのがディアブロの存在。物語的にも、ディールの境遇を考えても最後に立ちはだかる宿敵に相応しいはずなのだがどうにも乗れない。それは黒曜鏡のせい。
黒曜鏡では最初こそ憎らしく早くくたばってほしいようなキャラだったが、話が進んでいくうちに段々と彼のキャラを受け入れ始め、最終的にはカスだけど笑いを誘うキャラという立ち位置に落ち着いた。だからこそ本作でここにきて「凶悪な敵です!」と言われてもイマイチしっくりこなかった。当然しっかりとそれを印象付けるように過去の彼の非道を描いたのだろうが、やはりディールほど憎しみは乗らなかった。この辺はプレイ順の問題かもしれない。
そういえば、あのタコさんたちはすべて彼自身が作り上げたもので、元の材料は人間だったという事実が明らかになっていた。なにをどうしたらあんなにゅるにゅるな生物になるのか...。しかしその証拠に彼の素顔には複数の目が付いていたり、手に口があったりした。ディアブロの素顔、気持ち悪いのはそうだが、顔の作りは中々綺麗だったので驚いた。
戦闘はディールに関して、複数の剣を使うのも好きだったが、元々得意であった人真似をここでも披露してくれたのが嬉しかった。付け焼刃でも要はタイミングなのだと。あの得体のしれない強さを誇っていたディアブロが命乞いをして死ぬのなんかはまあちょっと残念だったが、ディールの話にしっかりと筋を通したのでまあ良かったかなと思う。
最後には喋る剣ことキザクラさん(とっっっっってもかわいい)が擬人化し、みんなが写った集合写真で終わる。ディールがやっと幸せな人生を歩み始めたのかと思うと感慨深い。どうか幸せにウェイトレスさんとして生きていってほしいものだ。