もうこの頃からある程度作風が定まっていたのだなと、その完成度に驚いた。切なさと温かさが混ざった素敵な一作だった。だいじょうぶ。もう、さむくないよ。
序盤は笑いに富んだ日常と真白ちゃんが可愛い位の印象しかなかったのだが、読み進めていくと全然違う、それでいて自分好みのお話になっていて思わず舌を巻いた。五芒星や神札をふんだんに使用した戦闘はメーカーらしさが出ていて、ああこの頃からずっと作風は同じなんだなと、安心感すら覚えた。急にぶち込んでくるのにこんなにも読むのが楽しい。これがここの作品の凄い所なのだ。
また、序盤の会話ややりとりが中盤や序盤で生きてくる点も評価したい。特に良かった部分が二か所あって、一つ目は真白が見た夢の内容で、あれを見た時点で何かはあるなと勘付いてはいたが、まさかああいった形で回収してくるとは…。しかもその場面の地の文がまたよくて、彼がどれだけ真白を想っていたか、どんなに安心しているのかがよくわかる。切ないがとても美しい名場面だ。
二つ目は「その後」の「だいすき」にて終わりの方に出てくる所だ。
「永劫にも似た月日。僕は、彼女の『うれしい』をその長い時間を使って、たくさん積み重ねていこう。押入れの奥に積んである、あのたくさんの金ダライよりももっと。」
あんなギャグで終わるだろうという感じであった目撃事件をここにもってくるとは思わなんだ。こういうちょっぴりしたアクセントが素敵。
他にもまだまだ好きな場面はあるのだが、特にこの二つが刺さった。ブランドとしてはで初めの段階でこんなにも美しく、面白い作品を出していたことに驚きを隠せない。終盤の流れは何度見ても素敵なので、また見返す機会がたびたび訪れるだろう...。