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asteryukariさんの紅湖の皇子の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
紅湖の皇子
ブランド
雨傘日傘事務所
得点
75
参照数
173

一言コメント

別視点で物語を読み進めることで今まで見えてこなかった部分が見えてくる。双方があって一つの作品だったと、今は満足感に満たされている。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ヴィザルの日記とは別視点であり、本作はリアン視点で話が進んでいくわけだが(もしかしたらこちらを先にやるべきだった…?)、こちらもまあ良かった。何が良かったと言うと、ヴィザルの日記では復讐のために半狂乱のような描写だけで、リアンの復讐についての背景がイマイチ欠けているように感じた。

それがこの作品ではリアンとセイルの関係、そしてリアンとレヴィアルの関係が繊細に描かれていた。これが非常に良かった。あの時彼は何を思って行動していたのか、彼女はどんなことを考えていたのか、奪われた幸せな日常はどのようなものだったのか、ヴィザルの日記単体では読み取れなかった部分も見えてきて、納得がいった。

また、ダークエルフの生成に関しての説明があったのはありがたかった。生まれつきのダークエルフというのは存在せず、ダークエルフになれる因子を持ったエルフが歌姫と関わった時初めてダークエルフに成れるのだと。だからそういう意味でアンデットに近いという。話の中にはあのロードおじさんなんかも出てきてなんだか懐かしかった。

結末は二つあり、そのどちらも決してハッピーエンドとは言えないものだったが、絶望の中に仄かな温かみを感じたのでああいう結末は嫌いではない。むしろあれでよかったんだと思う。