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asteryukariさんの君の名残は静かに揺れての長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
君の名残は静かに揺れて
ブランド
UNiSONSHIFT:Blossom
得点
83
参照数
480

一言コメント

前作で謎が多いまま終わってしまった茉百合の話に深みを加えて展開していく。単なる嫁ぎの問題ではなく、白鷺家という存在について色々考えさせられる部分が多く、始めは軽いキャラゲーだと思ってプレイしていたので想像以上の出来に驚きました。話が面白くなってくるのは後半部分からなので、それまでは茉百合の可愛さを堪能していればいいかと。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

個人的にFlyable Heartで一番消化不良だと思っていた話について、IFとして話の続きが書かれてているということで楽しみにしてました。結果は期待以上の出来でしたね。いや、ほんと好きな話でした。霞織が帰ってきた辺りから、話に深みが生まれ、状況を整理していく流れが見ていてドキドキしました。

なぜ、茉百合は使用人という扱いをされてきたのに白鷺家の人間として縛られているのか、何か訳があるんじゃないか。最後まで茉百合の出生の真実については明かされませんでしたが、父親と小百合が書斎で二人っきりであっていた話や、海外留学に行っていたという噓の事実、幼少期に度々体調不良を起こしていたこと(霞織の日記により)、小百合がなぜあんなにも過敏に反応したのか。これらを総合すると導き出される答えはただ一つ。茉百合が父親と小百合の間にできた子供だということなんですよね。だからこそ霞織がその答えに達した時に、巴はこれまでにないような声の荒げ方をしたわけですし、小百合の言っていた"呪われている"という言葉にも納得がいきます。白鷺家はこの問題を世間に公表するわけにはいかないということで茉百合を父親と使用人との間にできた子供ということにして真実を闇の葬ったわけなんですよね。何かあるなとは思っていましたがこれほどまでに闇が深いものだったとは思いませんでした。小百合が可哀想で仕方ないです。そりゃああんな状態にもなりますよ。

そんな事実がありながらも最後には姉として、母として茉百合が白鷺家から出ていくのを窓から見守る小百合に涙しました。直前に挟まれた寝ている茉百合の側で子守り歌を歌う回想とかズルいですよね...最初は池沼女枠かなんてことを思っていたのにこんなの不意打ちですよ、小百合があまりにも不憫すぎるし、あまりにも優しすぎる。茉百合に真実を伝えないで終わったのも色々考えると良かったのかもしれません。綺麗な終わり方だったと思います。

また、知らなかったとはいえそんな小百合のことを考えず、茉百合のことを二度も襲おうとした利彦とかいうクズはもっとボコボコに殴られてほしかったですね。殴るといえば今作での奏龍は中々かっこよかったですね。前作の妹の件ではあまり好きなキャラではなかったのですが、今作は正直何も得がなく、自分が損をするだけなのにただ、二人のためということで動いてくれました。身内の問題には弱くて、他人の問題では頼りになるというのは外向的というか貴族っぽいというか...まあそれはさておき良いキャラしてましたね。

主人公に関しては前作でもそうでしたが、ハッキリとして物言いが出来ない子供じみた発言が多く、説得力に欠けるというのが一番気になりましたね。行動するところはカッコいいのに感情論を振りかざすことしかできないため、すぐ言い負かされてしまうというのが惜しかったです。今回の騒動も結局は小百合のおかげみたいな感じでしたし。

何にせよ小百合が全部持ってきましたね。途中までは回想の影響もあり、霞織がかなりお気に入りのキャラだったのですが、真実を知って小百合しか見えなくなりました。主人公たちは気付いているんでしょうかね、小百合の温かさに。でもまあ知らない方がいい真実というのもありますし、これで良かったのだと心の底から思います。