ゲームパートは壊滅的ともいえるが、一方でシナリオについては良い点も複数あり、総じて言えるのは主人公の魅せ方が上手だったなと。彼の事を好きになるのは勿論、彼に惚れるヒロイン達の気持ちもよく理解できた。
人間界を掛けた戦争で見事、勝利を収めた親族たちはマスメディアを支配し、テレビ画面で楽しそうに歌い踊っていた。そんな彼らに対して悪魔たちが今度は歌で神族たちに戦いを挑むことになるというのが大まかな流れ。ラグナロク×Rockで「ラグナRock」というわけだ。
まあ、なかなか怪しい雰囲気の漂う始まり方ではあったが、私としては楽しみな気持ちもあった。なぜ楽しみだったかというとそれは登場するキャラクターのデザインが物凄く私好みだったからだ。主人公であるニヨルドもその妹であるネルトスも、一目見た瞬間から惹かれていた。この作品の購入理由の七割は彼女たちにあると言っていい。
そんな可愛らしい二人とそれから忠実なしもべであるロキ、あとがおまけのスルトたちと共に親族たちに対して攻撃を仕掛けていくわけだが、ただ読み進めていけばいいだけではない。本作にはゲームパートが存在した。様々なフェイズを繰り返すことで物語が進行していくと、そういった作りになっていた。
で、それが面白かったかというとそんなことはなかった。もうはっきり言ってしまうが、ゲームパートは一ミリも面白くなかった。というのもSLGっぽさがある地域及び配置フェイズは本当にそれっぽいだけで、やっていることはかなりショボい。これのフェイズは必要だったのかと何度も心の中で思っていた。
また、戦闘フェイズに関しては上記の二フェイズよりは凝っているが、やっていて興奮を覚えることはなくて、無心で画面を眺め続けていた。わざと押されている状況を作り出してスキルで一気に挽回するという遊び方をしていた時はそこそこ楽しかったのだが。まあちょっとしたミニゲームだったなと。
ゲーム面についてはこんな感じで、楽しさより苦しさが勝ってしまう瞬間もちらほらあったが、お話の面は意外にも頑張っていたと思う。個別√によってどこが良いというのは変わってくるわけだが、共通して言えるのは主人公とそれから周りのキャラクターとの相性が非常に良かったなと。
主人公のニヨルドはまあ腐っても魔王なのでカリスマ性があって、勝つことに貪欲な姿勢もまた魅力的だった。そして、そんな彼女にヒロイン達が次々と落ちていくというわけだ。そして、それは神族たちも例外ではない。
ネルトスとロキが彼女の事を好いているのはわかっていたが、神族トップであるオーディンや女神であるノルンまでもが彼女の虜になるから面白い。彼女達との会話は読んでいて心地いいものばかりで、特に主人公とノルンのやりとりは癒しそのものだった。彼女の意志力の強さに惹かれ慕うようになるという点が凄く良い。
まあ実質Trueの話の結末がギャグだったり、ヒロインの設定に関して説明不十分な箇所があったりと粗だらけなシナリオではあったが、主人公を魅力的に描くという点だけは最後まで貫き通してくれた。これだけでだいぶ嬉しい。
といった感じで総合評価は低めではあるが、大好きな要素も含まれていたのでまずまずだったと感じる自分もいる。何はともあれプレイしてみてよかったなと。こういう作品の良さはやってみて、読んでみないとわからないだろう。