攻略人数を無駄に増やしたためか、個々の√がかなり薄っぺらく、お世辞にも出来がいい作品とは言えなかった。ただ、杏子ちゃんの事が好きな身としてはそれなりに満足できたかなと思う。
本編で攻略できなかったサブキャラクター達がヒロインへ昇格ということで、本編をプレイしている時から好きで好きで仕方がなかった杏子ちゃんを攻略できるという事実を前にして喜びを感じないはずもなかった。見た目の愛らしさもさることながら、その性格も非常に私好みときた。本当になぜ攻略できないのか、疑問で仕方なかった。
本作は本編のFD的立ち位置でありながら、本編ヒロインの後日談等は用意されておらず、導入部分もかなり違うパラレル的な作品であった。ただまあ、家族の中は切り離せないということで姉である雪花はわりと登場機会も多く、相変わらず弟である主人公の事が好きで好きでたまらない様子であった。本編で一番好きだったヒロインなだけに素直に嬉しい。
そして、雪花の助言(誘導)の下、学園に入学することになり、入学式でいきなり杏子ちゃんに目を付けられてしまうわけだ。初対面にも関わらず口やかましく注意してしまう杏子ちゃんは何というか、良い意味で相変わらず面倒な性格をしていた。この事がきっかけで花園会に入る事になったのも事実なので、まあ運命的な出会いと呼べるのかなと。
花園会に入ることで杏子以外のヒロイン達とも知り合うことができて、そこから花風組か鳥月組かを選択することで各ヒロイン√へと分岐していくわけだが、正直な話をすればこんなにヒロインは要らなかったかなと。というのも各個別√がしっかりしているのであればまあ文句は言わなかったのだが、案の定それぞれが薄く軽いお話になっていたので、そんなことになるくらいならばヒロインを絞った方が良かったのではと思うのだ。
四人くらいならまだ何とかなったかもしれないが、七人ともなるとやっぱり多い。おまけに全員が全員可愛いわけでもないので、ただ攻略できなかったキャラを寄せ集めただけにしか感じなかった。何でもかんでもヒロインにすればいいというわけではないのだ。
といった感じで先にも述べた通り個別√はかなり薄っぺらく、期待していた杏子√に関しても読んでいて面白いという事はなかった。ただ、私が見たかった最低限の光景は広がっていたので、そこはホッとした。
結ばれ方こそ流れに身を任せるような、ロマンの欠片もないようなものだったが、これまでずっと厳しい態度で接してきた十割ツンの彼女が初めて見せた一割のデレはまさに極上であり、そこから女の子らしく恥じらいを表に出すようになっていく彼女は可憐そのものだった。行為に慣れてくると自らが主導権を握ろうとするのも良い。
といった感じで杏子ちゃんの愛らしさに救われたとでもいうべきか、全体的なクオリティこそ低めではあるが、彼女の事が大好きな私としてはそれなりに満足感は得られたかなと思う。