導入のわりには平和な作品であり、人外ヒロインとの共同生活に着目するとそこそこ楽しい。ただ、全体を通して面白いと感じる点は少なめなので、過度な期待を抱きすぎると落胆してしまうかもしれない。
「私は琥太郎の物です。いついかなる時も琥太郎を監視し、守り、彼の剣となり、盾となることを誓います」
そう言って目の前に現れた”高次汎用型機体”との出会いにより、主人公の平和な日常は一変していく。
ジャンルとしてはアンドロイド物に近いのかなと。主人公の祖父が制作した不思議な女の子ユノと共に時に争いに巻き込まれつつ、青春を謳歌していく。上の命令のままに動き、生きてきたユノが主人公達との生活を通して、徐々に人間らしい官女を獲得していくのは本作の大きな見所かと思う。
また、他にも二人の馴染みヒロインがいたりと、普通の学園青春モノらしさも残っている作品であった。特にまあ恋々夏なんかは同ブランド過去作「つよきす」のあのヒロインを連想させる。他の男子から”ココナッツ”と呼ばれているあたり意識して作られたキャラクターなのかなと。本家では呼ぶ側だが。
加えて主人公に襲い掛かってきた二人組も攻略できるという事で、これについては少し驚きだったが、姉の方のデルタが好みドストライクだったので私としては嬉しいサプライズだった。
そして、肝心のシナリオについてだが端的に言って面白くはなかった。攻略対象である点から何となく気づいてはいたが、デルタとカイの二人組は噛ませ役に近く、そのバックにいるジョーカーについても薄っぺらい思想の持ち主で悪役として相応しい働きを見せてくれたとは言えない。
加えて、最も力を入れたであろうユノ√は起伏こそあれど、柚乃という人格の使い方にやや不満。ポッと出てきてあっさり処理される、そのテンポの良さが逆に好みではなかった。ユノだけでなく、「柚乃も含めて愛する」という主人公の対応自体は素晴らしかったのだが、その後に繋がっていたかというと微妙なところ。
ただ、ユノ√にて主人公との関わりが深い恋々夏を話に絡ませてきたのは評価したい。ユノと主人公が一緒になるという事は、すなわち恋々夏との依存的な関係を終わりにするという事。その辺をどう処理していくのか見ていただけに、あの区切りの付け方は本当に良かったと思う。勝負に敗れ、泣いている恋々夏に主人公が告げた言葉は、彼女だけでなく読み手の胸にも沁み込んでくるような意志を持った一言だった。
後半はどの√もエッチなシーンの連続で、見所は少なめだったけれど、エピローグはそこそこ良いなと感じるものがあったかなと。恋々夏√なんかはなんともあの二人らしい。
といった感じで面白くはなかったものの、胸にずしんと来る描写自体は存在したので総合的には悪くない作品であった。個人的にデルタとカイを分けて攻略させてほしかったが、二人の関係的に切り離すのは難しかったのだろうか。ぶっちゃけた話をしてしまえばデルタちゃんとの時間をもっと用意してほしかった。煽られるとすぐ顔を真っ赤にするクソ雑魚デルタちゃんがとてもとても可愛いので。