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asteryukariさんのメモリーズオフ6 〜T-wave〜の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
メモリーズオフ6 〜T-wave〜
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
71
参照数
118

一言コメント

読めば読むほど変な方向に話が進んでいき、こちらの気分もどんどん沈んでいく。だが暗闇を照らしてくれる女神は確かにいたのだと、嘉神川クロエというヒロインを生み出してくれて本当にありがとう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

あの懐かしの澄空学園が舞台ということで、本作のコンセプトは原点回帰だったとのこと。見たことのある風景がいくつも広がっていて、気分が上がる上がる。そして登場するヒロイン達もパッと見て可愛いなと思う子ばかりだったのでやる気に満ち溢れていた。

しかしながら物語は杜撰なものが多く、正直な感想を言えば歴代でも下から数えた方が早そうであった。原点回帰とは何だったのか、そう問いたくなる。特に酷かったのはメインの二人。

5のリバースカットと同様、本作もヒロイン視点で物語を見ることができるTriangleルートが存在するとのことで実はかなり期待していた。だって三角関係のでヒロインの心情を観察することができるってそんなの涙を誘う展開になるに決まってる。これはもう勝ったなと、ウキウキでプレイしていた。

お試し恋愛という少し苦手な展開がきつつも、「友達の友達」から着実と「恋人」の関係に発展していく様はなかなか。智紗は健気だし、りりすも少しきつめな所はあるが何よりも智紗の事を想っているというのが良い。美しき友情だ。だからまあ、序盤はわりと好きで、これから先どう三角関係になっていくのかが怖くもあり、楽しみでもあった。

が、そんなところにぶち込まれた主人公の過去に関するエピソード。これが荒波を起こしてしまった。まあ百歩譲って智紗が主人公に対し罪悪感を抱くのはわかる。でもここまできてそんなことを言い出すのはどうかと。ようやく円満な関係を築き上げたのにそれを全てぶち壊すような真似してくるなんて…。

というか母親が命を懸けてまで助けた女の子だ、絶対に主人公はどんな子なのかと調べ上げるはずだし、ましてや忘れるなんて…。智紗にも主人公に苛立ちを覚えてしまうお話になっていった。

また、これはりりすルートの場合も同様であり、彼女もまた自分が海に行きたいだなんていったからと昔の事を蒸し返し、罪の意識から身を引こうとする。おいおいおい、ちょっと待ってくれよ。なんで君たち今になってそんなこと言い出すんだ。三角関係はどこ行った?と言いたくなる。そしてTriangleルートの効果によりそれらを再度見させられることになるからもう絶望だ。画面が反転した時に死んだ魚のような目をした自分がいたのをよく覚えている。


てな感じでメインのお話は全然と言っていいほど楽しめなかったわけだが。この作品をやる価値がなかったとは言えない。なぜなら女神が存在していたのだから。勿論、嘉神川クロエちゃんのことだ。彼女がいなかったらと思うと…。

彼女のルートも複雑化していきそうに見えて案外あっさり解決したりと、別段シナリオが良かったわけでもない。そしてヒロインと主人公の恋愛描写が良かったというわけでもない。では何が良かったのかというとシナリオなんてどうでもよくなるくらいにクロエが可愛かったのだ。

容姿端麗、成績優秀。加えて生徒会長を務めており生徒の信頼も厚い彼女。そんな彼女が男の家にいきなり転がり込んできて同居し始める。この時点でかなり好きな展開だった。加えてピーマンやニンジン、しいたけが食べられないなど、完璧に見えた彼女のお茶目な部分がどんどん露わになっていく。中には過去のトラウマが理由になっているものなんかもあるが、好き嫌いは多い。牛丼屋でしょうがを大量に欲するシーンが可愛くて好きだ。

お裁縫もするし、失敗もする。ああ、彼女も普通の女の子なのだなと。それを好意的に受け取ることができたのであればもう彼女しか見えなくなるはずだ。嘉神川クロエという女の子がいてくれて本当に良かった。これだけでだいぶ満たされた。