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asteryukariさんのももえろ濃霧注意報!の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
ももえろ濃霧注意報!
ブランド
LAPIS BLUe.
得点
79
参照数
131

一言コメント

序盤こそちょっぴり下品な会話劇とえっちなシーンがメインだが、読み進めるにつれて徐々に物語としての面白さも見えてくる。想像していた以上に良い作品でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

タイトル名から何となくギャグっぽい感じの作品だなと感じていた。蓋を開けてみると「エロミスト」と呼ばれる特殊な霧(包まれると強制的に欲情してしまう)や下ネタ多めの会話などが豊富に用意されていて、なるほど自分の予感は当たっていたなと、まあHシーンを楽しむタイプの作品だなと判断していた。もしプレイしたのが体験版であったら、製品版は購入しなかったかもしれない。

そうやって軽めの期待で読み進めていたわけだが...たまげた。個別√に派生する雰囲気が一転、今まではキャラ同士の面白可笑しい会話劇が魅力の作品であったが、物語としての面白さを感じ始める。しかも各個別√内で解決するようなものではなく、いくつかの結末を経て迎える最後√で様々な事実が明らかになるという作りになっているからもう毎回続きが気になって仕方ない。いつの間にか本作の虜になっていた。


以下√ごとの感想。


〇紗希
すごくエッチなお姉さんことほんわか系の巨乳お姉さんキャラ。自ら公言している通りえっちに関しては積極的で、官能小説なんかも集めている。主人公があこがれの作家だと知ると一気に距離を詰めてくるのが印象的。何かと主人公を気にかけてくれる場面が多く、主人公もそこに感謝していたりする。また、エロミストが漂ってくるとエッチなお姉さんパワーを発揮してきて、下のお世話もしてくれたりと、まさに理想の年上キャラだった。

話が進行し、周りから主人公が忘れ始めても彼女の態度は変わらず、頼りになるお姉さんっぷりを見せてくれる。しかしながら本√では事態の解決には向かわないため、やや切ない結末を迎えることになるわけだが、それでも最後まで味方でいようとしてくれた彼女の態度は目を見張るものがあった。また、彼女は結里√でも重要な役割を担当している。


〇鈴果
比較的スタイルがいい他ヒロイン達とは打って変わってくびれのない腰、ぺったんこの胸、童顔とマニア受けの三点が揃った女の子。懸命に購買で働く姿も相俟ってとてもかわいらしい。部内の動きもイメージ通りで、癖の強いメンバーの中で佇むマスコット的な存在となっていた。

このルートも紗希√と同じように、周囲から主人公が忘れられていき、ついには鈴果も主人公の事を忘れてしまうというもの。この話でも謎は明らかにはならないため離れ離れになった後、エピローグで再開するという少々雑な締め方になっていた。まあ鈴果ちゃんを愛でて楽しむべき作品だったかなと。


〇なずな
お兄ちゃん大好き超愛してるな重度のブラコン妹。毎日主人公を起こしてくれるし、押されたら照れ隠しのツンを発動してきたりと理想の妹キャラクターだった。部活動メインの作品というわけでもないので、妹と過ごす場面も多く用意されていて、一ヒロインとして健闘していたと思う。

ただ、√については可哀想の一言で、彼女の正体を加味するとまあ理解はできるのだが、それでも残念だったなと。彼女からすればえっちができただけで相当喜ばしいことだと思うが、ヒロインとして見ていた身からするともっと丁寧な恋愛風景を見せてほしかった。


〇結里
いつも冷静で、男性口調な喋り方が特徴的。江戸風俗研究会の創立者ということで、エロミストについての関心も異常に強く、自身も影響を受けながら調査を続けていく。そんな変わり者の彼女だが、個別√に入ると個性をグングン伸ばしていく。

まず第一にかわいい。とてもとてもかわいい。普段は平気で下ネタを口にするくせに、いざ性行為をするとなると途端にしおらしくなって、「ムードを大事にしたい」なんて女の子らしい発言もするようにもなる。関係が恋人に進展するとその愛らしさは止まることをしらず、読み進めれば読み進めるほど愛おしいキャラクターになっていく。

加えて彼女は他√と同じように主人公が周りから忘れられ始めると違う魅力を見せてくれる。主人公の事を忘れないように自身にスタンガンを打ち込み、主人公が不安になったときは支えになってあげる。実に男気にあふれた良い女になってくれた。主人公も言っていたが本当に「兄貴」と呼びたくなるくらいにはかっこいい。そして、そんな逞しい彼女と共に事態の解決に向かうわけだ。

零戦で突っ込んで全てを解決してしまう点には苦笑したが、あの勢いは嫌いではなかった。また、世界がループしている事やエロミストが発現してしまう理由など、知りたかった情報をしっかり出してくれたのは嬉しい。読んでいて相槌を打ちたくなる瞬間も多かったし、気持ちとしてもすっきりした。本音を言えば紗希の口から語られて終わりにはしてほしくなかったが。流花についても、もう少し詳細な説明がほしかったかなと。

ただまあ、エピローグについては満点に近く、あの世界で過ごした経験がマイナスで終わっていない点が非常に良かった。あの頃の関係が今に繋がっているんだと、とても美しい終わり方だった。


〇アナザーストーリー
全√クリア後に解禁されるアナザーストーリーは元凶となった二人についてその経緯を語ってくれるわけだが、新規に得られる情報は少なく、この話を読んでも二人の行動に納得はできなかった。ただ、この二人があって主人公があり、あの物語あるので逃げずに書いてくれた点は評価したいなと思う。


〇総括
全ての物語を読み切ってみての感想は間違いなく"面白かった"。説明をすべてヒロインの口頭で終わらせてしまう点や、発端となった二人の背景が薄いなど、不満点はいくつかあるものの、初めに抱いた期待を大きく越えてくれた。エロかったとか、可愛かったで終わることのない、きちんとした面白さの備わっている良い作品だった。