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asteryukariさんの四季の詩 -Poetry of the four seasons-の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
四季の詩 -Poetry of the four seasons-
ブランド
れいんどっぐ
得点
78
参照数
47

一言コメント

「家族」というテーマが前面に押し出されている、温かさと繋がりを感じる良い作品だった。ルートごとの差がほとんどない点は惜しいが、そのちょっとした変化で好きな部分があったので、そこは本当に良かった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

インレの前身である同人サークル「れいんどっぐ」から発売された作品であり、極道の世界に焦点を当てた内容となっている。選択肢はほとんどなく、一章読み終えたら次の章が解放されていく、いたってシンプルな作りになっている。ヒロインの名前に合わせて、春から夏、秋、そして冬が解放されていく感じがとても良い。

ボリュームもそこそこあって、春を読み終えた後はまだ三つも読めるのかと気分も高揚したが、蓋を開けてみるとそのほとんどが共通ルートであり、ヒロインとの会話や終盤の展開が少し変わる程度。ここは正直、残念だったと言わざるを得ないが、そのちょっとした変化で好きな部分もあったりしたのでまあ良しとする。

本作の大きなテーマとしてはやはり「家族」というものが前に出ていたかなと思う。借金に塗れた末に両親が自殺という中々にハードな人生を歩んでいる主人公が、はじめて家族の温かさに触れ、家族というものにプラスの感情を持っていく様はとても美しく、本作の最大の魅力である。

辰夫は序盤こそ気狂いタイプの親父キャラなのだが、商売に対しては真剣その藻であったり、ここぞという場面では男らしい姿を見せてくれたりする。系統がD.O.の某作品キャラにそっくりだ。恵美さんは恵美さんで辰夫とは間反対のおっとりした性格なのだが、母親らしい包容力が垣間見える瞬間が多々あり、あの家族を支えるために必要不可欠な存在だったなと。

娘の二人はヒロインだけあってまあ可愛くて、特に真冬ちゃんなんかは容姿的にも性格的にも好みだった。警戒心が強いのは極道の世界の人間を嫌っているからだけでなく、家族の身を守りたいという意志の表れでもあるわけで、なんだかんだやっぱり家族想いな娘ちゃんを見て一層、彼女のことが好きになった。

そんなわけでルートとしても冬が一番好きだった…と言いたいところなのだが、プレイしてみて一番のお気に入りは秋ルート。秋ルートの何が良いって、終盤の展開が他とは違っているところ。コンテナの中でまんまと罠に嵌り、若頭が射殺。その後に警察がくるというのが他ルートなのだが、秋は違う。その前に組長と龍司が助けに来てくれるのだ。

この時の一枚絵がまあ熱くて、いつもとは違う着物を纏った春夜は誰がどう見たって頭そのものだった。女だからといって手を抜くことなど一切できやしない、そんな気迫が彼女からは伝わってきた。

先程触れた「家族の良さ」というのは辰夫たちだけではなく、春夜たち白鷹組のことも指している。家族を失った主人公が、二つの家族に支えられて前向きになっていく。それが本当に好きで、それがはっきりと描かれている秋ルートが最も良い内容だったと私は思う。タカシの一件なんかは結構辛かったが、それを覆うくらい温かいルートだった。

全体的に粗が目立っていたり、回収されていない部分(死の天使など)もあるが、話自体はテーマに沿ったものを用意してきてくれたので、読後感は悪くなかった。正直、僕キミよりも好きな作品なので、願わくばこちらも商業化して多くのユーザに広まってほしいものである。改めて、温かい作品ありがとう。