ああ。この感覚だ。この子を見ていると、何故だか僕は笑顔になる。わけもわからず、ただ、ただ、うれしくて頬が緩む。
唐突にうさぎが死んだり、かと思ったら甘い甘い学園生活が始まったり。まあその学園生活というのも序章に過ぎなかったわけだが…。
かたつむりさんやら真性さんやらの攻略を終え、残すところ二つのENDのみとなったところで第二幕、つい鳥肌が立ってしまった。ああいった演出はやはり高揚してしまう。ああ。これから始まるんだと期待に胸を膨らませながら読み進めていったわけだが…。
長谷川・アイザック・泉・メルセデス・ジャココちゃん、この娘に出会えて本当に良かった。一目見た瞬間、その可愛さにひれ伏してしまった。加えて性格や声も愛らしいし、なんなんだこの娘はと、ここにきてこんなヒロインが待っていたのかと感嘆してしまった。
また、当然ヒロインの追加だけでなく、お話も一気に動き出す。これまで謎だったキャンディの存在や魔法界と人間界に関わる事象、そして主人公について。今までの平和な学園生活が噓みたいに壮大な話へと繋がっていった。
ジャコについてもただ可愛いだけで終わらず、物語でも非常に重要な役を持っていて、故にさらに好きになっていった。彼女とジャックの出会いと別れのエピソードが秀逸で、琴線に触れる場面が多々あった。
初めは呆れと警戒が入り混じったような態度で接していた彼女が段々とジャックに心を売るしていく様は何とも素敵で、回想シーンでの別れ際なんかたまらない。
「たとえ世界がお前を忘れても、私がお前を知っている」。
そこにはお互い口に出さなくても確かに繋がっているものがあった。
彼女が青空を見ていた理由というのも...素晴らしい。
ではそんな彼女が優とどう付き合っていくのかということになるわけだが、優は優で過程は違えど「人を愛そうとする」姿に惹かれたよう。そして誰よりも優の幸せを願っていたのだと、そんなことが明らかになるエピソードが用意されていたわけだが、まあ見入ってしまう。
裏でずっと支えてくれたのもそうだが、それなのに幸せになれない。そのどうしようもない事実がとても痛いのだ。ジャコちゃんを見ていて何度胸が締め付けられたか、ただひたむきに優の幸せ、未来を願い続ける少女の姿が瞳を濡らした。
あの最後の独白、あれなんかは切なすぎて切なすぎて….。
「優が私の事を大好きと言ってくれた」
「永遠とも思えるぐらい永い時を生きたが…こんなにうれしいのは…初めてだ」
「私は、おまえがこの先、生きてくれることが…」
「とてもうれしくて、喜ばしくて、尊いことのように思えてならない」
彼女に与えられた呪い、それは彼女が願ってもないものだった。よかったね、とそう言いたくなるほど私自身も嬉しかった。あのまま消えるというのもそれはそれで尊いものだったが、彼女のあの笑顔を見るとそんな考えは消し飛ぶ。そうだ、彼女も幸せになっていいんだから。
これほどまでに素敵なお話を描いてもなお止まらないのがこの作品。新た?に出てきたへスぺラスを軸に物語は更に展開していく。クトゥルフ要素も満載で、バトルも多くて、もう完全に趣味の世界になっていた。
しかしそうでありながらとても楽しく読めたのは、好みと合致したからだろう。本当に第二幕からは私の好みまっしぐらという感じで、感謝の気持ちすら覚えた。シャインニグ トラぺゾヘドロンのくだりとかすごく好きだ。
ジャックと優が遭遇する場面はまあ好きで、優がただの操り人形ではなく、自身の考えでここまで来たのだということを強く印象付けられた。だからこそ、そうして勝ち取った平和の日々というのが効いてくる。最高の選択ではなかったとしても、それは素敵な選択なのだ。とても綺麗なタイトル回収だった。願わくばあの幸せの日々が少しでも長く続きますように…。