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asteryukariさんのメモリーズオフ #5 とぎれたフィルムの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
メモリーズオフ #5 とぎれたフィルム
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
73
参照数
105

一言コメント

永遠にも思えた曇り空が一気に晴れていくような、そんな素晴らしいサプライズを最後に用意していてくれた。これのおかげで満足とはいかないがやる価値はあったなと思える一作になった。本当にありがとう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今までプレイしてきたメモオフシリーズの中でも特に暗かった本作。近しい人が亡くなった状態でのスタートは一作目で経験済みではあるが、影響の具合はかなり違っていた。みんながみんなその人のことを忘れようとしている、そんな始まり方であったからもうこれから鬱まっしぐらになっていくことが大いに予想できた。

その上でどんな話が待っているのか、彼らは最終的にどういった区切りをつけるのかに目を向け物語を追っていたわけだが…。想像以上にどんよりとしていた。CUM研のメンバー及びあすかちゃんの絡みの話が鬱なのはわかっていたが、まさかそれ以上に暗い話が用意されていたとは…。

言うまでもなく瑞穂さんの話である。包容力のある大人な女性との恋愛が描かれていると思いきや、まさかの未亡人でストーリーはその身代わりで付き合うというもの。「死別は終わりではなく停止」、彼女の苦しみと苦悩が満遍なく描かれていた。ただ、それを見て感じ入るところがあるかというと微妙なところ。勝手だなぁというのが正直な感想。こういった話は案外好きになることが多いのだが…うーん。

ただ、この√で語られていた「死別は時間の停止」に関連する台詞が麻尋√リバースカットにて使われていたのは良かったなと思う。メンバーの中で前に唯一前に踏み出そうとしているように見えた彼もまた引きずっていたのだと。

麻尋√で一つの結末に行きついた後に向かえることができる「リバースカット」。雄介についての真相が明らかになったり、みんなのわだかまりが解けたりするものの、あんまりしっくりこないというのが素直な気持ちだ。真相についてはふーんくらいにしか思うことができなかったし、拗れの解消の仕方もアバウトに感じた。

これは登場人物に誰一人理解を示すことができなかったのが大きいのかなと。本当に好きな人物が存在しなかった。あえて挙げるなら歩さんだろうか、4の時と比べて格段に株を上げた。

最初に良いなと思ったあすかちゃんも読み進めるごとにどんどん残念になっていくし、かといって麻尋に好感が持てるかというと難しい。周りの友人は問題外。小津くん、キミの顔はもう見たくないよ。

ただ、この作品は最後の最後に素晴らしいものを残していってくれた。それはラストカットにて迎えるEDにある。

「ロマンシングストーリー」、この曲に出会えたことが何よりの収穫であり、もっとも気分が高揚した瞬間だった。素晴らしいキャストはいなかったけれど、そんなことは関係ないくらい晴れやかな気持ちにさせられた。

3がこけて、4が中々良い出来だったのでもしかしたら…と思っていたが悪い予感が的中してしまったよう。ただ、だとしたら次の6には期待してもいいんじゃないだろうか、俄然やる気が湧いてきた。

まあその前にencoreがあるわけだが。これ以上何を見せてくれるのか、非常に見物である。