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asteryukariさんの想い出にかわる君 〜メモリーズオフ〜の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
想い出にかわる君 〜メモリーズオフ〜
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
68
参照数
189

一言コメント

良い所も微かに存在するが、全体的に不快感の多い作品であった。そしてその不快感を生み出していたのは…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1,2と個人的にかなり楽しむことができたメモオフシリーズ。此度の出来はいかがかなものかと、期待を胸にプレイしたわけだが…うんまあこんな作品もあるよなといった感じだ。ヒロインが多い分、それなりにシナリオも用意されているわけで、なかなかのボリュームだった。そしてそこには良いシナリオというのもきちんと混じっているわけで、そこに救われたなと思う。全部が全部微妙なお話じゃなくて本当に良かった。


さて、今回の舞台は今までとは打って変わって大学ということで、自由度が増えた分、様々な方向に話が展開していきそうで面白そうだなというのが私の最初の印象。しかし全然広がっていかない。だってショーゴくんが大学に全然いかず、カフェで飲み食いしているだけなんだもの。挙句の果てにはネットで荒らし行為なんかを楽しむなど、かっこいい要素なんかまるで見当たらない彼。でもモテるという…。


そんなショーゴは√分岐後も変わらずヘタレで自分勝手、終始読み手をイライラさせてくる。


まあ主人公がダメダメなのはもう慣れっこだ。重要なのはそれを支える周りの存在、友人キャラだ。トビーくんは冷静な判断ができるし、状況把握も迅速。人との距離の取り方が上手で、なかなか好印象だった。「なんだこの作品いけるじゃないか!」と、そう思った。しかしその喜びはもう一人の友人によって粉々に砕かれる。


そう、マグローくんだ。その性格からさぞ良い奴になっていくんだろうなと思っていたのだが…作中で最も嫌いなキャラになってしまった。彼の発言の数々は一ミリも面白くないし、頭の悪さが目立つだけ。それでいて場をかき乱すという不快以外の何者でもないキャラだった。


ただ、大好きキャラもいてそれはテンチョーさん。もう彼はダメダメな男子陣の中ではまさに神に等しい輝きを放っていて、台詞がどれも素晴らしかった。振り返ってみると彼の言っていることは常に正しかったように思える。そんな大好きな人物だからこそ某√では悲しみに打ちひしがれた…。



ヒロインについては√ごとに見ていきたいと思う。



●沙子

クールビューティーのが相応しい彼女。そのシナリオはなかなか現実味のあるもので、他の√とは雰囲気がまるで違う。しかしながら他と比べると読みごたえはあったかなと思う。私も彼女と同じ立場だったら助けることができただろうか、悩まず平然に過ごすことができただろうか、少し考えさせられた。この話、惜しいのが那由多の存在だ。少しは登場を控えてくれ…。



●那由多

この娘を「芸術」にあてたのは素晴らしい判断だったなとたびたび思っていた。この子のお話は深い要素こそ少ないが面白さもなかったなと。もっと彼女の可愛さを全面的に出してくるようなシナリオでもよかったかもしれない。まあ可愛いなんて思った瞬間はなかったが。



●響

もうこの娘は最高だった。やはりこれくらいぶっ飛んでくれると深い要素がすべて笑いに変わる。「アタシはお金が欲しい!幸せになりたい!それって悪いことなの!?」働かずにこういうセリフがスパッと言えるとはもはや才能の域だとすら思う。

この√の面白いところは彼女だけでなくショーゴも狂っていくところ。ストーカーである彼女に普通に接し、心が通じ合ってしまってからはもう大変、電車を押す下りは抱腹絶倒。本当に楽しい√だった。



●環

大人しく拙いしゃべりが特徴的な女の子。こういうタイプは嫌いではないため、優しく見守ってあげようと思ったが…うーん。他人に依存するというのならまだよかったがこの娘の場合は何も考えないようにしか感じなかった。日々何となく生きてショーゴを好きになった理由も何となく。可哀想だけれど、周りから非難されてしまうのも仕方ないかなと。

この√の最も酷い点はヒロインではなく、マグローくんある。彼とショーゴの言い争いは見るに堪えないものだった。あとあの不意打ちはなんなのか…。



●深歩

車椅子に乗っているヒロインということで好きそうな子がやってきた。元気なのもグッド。明るく振舞いながらも心の底ではやっぱりみんなと同じがいいと思う彼女、OPのあの一言は彼女の心からの訴えなんだとわかる。

みんなと同じ「普通」を目指す彼女の姿はショーゴが適当に生きているからこそ眩しく見えた。そんなショーゴが「前へ進む以外にも~」と言うのは癪だが、彼女の気持ちを考えるとあの締め方でよかったのかなと思う。内容の割に軽く感じたが、このくらいが丁度良いのかな。



●カナタ

ヒロインの好みはさておき、この作品においてこの√が一番しっくりきた。落ち着くべきところに落ち着いたなと思う。良かったのが唯笑の使いどころ。

本作では唯笑以外にも過去作のキャラが登場するのだが、活躍はしていなかった。というかむしろ小夜美さんなんかはイメージが下がった。ただ、唯笑だけは違う。ショーゴとのあのやりとりは彼女だからこそのもの。素晴らしい配役だったなと。



●音緒

本作のTrueヒロイン。しっかりしているけれど、好きな人にはでれっでれになる。とても良い。自分を見てもらおうと必死な点も、周りのことを考えると少し気になるが許容範囲内だ。そんな可愛い彼女の√はというと…どうしてこんなことになってしまったのか。

二股自体は良いが、結局それを最後まで引きずってしまうのは良くない。カナタとの別れる際のあの戸惑いはまあ仕方ないと思うが、「未練がない」と言いながらリボンをしっかり持ち続けているのはちょっと…。カナタのことが忘れられないという事を主張したかったのであればせめてTrue扱いはやめてほしい。逆に音緒が可哀想だ。





できるだけ褒めようと努めたが、やはり不満ばかりが並んでしまったように感じる。ただ、曲なんかはすごくよかったのでそれなりに気持ちは落ち着いた。次はどんなメモオフが待っているのか、不安と期待が入り混じる。