ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんのMemories Off 2ndの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
Memories Off 2nd
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
86
参照数
309

一言コメント

宇宙全体の質量に、光速の二乗をかけたぐらい君が好き。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

Memories Offシリーズ二作目ということで、 一作目でかなり好感触だったのもあり、期待は十分だった。そして本作はその期待以上の面白さを提供してくれた。まあ同時に辛さも提供してくれたわけなのだが…。何はともあれ本当にプレイしてよかった。こんなにも感情が高ぶってしまったのは久方ぶりだ。

初めてすぐに一人の女の子に心をガシっと掴まれた。そして結局その娘からは最後まで逃れられなかった。この作品をプレイした方なら薄々気が付いているとは思うがそう、白河ほたるちゃんだ。

容姿もそうだがそれ以上に彼女の性格、言動、健への想い等々…彼女を構成するその全てが輝いて見えたのだ。大人しいように見えて実はとってもお茶目で、「ほたる的ギャグ」なんかもかましてくる。
「いちごー、が無い」
「うっそぴょーん、ウッサぴょーん」
「合唱団だけにコーラ吸うぅ~♪」

他にもほたる的ギャグはいくつかあるのだが、これらが本当に好きで、気付けば癒しになっていた。ポーズもまた可愛い。

そして健を想う気持ちについて、これはもう彼女の最大の魅力であり、この作品における最大の特徴なのかなと個人的には思う。本当に健の事が大好きで大好きでたまらないのだなというのが伝わってくる。健にどれだけ酷い言葉、対応をされても最終的には彼を想った上での結論を出す。そんなシーンがいくつも見られた。

そして、そんな健気な彼女を見て何度も何度も涙を流す私だった。辛すぎて休憩するなんてことをしたのはいつ以来だっただろうか、彼女の気持ちに同調しすぎて時に切り離す時間すら必要だった。プレイ中はそのくらい彼女の事が頭から離れなかった。

これはほたる√及び前日譚である「雪蛍」を始めの方にプレイしたことが大きく関わっている。今はこの攻略順で本当に良かったと思っている。というのもほたる√を先にやっているかいないかで彼女への意識が大きく変わるからだ。

彼女がどれほどまでに健の事を想っているか、好きになるきっかけはなんだったか、あの腕時計にどれだけの価値があるかを理解していないと…。特に腕時計のエピソードに関してはかなり重要であり、某√で深く関わってくる。

以下√ごとの感想。

●ほたる√
最高に愛おしいほわちゃんことほたるちゃん。彼女の魅力に取り憑かれたら最後、読み終わるまで彼女と共に苦しみ続けることになる。そして読み終えた後は自然と彼女の√をもう一周してしまう。それほどまでに大きな存在だ。

健にいくら素っ気ない態度をとられたって話しかけ続ける。その光景は序盤こそ少し行き過ぎたようにも見えたが、そんなことは決してなかった。話を読み進めていくうちにどんどん彼女の優しさがわかってくる。そして「ほたるはずっと健ちゃんだけ」という言葉の意味にも。

ピアノの演奏をまるで魔法の様だと褒められた時の喜びも、コンクールに出場する意味も、ソオチンニャン人形に込めた想いも、全てが全て健への想いに直結していたのだ。個人的に人形作りの件は大好きで、やっぱり女の子が陰で努力するお話はいいなぁと。

それなのに…健は本当にバカだ、完全無欠の大バカ野郎だ。そして、そんなバカにオマジナイをかけてくれた信は最高だ。

前作で主人公の親友だった信。彼は本作ではバイト先の先輩として登場するが、その活躍ぶりは単なるバイトの先輩後輩関係では片づけられないほど。まーあ前作をプレイした方ならぶわっと鳥肌が立っただろう、そして違和感なく繋げてきたライターさんはすごい。本当なら何であの台詞をここで使うのかと言いたくなるところだが、あれは繋ぎが綺麗だった。素敵なファンサービスだったよ。

二人が仲直りしてからの話には幸せしかなかった。その光景が眩しくて、眩しくて…。そりゃあ天にとどろくぐらいの叫び声をあげたくもなる。

この時はもうこれで終わりだと思っていたがまだまだ続きがあったわけだ。その事に気付いた時、私がどれだけ嬉しかったか。

○雪蛍
白河ほたる√の続編であり、彼女が健を好きになるきっかけが分かる前日譚でもある。これが凄まじい破壊力をもっていた。おまけなんて言ってはいけない、これがあることで改めてほたるを好きなるし、あのメガのスピードモンスターはどんなものなのかが分かる。

一目惚れして主人公の気を引くために試行錯誤して、なのに同じクラスのそれも隣の席になったらなったで、途端にたじろいでしまう。はぁ…ライターさんはさぁ、この娘をどれだけ可愛く描けば気が済むんだ。恐ろしい程に可憐だった。

極めつけはあのクロノグラフだ、恐らく現実でもある某メーカーの商品だとは思うが、あれを高校生で買ってプレゼントするなんて…恐ろしい娘だ。しかもポンと買うのではなく自分の全財産+働いて買うから凄い。また、その働くエピソードなんかも良くて、きちんと彼女にとってプラスになっているというのがたまらない。何の文句もない完璧な流れだった。

そんな風に順調に積み重ねていった彼女をあんなふうにして突き落とすからびっくり。捨てられたプリンを見てブチ切れてしまった。彼女の気持ちを考え疲れるくらい泣いた。

決してストレートなゴールではないけれど、全てのわだかまりが解消されて幸せそうにする彼女を見て心の靄がサーっと消えていった。そして思うわけだ、こんなに幸せな気分なのにこれから彼女たちの仲を何回も何回も引き裂かなければならないのかと…。

●静流√
家族なのになんで争わなくてはいけないのか、読み進めている間度々思った。それもお互いがお互いの事を大好きだからこそ尚更辛い。実際に静流さんは常に妹の事を考えていて、ほたるから乗り換えようとする健を必死に説得していた。

静流さんも中々辛い立ち位置にいる人で、それは恋愛関係だけでなくこれまでの人生を見てもわかる。ほたるに才能の違いを見せつけられ、自分が初めて感動を覚えた曲ですら嫌いになる。こういった話はいつ見ても辛い。別に誰が悪いわけでもない、けれど確実にダメージを受けた人がいるというのが何とも…。

そうやって静流さんへの同情がありつつも、やっぱりほたるちゃんの優しさが光るお話だったかなと。健ちゃんのためだったらなんだってすると言ってくる辺りも相当くるが、その後必要以上に明るく振る舞うシーンがもう…。缶ジュースを奢ってもらうなんてそれ雪蛍の話を思い出しちゃうじゃん…。

この√は案外BADが好きで、まあ解釈としては逃げになってしまうけれど、私としては良い落としどころだったのではないかなと。自分のことを卑怯者と罵り、あなたもこの恋も忘れる。「好きだった人」として思いきる。こんな苦しい決断をしてくれた静流さんを私は称えたい。

●つばめ√
登場の仕方が非常に印象深いレモン大好き南先生。つばめという名でありながら幼い頃から徹底した管理の下育った彼女。自分のことを「飛べない燕」だと言っているのが悲しい。

はじめはその電波的な発言の数々からヒロインとしての魅力なんて皆無といっていい彼女だったが、だんだんと距離を縮めてくるうちに可愛さに気付いてくる。もしかしたら一番幼い笑顔を見せていたのは彼女かもしれない。花火をしている時にウキウキな彼女が忘れられない。かと思えばレモンの香りは、たぎらせるものとか言ってレモンの香りを吸引し始めるからおもしろい。

この√の伏線回収にはハッとさせられた。そうだよ、レモンの掛け合いなんて会話があったよ。ほたる√に引き続き翔太が少し可哀想になる。ずっと思いを秘めていてやっと叶うと思いきや相手の口から出たのは親友の名前、しかもそれは間違いなのに。こんなの死にたくもなる。

そんな彼にも南先生は容赦がないの面白い。でもそんな恋愛ができるほど自由になっていたのだと思うとちょっとした感動を覚える。まったく、かわいい先生だ。

ちなみのこの√のBADはかなりきつくて、読後しばらくぼーっとしてしまった。髪留めが見つかってしまった時の鳥肌が立つ感覚はしばらく忘れないだろう。

●巴√
ほたると中学からの親友である巴ちゃん。そんな女の子が攻略対象になってなればなんとなく話の内容が分かってくる。嫌になる。しかも今までのほたるとは違って強気でぶつかってくるから辛い。

この√の健は作中でも最低だ。まぁ結論を見ると、ほたる√以外の主人公はどれも最低になってしまうのだが、この√は訳が違う。特にBADなんかは、巴が親友を想い自分の気持ちに歯止めをかけようとしているのに、健がそれを許さない。浮気しようぜと言わんばかりにアプローチをかけていく。

挙句の果てにはほたるが「ほたると、お別れてしてください…」と告げた後すぐに「…なぁ。せっかく、ほたるがああ言ってくれてるんだ。つきあってよ。」なんて台詞を巴の肩に手を回しながら吐く。

怒りが爆発しそうになった。お前、ほたるちゃんの気持ち考えたことあるのかと、それはもう翔太の気持ちがよくわかった。

まあGOODの方はそれなりいい感じで終わっていて、やっぱり健の態度は許せないがほたるの事も考えて答えを出した巴は評価したい。「言ってあげて」の後に泣き崩れるほたるちゃんが辛すぎるが。

●希√
この√はほたるが好きな自分からすると傷は浅く済むが、それでもやはり痛い。あの演奏の賭け、ほたる√の指が動かなくなった時みたいに噓をついたり、あるいはわざと下手くそに弾くことだってできたはずだ。でもそれをほたるはしなかった。むしろ本気で、遠い所に行ってしまうことを予感させるような演奏をした。

彼女はやはり健ちゃんの事を考えて弾いていたのだろう、彼が幸せになるように、重荷にならないように…。そう思うとあの橋での別れは軽いようで実はとても重い。

希及び望の話は正直、あの電車の件がかなり引っかかっていて、どちらも感動には至らなかった。いくら相手を思いやるためとはいえその方法はないだろと、いやその方法しかなかったとしてもそれは駄目だろと。

また、どちらも選ばなかった希望ENDに関しては上手くできているなと感じた。どちらも選ばなかったということがどういった結果に繋がるのか、プレイヤーとしても興味をそそるものだった。

●鷹乃√
これまたどえらい女の子が来た。これ前のヒロインとは異なり警戒心バリバリの凛とした彼女。不用意に近づいてくる健に対して「カナブン」だの「ゴキブリ」だの言い放つ姿を見て大いに笑わせてもらった。これだよ、これ。今までのチョロイン達とはわけが違う。俄然、攻略が楽しみになった。

わけが違うのは態度だけでなく食事の量もそうで、なんとファミレスなのに、二人だけなのに合計金額が2万越え。意味が分からない。

シナリオはいつも強気な彼女だからこそ映えるもので、実はとっても線先でやさしい心の持ち主だということが窺える。
「あの人には…もう、あの人の世界がある。それを、私が壊しちゃいけない。」

そう言いつつも声を殺して泣くというのが切ないが素敵だ。健も無理に説得しようとしないでただ彼女に肩を貸すというのも良い判断だったと思う。



●総括
といった感じでほたる√以外でもほたるの魅力が光っていて、それはほたるを好きになったからこそのもの。振ることになるのはやはり辛いが、辛さだけなく彼女の優しさや強さを享受できる場面もある。そうやってすべての√を読み終えた後に再度ほたる√での彼女を思い出すと本当に心からの喜びに包まれる。

また、アフターも内容としてはそこまでのものではないが、やっぱりほわちゃんがメインヒロインで、周りとの関係も円満なまま終わるというのが非常に良い。少し世界が優しすぎる気もするが、それが不満に繋がるかといえばそんなことはない。だってほわちゃんが好きだから。

初見でちょっとかわいいなと思っていたヒロインをこんなに好きになるとは思ってもいなかったし、こんなに心に来る内容だとも思っていなかった。ほわちゃんに恋して、ほわちゃんと一緒に悲しんで、最後はほわちゃんと一緒に笑うことができた。感無量だ、こんなにも素敵なヒロインを生み出してくれるなんて、感謝の気持ちしかない。

本当にありがとう。