少女達と過ごす鍛錬の日々はまさに癒しそのものであり、終始幸せな心地で読み続けることが出来た。ユニークなシステムもストーリーに噛み合っていて非常に良かったと思う。
タイトルにも強く主張されている通りLittle Witchさんの作品であり、ファンタジー要素の強い一作となっていた。話はとてもシンプルで、大魔法使いになった主人公が二人の少女を一人前の魔法使いに育て上げるというもの。ただ、こういった系統の話を好む私としては、本作のあらすじは大変魅力的に見えた。
本作はブランドの大きな武器ともいえるFFDシステムに加え、二人を魔法使いに育て上げるための育成パートが存在する。その育成パートがかなり独特で、ダイスを振って出た絵柄がポイントとしてステータスに加算され、そのポイントを消費することで新しい魔法を覚えられるというモノ。
一見、運ゲーに見えるものの、魔法の効力が凄まじく、クリックすることでダイスの目を調整出来たりもするため、慣れてくると笑ってしまうくらいポイントが貯まるようになる。そして、それがとても気持ちいい。片方の魔法でダイスを増やし、もう片方の魔法でダイスを弾きまくるなんてコンボが決まった時にはもうにやけ顔がとまらなくなってしまう。
ただ、良くも悪くもシンプルなゲームシステムなので、プレイヤーによっては飽きてしまう方も多いのではないかと思う。幸い、私は上記のようにいかにして魔法を掛け合わせるか、またどの組み合わせが最も効率が良いのかなど、色々と試しながらやっていたので4周ほどしたにもかかわらず飽きることはなかったし、とても楽しい時間を過ごさせてもらった。
また、ゲームシステムとストーリーとの親和性があった点も良かったかなと。このシステムがあったことで、より育成している感覚が生まれた。あの感覚はただ単にテキストを読み進めるだけでは味わえなかっただろう。終盤になるといつも親心みたいなものが芽生えてしまって、エンドロールを眺めるのが辛くなったものだ。
主人公の育成対象であり、本作のメインヒロインとも言える二人の少女はまあ可愛らしくて、話が進めば進むほどに愛おしくなっていった。
アリアは元気で明るく、勝気な性格であり、その分凹むときはとことん凹むタイプの女の子。それでいて実は貴族の娘であるという事もあり、彼女のルートはその辺にしがらみが大きく関わってくる。
性格的に好きになるとは思っていたが、魔法使いになるべく努力し続ける彼女が可愛くて可愛くて...。ダイスを振る際もどこか彼女贔屓している節があったし、彼女が新しい魔法を習得するたびに祝いの席を設けてあげたくもなった。中でも飛行の魔法を覚えた時の台詞は印象的。
「…先生。本当にありがとう」
いつもは新しい魔法を習得するとわいわいはしゃぐだけの彼女が、主人公のいない所でそっと心からの感謝を述べている。小話程度の尺だが、本作で最も好きなシーンだ。
続いてもう一人の弟子であるカヤはというと快活なアリアとは真反対といった感じで終始控えめで恥ずかしがり屋さんな性格をしていた。そんな彼女が主人公たちとの生活を通じて打ち解けていき、自分を見せるようになっていくのが実に良い。アリアは魔法を覚えて喜ぶ姿が印象深かったが、カヤはまた別の、人として成長していく様が魅力的だったかなと。
個人的にカヤとセファの絡みがすごく好きで、暴走するセファをカヤが必死に説得しようとする光景は眺めていてとても心地よかった。色々と苦労する場面が多い彼女だが、そうやって一生懸命自身の想いを伝えようとしている時の彼女がまた魅力的なのだ。
あとはエンドについて、本作には複数のENDが存在し、特定キャラの好感度を上げ続け、依頼を受けることでそのキャラのルートに入ることが出来る。まあルートと言っても尺はかなり短めなので、話自体は本当にちょっとしたもの。しかしながら、中には良いなと思うものもちゃんと用意されていて、私は特にマリエラルートがお気に入りだ。
恐らく全キャラクターの中で最も早く主人公とのHシーンを見せてくれた女性であり、行為中の台詞に関しても好きになれるとは到底思えないような彼女だったが、ルートの中身はというと中々良かったと思う。普段少女たちと触れ合っていたからこそ、彼女のシナリオが輝いて見えたのだろう。大人同士だからこそのちょっぴり切ない物語が描かれていた。
振り返ってみると楽しい思い出が蘇ってきて、とても素敵な作品であったことを実感する。またいつの日かダイスを振り、彼女達の笑顔を眺めてみたいものだ。