男同士だからこそ生まれる良い部分がたくさんあって、読んでいる最中は楽しくて仕方なかった。ちょっぴり危険だけれど、だからこそ爽快感が生まれる。読み手を飽きさせない素敵な作品だった。
下っ端構成員1人+幹部4人の脱獄劇。この作品のあらすじを見た瞬間、心躍った。こんなの絶対面白いじゃないかと。だからこそどうやって脱獄するのか、どうみんなと協力していくのかを気にしつつ読み進めていたわけだが…脱獄編は序章に過ぎなかった。
まあ最初の脱獄編はお互いあまり面識がない状態で始まるため、まずは人間関係の構築。ここで感じたのはジャンの人柄の良さだ。
主人公のジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテくん。彼の二つ名はこの作品のタイトルにもなっている「ラッキードッグ」驚異的に運が良いらしい。まあそんな彼だから勿論、運の良さも話の中で存分に発揮されているのだが、彼がここまで幹部たちとの仲を深め、ボスにも気に入られているのはやはり人柄のおかげだと思う。
飄々としているようで実は相手の性格、態度を考えて受け答えをしているような、そんな場面がいくつも見られた。時には煽って幹部のスイッチを入れることも。世渡り上手と言うべきか、運の良さと賢い立ち回りが合わさったらそりゃあ出世するよなと。よく頑張ったよジャン…。
続いて逃亡編はというと...一面畑の場所に出て、その辺に小屋で夜を明かしたリ、人を見つけては聞き込み、或いは協力を持ち掛けたりして過ごす。好きな人にはたまらないだろう。ここでもうある程度の協力関係が生まれていて、今までは一人行動なんかも見られたが、きちんと話し合い誰がどう行動するかを決めていた。
また、これまで以上にジャンの仲裁的役割が強調されていて、五人の中の潤滑油の様になっていたかなと。加えて行動していく中で各々の強い部分、それから弱い部分が見えてきて、その人物がどういった人間なのか、どんなものを背負って生きているのかがわかる。ここ登場人物に対しての好き嫌いが徐々にはっきりしていくのかなと。まあ全員好きなのだが。
そしてその後のデイバン編はもう完全に個別√といった感じで幹部たち一人一人にスポットを当てたお話が展開されていく。その内容は決してイチャイチャラブラブといった感じではなく、どちらかというとハードボイルド寄りの内容。男同士ならではの危ない橋を渡るお話がいくつも用意されていて、ハラハラドキドキさせられる。しかし事態が収拾した時の達成感は凄まじくて、喜ぶ彼らの笑顔がとても眩しい。
私が四人の中でも特に心惹かれたのはイヴァンのお話で、私の大好きな友情に満ちた物語を見せてくれた。はじめはすぐ突っかかってきて、話もまともにできなかったイヴァンくん。でも実は不器用なだけで、根は真面目でやさしいことが段々と分かってくる。デイバン編に入る頃にはもうただの良い子に。邪険にしていたジャンにもさりげなく気を遣うその光景は、女性の方が見たら「キャーッ♡」と言ってしまうのではないだろうか。なんとなく気持ちが分かる。
ぶつくさ言い合いながら、お互いを認めていくのがとても自然で見ていて心地よかった。極めつけは海岸でのあのシーンだ。二人共死にかけたはずなのに、なぜか笑い合うことしかできない。CGの美しさも相俟って見入ってしまった。本当に君たちは最高だ…。
やっぱり男同士の良い所ってこういう場面だよなと、女性向け作品に対より一層興味が湧いた。
全体を通して言えるのは、話の構成がとても良くて、徐々に人物同士の距離が縮まっていく感じが好みだったなと。また、それをわかりやすく数値化した好感度システムも非常に良い。今、各幹部たちとどのくらい距離が縮まっているのかその確認にとても役立った。男同士だからできるプラスの要素が詰まっていて、終わった後に良かったなぁと浸ることができた。