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assoneさんの継母情事(継母調教)の長文感想

ユーザー
assone
ゲーム
継母情事(継母調教)
ブランド
大熊猫
得点
80
参照数
1106

一言コメント

傑作です。ただし、いかにもゲーム的な割り切りのいい快感をお求めの方は-30点。ボクと同じ性向をお持ちの方は100点。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

とにかく、テキストがくどいのです。
どういうことかというと、誰でも日常会話では、小説などのように「効率的な会話」を行うわけではなく、
「あー」だの「えーと」だの、何も意味がない接頭語をつけたり、または言葉だけ変えて同じ内容を反復したりしてしまうものだと思うのですが、
このゲームのテキストはその「意味がない」描写を徹底的に行っているのです。
登場人物たちは、しばしば何かを言いかけてやめたり、言いよどんだり、三度も四度も同じ内容の訴えかけを一場面において行ったりします。
それがくどさの種明かしで、しかしそれはうざったさを伴う反面、極度のリアリティを演出します。それはそうでしょう、現実と同じような会話がそこにはあるのですから。

これはわかりにくい例えかもしれませんが、ロマンポルノなどで情事の前後に漂う仕様のない気だるさ、あるいは寂しさを表現するような「間」の感覚、
あれがゲーム内容のそこかしこに頻出するのです。それを受け入れられるかどうかが、まずこのゲームを楽しめるかの分水嶺に思われます。

主人公はモラトリアム真っ盛りで、何事にも気力を失った典型的一学生として描かれますが、上記のようなくどい描写によって、
彼の置かれた無力な状況、為す術なさが、これでもかというほどに強調されます。その、徒労感漂う世界観にとって、このテキストは全く適合して、
プレイヤーによかれあしかれ与える印象を増幅させます。

テキスト同様に粘着質な主人公は、エロシーンに置いてもただひたすらネチネチとした性根を発揮し、継母をイジめ抜きますが、
そこには彼本人ではどうにも制御しがたい愛情と憧れと執着がないまぜとなっていて、いつしかプレイヤーは、彼との深い深い愛着のシンクロを始めることでしょう。

このゲームには感動はありません。爽快さとは完全に無縁です。しかし、ボクのようなリアリティ狂信者にとっては、離れがたい引力を持っていることも確かです。
どうしようもない主人公は、一つを除いていずれも劣らぬどうしようもないENDへと漂着します。結局、こういう人間にはこういう末路しかないのであろうという厭世観を、
先行きの暗さを再確認することが、しかし主人公にシンクロできた人間にとっては一種の快感さえ伴うことでしょう。

はっきり書いてしまいますが、これは抜きゲーではありません。少なくとも、それを求める向きの人々に請求する力は何もないゲームです。
もっとも、このタイトルで抜きゲーを期待するなとは余りに無体な話ですが。
まあ、同じライターさんのこの後の作品傾向を見るなら、そのことについては「ああ」と納得いただけるはずですが。

ボクは人生で一番抜いたエロゲだがな。(誰も聞いちゃいない)