せつなくて、あたたかい。そんな物語。
【点数】
・テーマ、世界観 28/30
・シナリオ 23/30
・キャラクター 26/30
・その他 +5点(表情差分、差分処理、衣装の多様性などなど)
【良かった点】
・雰囲気が最強
・OPが素敵
・キャラクターが魅力的
・演出もよき
・コスプレHはいいぞ
・わかりやすく良いストーリー
【気になった点】
・イチャイチャのレパートリーが少ない
・物語の進行が受け身すぎる。また、ワンパターン
・展開が読めやすすぎる
・春斗、お前本当にアラサーなのか......?
上から順に見ていきましょう。
・雰囲気が最強
まあ、この作品の良かったところを語るにあたって一番初めに来る感想はこれですね。
既に亡くなった者が未練を叶えるために訪れる冬の旅館。それに加えて、主人公を取り巻く色とりどりのキャラクターたち。それらを包むように流れる、どことなく冬や和を思わせるBGM。
そんな冬特有の切なくも暖かい雰囲気は、最初から最後まで一貫して作り続けることが出来ていたと思います。自分も一度こんな旅館に訪れてみたい、そんな風に思わせるほどに素晴らしい出来でした。
・OPが素敵
これは上の項目と少し被る部分があるので手短に。
このゲームのOPもとい主題歌、『ひとひらの、だいすきを、』は上記の雰囲気をよく表した様な曲及びMVだと思いました。実際、自分はその曲調や雰囲気に惹かれて購入したわけですからね笑
歌詞も綺麗でした。エンディングに再びこの曲を流すのは、ある意味では正解のような気がします。OPとして聴いたときとは嫌でも少し違った聴き方になりますからね。
・キャラクターが魅力的
ヒロイン、サブキャラクターともにとても素敵なキャラクター設定をされていました。
ヒロインが魅力的っていうのはこういうゲームにとっては必須条件みたいなものですが、サブキャラクターが魅力的だというのも高得点が付くような作品ではほぼほぼ必須ですよね。
この作品も、女将にまことに橙花に旋太郎という素敵なキャラクター達が物語にさらなる彩りを与えていました。特に、まことなんかは少し味付けを間違えるとただの出落ちオネエになってしまうところだったのですが、この作品ではこの作品に合った設定がなされていて、生き生きと......という言い方は変化もしれませんが、小羽√を中心としたストーリーを支える存在となっていました。サブキャラだと一番好きかもしれません笑
もちろん、ヒロインも皆可愛くて魅力的でしたよ。
・演出もよき
今回特に挙げたいのが、立ち絵での差分です。
まず、表情差分が多い。これによってヒロインの表現幅が広がって、より彼女らが魅力的に映っていたと思います。
その表情差分を切り替えるタイミングも凝っていて良かったです。大抵のヴィジュアルノベルゲームは最低でも一クリックで遷移というのが普通だと思うんですが、この作品は台詞の最中でも立ち絵の表情差分が変化します。制御面倒じゃなかったのかなあ......?
そして、この作品特有の『コスプレ』要素も良かったですね。様々な姿の可愛らしいヒロイン達を拝むことが出来てありがたや、ありがたや~です。まさかCGだけでなく立ち絵まで用意しているとは思ってもいませんでした笑
・コスプレHはいいぞ
まあ、そのままですね。
この作品では主人公が外へと出られないせいで失われるHシーンのバリエーションを失わないようにするためなのかヒロインたちは普段接客で使っているコスプレ衣装を着て主人公をご奉仕するわけなんですけど、これがまあ......良かったですね。
シーンが一人につき九つもあるんですけど、プレイヤーが飽きないようにする工夫がしっかりとされていたと思います。
・わかりやすくて良いストーリー
しっかりと作り上げられた設定を、しっかりと生かしていた良シナリオだったと思います。
小羽√では、突如去りゆく師と弟子の物語が。咲奈√では、再会を果たした主人公とのやり直しの物語が。ネコ√では、死人だからこそ起こる自身の未練や別れへの葛藤の物語が。そして傘√では、旅館「ゆき」だからこその別れと向き合う物語が。
難しいことなんてなにもない、しかしそれでいてちゃんと楽しめて感動できるストーリーに仕上がっていたと思います。
個人的には小羽√と傘√がとても好きでしたね。小羽√はどちらかといえば主人公と小羽というより小羽とその師であるまことの話って感じでしたが......いやあ、ああいうのには弱いんですよね。宴会でまことが小羽の作った料理を食べて感想を言うシーン、多分今作で一番涙腺に来たと思います笑
傘√は......言わずもがなですかね。満を持して春斗の未練が叶い、「ゆき」を去ってしまうことに対して傘がどのように向き合うのかというのは、まあ、ありきたりではありますがしっかりと楽しめました。
さて、ここからは少しネガティブな意見ですので、あまり見たくない、という方はブラウザバック願います。
・イチャイチャのレパートリーが少ない
『デート』といえば中庭。部屋でやるのはSEXばかり。
いや、春斗が外に出られないということは重々承知なんですが、それでもやはり、物足りないなあと感じてしまう自分がいます。
まあ、だからといってあの場でそれ以外に何ができるのかと聞かれても言い淀んでしまいますがね。せめて全ヒロインに明確な趣味があればなあ......
・物語の進行が受け身すぎる。また、ワンパターン
これもまあ、春斗の性質や各々の"未練"ということを考えたら仕方のない部分ではあるのですが、ちょっと物語の進行が受け身すぎるなあ、と。具体的に言えば、外から来る客の存在に頼りすぎだと感じました。
物語が進行するのはいずれの√でも、中心人物の過去や未練にまつわる人物が宿に訪れた時。小羽√ではまことの元弟子、咲奈√では元教師や咲奈の元先輩、ネコ√では両親、傘√では美桜。
"温泉街から少し離れた知る人ぞ知る名旅館"ということなのでそういう人たちが訪れるということに違和感があるかと聞かれたらそう言うわけでもないのですが、ただただ飽きのようなものを感じてしまいました。
・展開が読めやすすぎる
前項目と繋がる部分なのですが、物語の軸やその進行がどの√もあまり変わらないかつそれらの新鮮味というのもなかったので、一つ√をプレイした後は容易に展開予想が可能となってしまうんですよね......
それを良い点と捉えるか悪い点と捉えるかは人次第ですが......一つ確実に言えることとすれば、その"読めてしまう展開"に加えてイチャイチャしているシーンが割と長めなので、好みのヒロインを一番初めに攻略することをおすすめします。まあ、これを読んでいる方の中で未プレイの方がどれだけ居るのかは知りませんが。
・春斗、お前本当にアラサーなのか......?
既プレイの方は当然ご存知でしょうが、春斗は高校生+死後10年でアラサーです。そして、本人も作中で『内面だけが成長して外面が云々』的なことを言っているんですよね。
ええと、何が言いたいかというとですね。アラサーにしては精神面が幼くないか、ということです。
特に顕著だったのがネコ√です。両親が訪れ、未練を解消することのできるチャンス。しかし死後手に入れた環境を手放したくないと面会を拒否するネコに対して、旅館の教えの通りに両親へと会うように説得する。というのは別に良いのですが、ネコの感情をまったく考慮しないような物言いはちょっとどうなの、と感じました。番頭として5年近く死者と寄り添ってきたという設定がある彼だからこそ、もう少し突き放しつつも寄り添うような言動を見たかったです。
総評
一番初めに書きましたが、本当に雰囲気作りが素晴らしい作品でした。そして、せつなく冷たいシナリオながらも、ほんのりじんわりと心が暖かくなる、そんなお話も心に沁みました。まだ未プレイの方は、是非この季節にプレイすることをおすすめします。
以上、『はるとゆき、』感想でした。