せかいかんそく。”覚えていない”と彼女は語った。けれど、それは違う。
彼女は忘れてはいなかったはずだ。香の匂いを。託された思い出を。
そうして、ずっとまっていたのだ。
だからこそ、見つけ出した。彼を。里山の共同墓地から。
だからこそ、語りかけた。彼に。お久しぶり、と。
その矛盾にこそ、きっと、彼女の見せた可能性へとつながる希望があるのだと、私は思いたい。
第一部である本作――「せかいかんそく」が完成して五年が過ぎ、もう、一年以上音沙汰はないけれど。
それでも、そんな可能性に祈りながら、ユメを見続けていようと思う。