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apepyさんのアオイトリの長文感想

ユーザー
apepy
ゲーム
アオイトリ
ブランド
Purple software
得点
87
参照数
1154

一言コメント

これはまごう事なき“逸品”である

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオを重視する僕としてはなかなか満足のいくシナリオだった。
アマツツミと意味的に類似する描写や、対比となる世界観、描写があり、楽しく進められた。
途中、廃駅や自殺した女など、最後の伏線となるかと思われたものがあったが、絡められることはなく、それが逆に自然な感じもした(全て絡めれば、あまりにも都合が良すぎたような気がする)。

また、CG、背景ともにいつも通りのハイクオリティで引き込まれ、かなりえっちであった。

さて、ここからは√ごとに見ていこう。

・メアリー
ポンコツ吸血鬼の可愛さが良く出ていて楽しむことができ、展開としても、死生観をテーマにした非常に明瞭なもので、頭に入りやすかった。
プロローグからだが、穏やかに“生”を真っ直ぐに捉えようとした、良√だ。
ベストCGは温室のキスシーン。最高でした。

・理沙
この√は他の3つに比べ、原画家、ライターどちらも異なり、明らかに異質であった。
正直に言えば、シナリオは死に瀕する様子の見せ方や掘り下げが甘く、CGも顔が好みではなく、出来がいいとは言えないだろう。
だが、この√は、いわば“箸休め”として必要だ。
他の3√は比較的シリアスであり、このくらい穏やかなものが無ければ、全体の印象がもっとニッチ向けになり(因みに僕は大歓迎だ)、大衆に受け入れられづらいリスクがあったのではないだろうか、と僕は勝手に考えている。


・小夜
今作では1番好きで、最も心を乱された√だった。
まさかそんなはずはないだろう、と電話の悪魔のように楽観的に進めてびっくり、あのエンドである、小夜のキャラデザも性格もセリフも声も大好きなので、プレイ後は脱け殻のようになってしまった。
メアリー√とともに、死生観がテーマであるが、こちらはメアリーと対比的に“死”の色が濃い。
全体的な雰囲気も穏やかというよりは冷たく静かで、だんだんと暗さと重さが増していくものだった。
灯りをひとつひとつ消していくように暗さを与える丁寧な描写に心は掴まれ、流石に最後は小夜の健気さに泣き、胸が張り裂けそうだった。


さて、この√中でのみ出てきた廃駅について軽く(こじつけのような)意味付けを考えようと思う。
2人きりになるだけなら、最後に登場した山荘でも良かったはずだ。であれば廃駅に意味を考えるのはおそらく自然な発想だろう(まして小夜はインドア派だと明言している)。

例えば「旅の出発点、到着点」というのはどうだろう。
長く都会を彷徨っていた小夜の到着点であり、律が“冬の旅人”として出発した場所でもあり、さらに旅に出かける小夜の出発点であり、やがて2人が帰り着く(頼む……)場所でもあるのだ。
そんな旅多き2人の秘密のスポットが「旅の出発点、到達点」の象徴であるのは悪くない設定のような気がする。


ベストCGはワインのやつで、個人的には今作のベストであるが、廃駅の膝枕、ラストの旅立ちなど、粒揃いであった。
シーンも能力の演出も相まってとってもえっちで良かった、強いて言えば、温泉でのシーンがあれば僕は涙を流していただろう。

近年は無条件にハッピーエンドのものが多く、この√の結末には賛否両論ありそうだが、この結末でリリースしたPurpleさんは流石である。



・あかり
マジでママだった。
最後に小夜をやってからプレイしたので、正直最後までどうなるか、ハラハラしっぱなしであった。
最後の方のCGで美しさが際立っていたのは理解しつつも、えっちな太ももに自然と目を奪われた。
“普通の人”なら誰もが持ち得る願望を濃縮させたようなヒロインであり、主人公とともに「舞台で演じている」、「正気で純粋ゆえの狂気」の印象の非常に強いものだった。

トゥルーエンドは、それでもバッドエンド同様に切ない運命を辿っても良かったような気がするが、流石に小夜とともに救いがなさすぎて辛かっただろう。
終盤のCGラッシュは圧巻で、挿入歌も相まって非常に感動的であった。

CGは、特に終盤のものがどれも素晴らしく、また陥没乳首でCGを使った時には「分かってるな~」と感じた。



という感じで、総合して、とても良いゲームだったのは間違いない。

最後に個人的な意見だが、Purpleさんの作品は、フルコンプ後に全てのムービーを見返すと非常に上手く繋がってくるのでオススメである。