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apathyさんのScarlett ~スカーレット~の長文感想

ユーザー
apathy
ゲーム
Scarlett ~スカーレット~
ブランド
ねこねこソフト
得点
80
参照数
404

一言コメント

とってもオシャレでかっこいい

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

短くはないのだろうけどそう感じさせる没入感があり、どの章も読後感がよかった。
視点切り替えを駆使した映画的な構成であり、それが良い方向に作用していて、いわゆるエロゲとは乖離した洒落たものになっている。

やっぱり主人公は九郎かな。話の比重が傾きすぎている。明人くんも一章の最後でこの物語の主人公になった感じがすごくかっこよかった。まあそれ以外では基本空気的だったけど。でも主人公とかそんなことを考えずに話を追っていくタイプの作品だと思う。
あと32歳のヒロインがなぜかツボだった。さっさともらってやれよ……

プロローグから一章までは、前述した屋上のシーンのためだけに存在している気がする。これから何かが始まる期待感でさらに物語へのめりこんでいった。
二章は必然性がわからなかった。このようにひたすら九郎視点で話を展開するよりも、もっと明人を活躍させたほうがいいと思う。
突然雰囲気が変わって心なしかテキストが読みづらかった三章は、八郎の存在がデウスエクスマキナに思えるせいで展開は読めるのだが、ラストのレオン救済には感動した。しずかと日常の関係性も表せているいいシナリオ。
最後四章は救出だけで終わっていたらつまらないと切り捨てていたかもしれない。しかしエピローグの世界が違うことを明確にしながらの両者の交流には、もう物語が終わってしまった寂寥感と、それでも確かに日常と非日常には越えられる壁が存在しているという光明のようなものを感じた。これに演出が重なっていい終わり方だったと思う。なんだか日常へ傾きしている気がするが。
非日常のほうに重きを置いた締め(日常に帰ることと逆)を軽く考えてみると、全く予想のできないとがった作品になっていた気がする。普通の人は普通の価値観しか知らないからこの締めを認めるのであって、普通じゃない人の価値観を理解することはできないから。ほら、世界が違うから、ね。

日常/非日常の二項対立がとてもうまい。プレイ後に自らを振り返って日常の良さを再発見できるのではなかろうか。
なにか高尚なテーマではなく、身近な「日常」だからこそ心を打つのだろう。