雰囲気は好きだし世界観も面白いと思う。伏線の張りかた、回収の仕方もうまいと思うし感動もした。けれど作品全体を見るとシナリオに強引な点が少々あると思う。
最も感動できたのは2章であり、まなのさちへの思いと二人の絆の固さはいいものだった。
3章は灯花が母の狂気を受け止める展開がどうにも不自然に感じた。それまで見てきた灯花という子は言葉と力の暴力に耐えられる子だっただろうか。
そしてこの章で一番腑に落ちないのは灯花の実の両親の存在だ。
ほんの数日前にあのような手紙を出した人間である、つい口を滑らせたではなく手紙を書いて尚且つ投函までしたのだ。
あの文面の内容は強く明確な悪意で書かれたものだろう。そのような人間は信ずるに値しないのではないだろうか。
4章は森田賢一の目的がずれてきている。森田賢一の目的は特別高等人になることであり
最終的には姉を義務から解放することのはずだ。しかしながらまるで過去に引きずられるかのように幼馴染の心を開き自分の立場を忘れ少女の気持ちを受け入れてしまっている。
それを見透かしたかのような法月の駄目だし。私が思うに法月ではない試験官だったら夏咲の義務を解消しただろう。
姉のあのような登場は正直困った。主人公の目的の重さがとても下がったように感じられたからだ。
極刑というのがなんとも温い。他人と会話ができなくても近くに愛する人を感じれるならば然程苦しい刑とは思えない。
そしてなし崩し的に姉を手に入れた主人公は同様大事な夏咲を救いに法月の罠のようなものに飛び込んでいくわけだが、
賢一特別高等人エンドから推測するに法月の目的は賢一の目の前で大事な存在を全て奪い心に重い傷つけてこそ
賢一を立派な特別高等人にすることができると考えていたのではないだろうか。
そう考えるなら姉を主人公の側にいさせることを認めていたのも数多い被義務者の中から賢一と関係ある者を試験対象にしていたのも納得できる。
このゲームの最大の難点はキーマンである法月の内心が語られないことだ。けれどそれはFDに期待したいと思う。