星奏ちゃんかわいそう
作品名とその内容に乖離があると思った。
テーマ(※1)として掲げていた「あたたかくて甘酸っぱい初恋物語」は、
星奏(終章)のルートでは欠けていたように感じた。
センターヒロイン(しかもグランド含む)のルートがコンセプトから外れるとはどういうことだ、と言いたい。
どうにも表現不足なところがあり、全体としては不満が大きく残る作品であった。
星奏のおっぱいと彩音のまっすぐな恋心だけは評価する。
※1 作品HP上の文章より
http://ustrack.amuse-c.jp/koikake/introduction.html
■ゆい
【花壇の、ゆいによる、花壇のための物語】
新生徒会長が、生徒会選挙の宣戦布告ととも提示した公約。
それは、部室の拡張であり、それは、ゆいが世話をしている花壇の取り壊しを意味する公約であった。
なぜ、ゆいは花を大切にして、そして花壇を大切にしているかの描写はきちんとできていた。
しかし、それらは主人公と強く結びつかないためなんともふわっとした話になってしまったように感じた。
つまり、「ゆい⇔ゆい母」と「ゆい⇔花壇」や、「ゆい⇔主人公」は強い結びつきがあっても、話題の中心として挙げられている
花壇は主人公にとって「自分の学校の花壇」「ゆいにとって大切な、ゆい母の形見ともよべる代物」でしかないため、
イマイチ「花壇を守る!」という話の流れに賛同できなかった。
(「部活のためなら壊されても仕方ないね」という諦念が最後まで頭から離れなかった)
初恋物語としては、ゆいと主人公の馴れ初め(出会い)をもう少し掘り下げて話をすすめたほうがよかったのではないだろうか。
結局主人公は忘れっぱなしでゆいに教えてもらってるし…ゆいが惚れる過程がもっと欲しかった。
■凜香
【言葉にするのが下手な先輩の相談部】
頼り下手の元生徒会長を支える不器用な優しさ。
始まる飼い主探しとパンダ探し。
凜香は、仕事を妨害するいたずらに思わず弱みをこぼしてしまう。
頼られたい、嫌われたくない、そんな欲求を持たずに接してくれる主人公に惹かれていき、そして告白…ここまで良かった。
よい結果を残せなかった生徒会選挙を悔やむ話はわかるが、ジジのお話と旧校舎のお話はほとんど印象に残らなかった。
旧校舎はぶっ壊します→じゃあどうしよう?のところで、弱いネタを持ちだしてきたという感覚を覚えた。
凜香のこれまでの空っぽな活動、凜香の中学時代の話(進路)、卒業する凜香を追いかける主人公
ここらは別キャラとの対比で持ちだされるかと思ったが、そんなことはなかった。
凜香が「あなたは私に必要」と言ってくれたり、そんなカノジョに主人公は追いつこうと努力していたりとで、
ラストは将来が伺えるようなもので良かったとは思う。(道中が評価できないため、加点はしなかったが)
■彩音
【中学時代から続く、確かな初恋】
卒業アルバムに挟んだ手紙は読まれることなく
それでも続く初恋を成就させるために奮闘する少女の物語。
当作品の一番評価できるルート。
ラブレター代筆の中で、気づかなかった(気付こうとしなかった)自分の気持ちへ向き直る。
過去(中学時代)から告白に向かうまでの流れがとても綺麗でよかった。
そして何より、彩音が、進学から主人公に会うまでの気持ちを主人公へ伝えるところがよい。
話としては1つ。
過去、委員長だった彩音がクラスをまとめようとしていたとき、主人公が合唱コンクール練習にて彩音の「ボヤキ」を聞く。
人の気持ちを考える機会を得て、主人公の起こした行動が彩音を変えた。
初恋というなら、このルートが一番輝いているように感じた。
コンセプトにふさわしい、真っ直ぐな初恋模様である。
■星奏(終章含む)
【消える初恋の魔法】
この土地に戻ったのは星の音を聞くため
手を伸ばして掴んでもはなれてしまう彼女のお話
読了後の不快感が異常であった。
その部分について、深く書いていこうと思う。
(1)星奏が離れた理由について
「グロリアスデイズのメンバーに言われたから」
「同じ高校にいるのも一時的なもので、すぐに離れなければならないから」
こういった理由で納得出来ないのは、星奏が大切にしていたであろう、グロリアスデイズとの音楽活動に関する描写が全く無いためである。
「大人の闇に飲まれた子どもたち」と何度も訴えているが、「それじゃ具体的にどう大人たちに食いつぶされたの?」というところである。
そして、その苦難に対し、どう団結して(これが星奏とグロリアスデイズに結束力をもたらしたはずだが)乗り越えようとしたのかが
わからないまま話が進んでしまった。
主人公は彼女の経歴を調べ、その闇の一片を垣間見て納得したのかもしれないが、私は納得しきれなかった。
グロリアスデイズのメンバーが後悔をこぼし、星奏に対して(強制や束縛にもとれる)期待をかけていたことを語った。
だが、彼女「たち」の苦悩がわからない以上、その発言は「こいつらが星奏を追い込んだのでは?」という疑問を強くしただけであった。
(2)結末について
結局、指輪を渡してもそばにいてくれることはなく、彼女は音楽をつくるため(グロリアスデイズメンバーを救うため)
離れていった。最後、「思い出の続きが待っている、そんな気がした」とあったが、果たしてこの後星奏は戻ってきたのだろうか。
・主人公と離れてから作ったと思われる曲は質の高いものではなかった
・自分の意思は曲げない
・グロリアスデイズメンバーも連絡がとれていない
・星奏は主人公と会いたいと思っていた(少なくとも3度めの再会時点では)
上記の点からは、どうもそのような楽観的な考えには至ることは不可能だと思われる。
主人公は星奏の背中を追いかけ、振り向かせることはできても、最後はその背も見失ってしまったということではないだろうか。
恋の物語を書けなくなった少年は、小説を書き、教師になり雑誌記者になったが、
結局想いは置き去りにされたまま、プラトニックな思い出に浸ったままではないか。
誰より不憫なのは星奏である。
主人公への愛は残したままはなれることを選んだ彼女に、一体何が残ったのであろうか。
愛を犠牲に手に入れたものが何だったのか、私には見えなかった。
その有無がどれほど読了後の感動へ影響を与えるか、筆者も知らない訳はないだろう。
率直にいうと、これを「終章」と銘打って売り出すことに疑問を覚えなかったのだろうか。
悲痛な最後を潔いエンドに仕立てようと努力していたが、私にはそれが苦痛でしかなかった。
P.S.精華とセックスさせろ