トラウマをフルボッコにするヒロインしかいなかった
はるかちゃんのお尻とまゆらちゃんのハイライトが消えた目と永遠ちゃんの添い寝姿にやられました
まゆらちゃん最高の幼馴染だったしはるかちゃんは素の性格クッソかわいいし
永遠ちゃんは手を引っ張っていてくれそうですごい惹かれるし最高でした
【はるか: 救われたかった偽りのヒーロー】
■殻とは
それは、世を生きるための手段、処世術とも言われる人の行いか
それは、人なら誰もがかぶると言われる仮面か
ここにおける殻とは、それらとは似て異なるモノであると考える
「本心と言動が一致しない」の部分は同一であるが、根本的に虚偽が覆う箇所が異なる
仮面は表情、つまり他人と接する際に他人が伺おうとする部分のみを隠すが、殻とは本質的に心全てを覆うものである
仮面は、会話の対象に合わせ付け替えることもあるが、殻においてはその表皮が他者に見える全てとなる
はるかにおける「嘘の自分」とはまさにこの殻にあたるものである
■偽りの過去
自分と同じ痛みを受けながらも、隣で微笑んでくれる誰かを彼女は欲していた
彼女の語った嘘の登場人物は、彼女に欲しかったヒーローであった
それは主人公が持ち合わせていた者で、彼女の持ち合わせていなかった者であった
それは「自分に賛同すればその人も傷つく」という確信に基づく嘘ということでもあった
そんな「親友」がいれば、また変わることができたであろうか
過去を偽る痛みというものは計り知れない
特に、自らの苦痛の原因となった過去においては
架空の勇者を持ち上げても、救われなかった人間をより惨めにするばかりだ
「ヒーローがいなかったから仕方ない」という言い訳は、以後に彼女のとった行動がそれを無為にする
「ヒーローがいなかった自分は、嘘をついて生きるしかなかった」という理由を作り出すためについた、
【最後の砦】となる嘘、と捉えるのが妥当か
■嘘をつく言い訳
自身を中心人物とすることでイジメをなくし、それを言い訳としてきた
偽りの自分を演じる理由としてはふさわしい、だがそれは彼女を縛る鎖になった
自己弁護の盾は、継続することを生業とさせた
自分のための嘘は「自分のためのヒーロー」を作り出すが、誰かのための嘘は「誰かのためのヒーロー」を作り出す
耳に一番響く悲鳴を止めるには、ヒーローをやめるのが一番であるはずなのに、
聞こえない悲鳴のためにヒーローであり続ける
これもまた、高潔な彼女が彼女を苦しめる嘘のひとつであろう
傲慢であり続ければ、楽に自分を偽ることができるというのに
■殻に語る部分
殻とは自身を覆うもの、他者から見えるのは殻の外見のみ
本当の自分がいくら悲鳴を上げても声が外に届くことはない
では殻に手を触れ、その揺れを感じ取る人間がいたらどうなるか
殻を軽く叩き、反応を伺う他者に応答をするものは誰であろうか
それは、殻の中の本心ではなく、からの外にいる嘘の自分だ
これまでに口を動かしていたのも、表情を作っていたのも外の自分だ
新たな登場人物にしかなれないなら、傷つくのが怖いなら、息をひそめるしかない
だが、彼女は声を上げた
声を聞き届けようとする者に、その叫びを聞かせた
この瞬間に相手が気づかずとも、それでもサインを残した彼女に強く感動した
壊れそうな自分を救って欲しい、そう言いたい相手を見つけたということは彼女の想う以上に救いが生まれただろう
殻に押しつぶされる展開など、BAD ENDに違いないし(私も含め)誰も望んではいないだろうが
【真響: 真響のためだけのヒーロー】
■幼少期の出来事
幼少期、ストラップ探しに現れた終は、彼女にとってどれだけの感情を齎したのか
それはちっぽけでも、彼女が彼を見つめるようになるきっかけには十分であっただろうと思う
言葉にせずともそっと問題を解決してくれる、それは疑問と共に大きな安心感を与える
■ついた嘘
隠したい気持ちは伝わらずに済む、そんな嘘は二人を苦しめたが、
その嘘は二人の間に架かった橋の揺れをしずめたのではないだろうか
愛の感情には目を背けつづけるのは彼女にとっての「本当」であり、
それでも彼を支え続けようとした彼女の心もまた偽りは無かった
終が「真響のため」とついた嘘は、双方にとって心地よい場所を作り上げたが、
双方が心に重荷を背負うことになったことも事実
■きっかけ
背中で支え合っていた二人が向き合うことになったきっかけは、その嘘の暴露
だが、本当に恐怖していたのは終
罪として、受けた呪いとして能力に向き合えなかったのも、真響からの愛情に向き合えなかったのも終だ
そんな彼を支え続けた真響は、永遠に未練を残した終に同調する真響は酷く健気だ、それは少々狂気を感じるほどに
だがその途方もない時間で築き上げた信頼が、終のヒーローになる決心を形作った
【永遠: 幸せを綴るプロローグ】
■変わる終、変わらない永遠(真響√)
終は真響に手を引かれ、徐々に前向きになりつつあった
自分の能力は呪いではない、誰かを救うために使うことのできるものだと
その姿をみた永遠はどう思ったか
心の壁を再び作り、変わったフリをしている自分と比較して、
本当の意味で自分を、能力を認め始めた終に、自分を2度傷つけた男に強く怒りを覚えただろう
誰かを傷つけるばかりだと(本人も彼女も)考えていた彼の力に、肯定してくれる人物に強く感動しただろう
その怒りと感動が、あまり感情を表に出す人間ではない彼女に「なぜ自分は彼の隣にいないのか」
と激しい嫉妬(後悔)を覚えさせ、彼にぶつけることとなった
では、その姿がはるかの物語にはなかったのはなぜか
怒りはどこに消えただろうか
それは、後悔の海に沈んで見えなかっただけだろうか
はるかと終が似ていることを知っていたように、はるかが深い闇を抱えていたことを知っていたのではないだろうか
終を突き放した時、はるかが偽りの彼女として立候補することを期待したのではなかろうか
心に隔たりのある彼女に、そこまで期待するのは多少買いかぶりかもしれないが、
彼女の感情に振り回されていた彼の姿を(多少受動的ではあるが)見ていたのは事実であろう
「何に振り回されていたのか」「疲労を重ねているのになぜ彼は拒絶しないのか」そういった疑念を辿った結果と、私は捉える
感動はどこに隠れてしまったのだろうか
その感動は、誰かが誰かを救うことから生まれた
永遠が告白し、その場を去った後に生まれた
救ったのは終であり、救われたのははるか、真響√とはヒロインと主人公の立場が逆である、ともいえる
(能力を肯定するきっかけを与えたのははるかであるが)
はるかとの物語を書き、はるかの帰りを待つこと、それは彼女のための行為であり、
それは終が描いた「はるかのためのヒーロー」であったことは言うまでもない
能力を肯定し、誰かを救う存在になった終は、永遠にとってはひどく遠い存在になってしまったのだろう
永遠の告白は諦念を含ませたモノではなかったものの、どこか通過儀礼のような淡白さを残した
後を濁さず発つ姿が、そのまま理由になると言えよう
潔い言葉で彼女を送る終が彼女にとってどれだけ大きく(自分と違う存在に)見えたのか、語る術もない
■後悔に静かに沈む永遠(はるか√)
偽りを暴露したはるかに、終は怒った
その姿を見て永遠は笑った、終が素直に怒るようになったことを
そして後悔が滲み出る、「あの時自分もそうしていれば」と
友達として再スタートしようと言い出したのも、彼の「愚痴」を聞いたのも、
そして最後に告白をしたのも、全ては彼のためであり、彼女が自身の心を整理するためであったのだろう
彼のためだけの行動であると断言すれば、小説を書いた主人公へ会いに行く理由が弱く、
自分のためだけ、独善的な行動であると断言すれば、怒る終に助言を語ることもなかったのではないだろうか
終と永遠、二人が顔を合わせるだけで互いにとっての救いが生まれていたのではないかと思う
…遠慮のない彼女の言葉には、傷つかずにはいられないだろうが(それは不器用か?親愛:真愛)
■自らへついた嘘
人に嘘を語るのは簡単だが、自分へ嘘を説き続けるのは難しい
矛盾に目をそむけることそれ自体は難しくない
目を瞑るには恐怖が伴うが、他に目を向けていれば気が休まる
だが自身から目を背けるということは、それだけ他に心を向ける必要があるということだ
・虚勢
他人への態度を変えたのは、興味のない相手への意識が変わったということではなく
「自分は変わったのだ」と自らに言い聞かせるための行動だ
これは、彼が好きだと言った長い髪を切るところにも表れている
その虚勢は、終の小説によって暴かれることになったが、あの時点で暴かれたのは
足踏みをしていた永遠であり、「昔から変わっていない」ということだった
だがそれも、自身が興味をそそられるよう形づくられた、本心の隠れ蓑に過ぎなかった
・永遠の心
白い本は、永遠の心を映したモノだと、終は言った。
自分は一人だと、孤独に生きつづけるのだと考え、心を空白にしていた
上記の虚勢にある「今も昔も変わることがない自分」にも関わる悲観的な考えである
より確かなものを求め、形式から入った二人の結婚の中で、彼女の心に色が灯った
それは、彼の作り出す世界への没入、まさにそれは永遠の求めた「救い」であろう
では、なぜ本は色を再び落としてしまったのか
蒼太が陸上部員を殴ってしまったシーン
蒼太は「何も変わっていないのに、どう謝ればいいんだ」と呟いた
助けを求める声を聞いた終は、踏み出せるよう、強く蒼太の背中を押したが、
彼を見届けた後、能力を使ったことを永遠につぶやいた
それに対する永遠の回答はこうであった
「きっと能力を知っても怒らない、きっと必要なことだった」と
ここでもまた、能力によって救われる人がいるということを表すとともに、
能力がないと燻り続けてしまう存在を示唆している
終の心にも届かない存在は、閉ざされた世界で燻り続ける心は
きっかけを手にする機会すら得られないのだろうか
・踏み出せない足を見下ろす目
終が隣にいても、永遠は孤独であった
心の壁とは、自分と誰か、ではなく、内側の自分と万事とを取り分ける冷淡な自分自身である
作中で一番脆い人物である永遠は、自分自身の弱さに耐えることができなかった
傷つき続けるはるかは、感情へ触れた終に助けを求め、そして殻を破ることができたが
傷つき続ける永遠は、壁に触れた終に心の安らぎを求め、そして自らの弱さを痛感した
ずっと隣にいたいと願うのに、終の元から離れる矛盾
救われたいはずなのに、声を出せない矛盾
傷つきたくないという願望が壁を作り、ひたすら彼女を臆病にさせていた
これほどまでに変わろうと、手を差し伸べてくれる者が隣りにいても、
自分は変わることができないのかと、自分自身に絶望していた
心が消えてしまうことをあたかも規定されたことのように話すのは、
もがくことすらできない自分に対する諦めの意味が込められていた
だからこそ、終が去る背中を追い、心の内側まで追いかけたことには大きな意味があった
壁に語りかけても、助けを呼ぶ声は声にならず
壁を叩いても、諦めた彼女は内側から叩き返すことを忘れている
壁を見つめても、二人の距離が遠ざかっていくことの客観視しかできない
壁に耳を当てても、震える壁の悲しみしか聞こえない
壁の中にいる彼女へきっかけを与えるのは、与えられるのは、他ならぬ終だったのだ
そのきっかけで、傷つくことを恐れた純粋な感情をむき出しにし、無為の壁を壊した
陽から光を浴びることで輝く星の物語から、陽の光が季節を語る物語へと変わった
悲しみを仄めかすプロローグから、幸福を謳歌するプロローグへ
…終はどの世界においても、ただ一人、ヒロインのためのヒーローであった