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amjaさんの蒼の彼方のフォーリズムの長文感想

ユーザー
amja
ゲーム
蒼の彼方のフォーリズム
ブランド
sprite
得点
82
参照数
825

一言コメント

恐さも楽しさに

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

総合的な何か
それぞれのルートでも共通していたのは「フライングサーカス(以下FC)を楽しむ」ということでした。
乾&エリーナがやっていた、相手を封殺し空の中で敵を閉じ込めるような戦い方と対比させる形でしょうか。
試合の緊張感、主人公の過去描写、そして各務先生をはじめとするキャラがとてもよく表現されていたと感じました。
以下で点数とか各ルートの感想を述べます。(上から順に各ルートをプレイいたしました)
文章量に大きく差がありますがあしからず。
私は、みさきと明日香のルートがとても感動しました。そりゃもう泣くくらいに

みさき 80点
覆面ちゃん最高に可愛かったですね。

このルートは対比での展開がとても印象的でしたね
過去における、主人公とみさき(コーチ:各務先生)
現在における、みさきと明日香(コーチ:主人公)
 同様の挫折から、異なる展開を導き出す流れが、私にとって共感と納得ができるものでした
明日香の才能に恐怖し、逃げようとするみさきに自分が重なり、わけも分からず動揺する主人公でしたが、
みさきが過去の話をきいて同じ感情に埋もれていることに気づき、次々言葉をかけるシーンも良いですね
みさきの心のモヤを指摘し、それは表現できないものだと断言しながら
過去の自分と同じことを繰り返さないよう懸命に説得している
それはみさきではなく、主人公の中にあった後悔を清算するための独り善がりな理由でも、
みさきは手を伸ばしてくれた。そして、互いに助けを求めて、手を結ぶ
お互いボロボロな中、感じてるものはいっしょなんだってわかるし、過去敗れたものに再び立ち向かおうとしている
これだけで泣けますわ。
 そうして練習を続けて、主人公が苦しんできたプレッシャーにぶち当たる
敗北への恐怖は、みさきだけでなく、終盤まで主人公を苦しめていた
他者へ抱く嫉妬も乗り越え、勝ちたい気持ちを露わにすることで、みさきはそれを「楽しい」に変えたのだと思います

恐くて楽しい。

それなら楽しんだほうがいい。

みさきから、このメッセージを受け取った時の主人公にもまた涙する私
試合後、みさきは黒い気持ちを抱えたままの主人公に対し、それを受け入れることも提案するのです
そして、主人公がFCを再び始める…
希望にあふれたミライを妄想できるのはとても幸せですね

嫉妬や「あいつも失敗すればいいのに」といった思いは誰しも抱いたことがあると思います
たくさん時間をかけて習得したのに、あいつはいとも簡単に…と拳を震わせた人もたくさん居たと思います
それが原因で唐突に熱が冷め、やめてしまったものがある人もたくさん居ると思います。
私も、後悔にうめつくされたものを抱えており、その感情を正確に撃ちぬかれたような気分でした
過去はやり直すことなどできないので、この後悔は消せないとは思いますが、
これから変わるための指針は、このお話を通して受け取ることができたように思えます




莉佳 65点
さっちゃんと佐藤院さんがかわいい。

 みさきルートやっていた反動からか、目標が「高藤を含めて4位」とかなめてんのかと思ってしまいました
今まで反則繰り返してばっかの子をほとんど処罰なしで許してしまうとか、
他校の子をひたすらコーチとか、少し違和感がありましたな。もう転校してこいy
過去の主人公と莉佳を比較した物語ですね
主人公が、各務さんからかけられた優しい言葉に素直に応えることができなかったことについて
伺えたことはよかったですが、話の大筋としてはう~ん…といった感じです
むしろ、シーンの良い所をもっていった佐藤院さんが気になってしまいました


真白 72点
ましろちゃんかわいい。

夏の大会結果から追い込まれていた主人公に、
「次は勝たせてくれ」と言ってくれたところがましろちゃんポイント高いですね。
みさきを呼び戻す同志として手を組んだ時点でもう気になって仕方なかったのですよ
にゃあにゃあ真白ちゃんとか、縦読みメールとか、もうね、もうね
他ルートと比べると、キャラ萌えに傾倒している部分はあると思いました
才能際立つ2人に囲まれても、主人公への期待をこめて必死に努力を続ける姿には涙出ました
それだけでなく、みさきとの絡みでもよく魅力が表現されているように感じましたね
勘違いから始まった友情(?)でも、みさきは真白のことを気に入って、しかも理解しようとしていたし、よく人を見ているんですね
真白が負けてしまうことに恐怖しながらも、しっかりみさきと真白を導いた主人公マジイケメン


明日香 87点
明日香ちゃんふぉおおおおおおおおおおおお
乾ちゃんふぉおおおおおおおおおおおお

楽しくあれ。
まさにメインヒロインらしい、グランドルートのような感動に包まれました
真藤から各務先生までそろってればそう感じるのも当然かな
常に前向きに、FCを続けようとしている明日香
過去に、明日香を励ましてくれた「女の子」がいたからこそ、今の明日香がいたわけですね
しかも、その「女の子」の正体がわかるのがED後っぽいのがなんとも…泣かせてくれますね
言葉に出来ないもどかしさというのはこのことでしょうか、文章化できないことがたくさんあって申し訳ない(誰に)
しかも、明日香が乾やエリーナを改心させるのもまた、総〆として素晴らしいですよね
楽しさを教えて、しかも友達になっちゃう、乾の笑顔も見せてくれる
しかも世界のFCを変える荒業を使って勝利するなんて
話の密度としてはおそらくみさきルートのほうが大きいでしょう
しかし、明日香の「楽しむこと」がもたらしてくれたそれは、私を涙と喜びでグチャグチャにするには十分すぎました


four rhytm across the blue
みなで何かを成し遂げる、そんなキャッチコピーですが、それがまさにピッタリ来るルートでした



グランド ---
みさきルートもそうでしたが、こういう終わらせ方は卑怯ですよ…もう涙が

再びFCを始めることにした主人公と、再び海外へ飛び立った各務さん
海外から1日帰国した各務さんは、主人公と同様に悩み続けていた
FCのあり方にも関わる「エンジェリック・ヘイロー」の一件で、各務さんは非難と注目を浴びた
プレッシャーに飲まれていた主人公は当時そのことを知らなかったが、現選手である各務さんに負担になるような
相談をしてはいけないと思い、心の負担を隠し続け、そしてあの挫折を味わう
しかし、各務さんもまた、同じ時期に「FCを楽しむこと」について悩んでいたのだ
勝つことへのプレッシャーを肌で感じ、楽しみ方を忘れたことに悩みながらも、
空が好きだという少年にまた励まされていたのだ
そして、各務さんが出した答えは、とても簡単であった。
「空は楽しい」
答えを得た各務さんは、あの学院で主人公を待っていたのではないだろうか
そうして主人公に再び翼を与え、その上で空へ舞い戻ったのではないか
そして各務さんが過去に残してきた諸々と決別するため、戻ってきたのではないか
主人公が空を再び見るまでにあった時間はそう短いものではないが、それでも二人は羽ばたこうとしている

「空を見ろ」

「空を見続けろ」

「答えはそこにある」

色々な感情、障害を乗り越えて、これからこの空へ、蒼の彼方へ飛び立つのだ…