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amjaさんのMagical Charming!の長文感想

ユーザー
amja
ゲーム
Magical Charming!
ブランド
Lump of Sugar
得点
79
参照数
764

一言コメント

段取リズムとギャグと告白と、ちょっとしたシリアス

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 普通に生活していたら、いつのまにか別の世界へ連れて行かれていた。
そして珍しい男の魔法使いとして、女ばかりの学校へ通うことになる。
よくきくハーレムものにもありがちな設定で、あまり期待をしていなかったが、とても満足することができた。
OPでもある、ステップ、物事の順序を重んじる主人公の律。
基本的には、その律が魔力の根源である「彼女がほしい」という願望をかなえるため奮闘するストーリーである。
律の「段取りの考え方」がとてもわかりやすく、かつキャラの魅力を存分に引き出していたと思う。
告白するまでが主なシナリオであり、そのアフターストーリーは少々蛇足と感じる部分もあったが、
後日談としては良いまとまりであったと思える。

姫百合
 みなの理想として期待に答えられるよう、常に前向きな姿勢で自分に向き合っている少女。
みんなのイメージに合わせるように、新しいことに挑戦したり、腕を磨き皆に示せるように努力し、
そのことにも喜びを感じている姿はまさに理想的な人間だと思える。
過去を知り、いろんな秘密を共有した二人は徐々に近づく。
期待されている「かっこいい」自分も嫌いではないが、「かわいい」1人の女の子でもありたい。
そんな感情が、中盤で随所に現れ、律もそれに少しずつ気づいていく。
その過程がとても甘酸っぱく表現されていて、まさに青春というものを感じさせてくれた。
また、「相手に喜ばれたい、振り向いてほしい」と姫百合と律がよく口にしており、
むず痒いほど真っ直ぐな想いがよく伝わってきた。

オリエッタ
 1国の姫であり、魔法の制御に長けた少女。
姫である理由など、オリエッタの生い立ちの詳細は、個別ルートでは語られなかった。
オリエッタはその肩書のため、律の魔力を絶ち、もとの世界へ返す役割を与えられる。
律は魔力の根源である願望をかなえるため、彼女作りに励み、
オリエッタは律が魔法を使える理由を探る。
友達発恋人行のこのシナリオでは、自分の恋心に気付くオリエッタがまさに恋に悩む乙女であり、
読んでいて応援したくなるようなキャラであった。
また、時折挟まれるギャグシーンが私の肌にあうのか、とても軽快に読み進めることができた。
感情移入しすぎたのか、告白直前の心苦しい思いに押しつぶされそうになってしまった。

諷歌
 幼いころに魔法が使えるようになり、それ以来会うことができなかった妹。
姫百合を目標とし、兄に再び会う日には大人になった姿を見せられるよう、自分を磨く日々を送っていた。
学園から出られず、会えなくなった兄に特別な感情をいだく。
告白までは、いわゆる「近親における恋愛のタブー」がやわらかく表現されており、
素直になった二人が想いをぶつけあう姿はとても微笑ましかった。
主人公が少しずつ諷歌をしっていく過程に違和感なく感情移入することができた。
最初から好感度MAXだったため、道中退屈になるかと思っていたが、積極的な律に引っ張られる形で最後まで
詰まることなく進めることができた。
やたらおっぱいの話が出てきたが、ある意味関係が変わった1番の理由だから?

秋音
 律についてくるため、男と偽り入学してきた幼馴染の少女。
過去、律に対しても男と偽って遊んでいたが、律に離れてほしくない想いで真実を告げる。
別キャラのルートでは、律の恋愛相談に乗ってくれるパートナーのような存在であったが、
そんな秋音のルートでは、律の感じている彼女の「女の子らしさ」が焦点になった。
女であることがバレるのではないか、と相談する秋音に対し、
律が「お前はこんなにも女の子じゃないか!」と訴えるシーンは
まさに秋音への感情に気づくきっかけであり、良い演出だと思った。
男っぽい服装していた子が、髪を下ろして制服を着ればそりゃ驚くし、ドキッとする。
律と後でやるかもしれないから、とキャッチボールの練習を続けていたり、
「告白が失敗してどうしようもなくなったら、僕がもらってあげる」とか言ってみせたり。
なんで気付かなかったんだと思うし、それでも律を支え続けていた秋音はよく出来た子だと思う。
「友達を続けながら、恋人になってほしい」という言葉は、とても良い告白だったと思う。
告白が成功するとわかっているから、できるものだとは思うが、
友達同士で過ごしてきた、現在までの関係を壊したくない、という気持ちがよく伝わってきた。

トゥルーEND
 個別ルートでもあやふやにされていた部分が明らかとなり、
物語の核心となるイスタリカの真実が暴かれる。
個別ルートがまとまりよく終了していたため、途中にあった「とっかかり」をすっかり忘れてしまっていた。
それらが次々と解消されていくところは驚かされ、またすんなり新登場したキャラにも馴染むことができた。
こういうタイプの物語はいわゆる「正史」と言われるようなルートが有り、その時に選ばれたキャラ以外が
不憫になるため、あまり好きになれないところがあるため、このルートに関する感想は以上とする。


総評
 キャラは魅力的に描かれているところがとても特徴的であった。
段取りズムに則った恋愛ステップ、告白シーンはとても好印象だった。
挟まれるギャグもよくキャラの特徴を引き立たせているものだった。
また、クロノカードのシステムは没入感を得られ、様々な場面を創りだす良いスパイスであったと思う。
トゥルーの流れからも、FDは期待できないが、終わってしまうことに寂寞感も覚えてしまうほどに
のめり込むことができた。
これからもこのような作品に触れていきたい、そう思う一作であった。