幸せな夏の夢
こうやって文字に起こして、整理してみると新たな発見を生む。やはり書き残しておくことは重要だと思いました。
■考察の余地について
あの終わらない夏の島は一体なんなのか、夢から目覚めた彼女たちはどう生きたのか(特に羊)。
断片からなんとなく読み解くことができますし、とにかく作品の事前・事後についてたくさんの解釈ができると思います。
某人がこの作品に高い評価をしている理由がよくわかりました。
■夢と現実
渚と触れ合ったヒロイン達はそれぞれ事情が異なり、今を生きる人もいればそうでない人もいる。
でも共通して言えるのは、その結末が夢を見ていた人たちを救ったということ。
「夢ではHappyEndだけどさぁ…」と思ってしまうところは多々ありますが、それでも最終的にはみんな幸せになることができたと思います。
そこを肯定しないと、歩の見せてくれた世界を否定してしまうことになってしまうような気がするから。
■各ヒロインについて
○老樹
生前の渚が言っていた「好きなタイプの女の子」の姿となり、渚の前に現れた月島。
「記憶が本物であるという実感がない」という発言からも、女の子として生きてきた記憶を持った真樹として渚と結ばれたのでしょう。
・冒頭に妖精王の姿で同じテントで夜を明かすシーン、これは、夢の中で「妖精王」となっていた音々との対比
学校で肝試しした時など、多少なりとも女の子として意識されていた彼女と、
同性の友人として話していた真樹のその立ち位置の違いがなんとなく意識されているような気がしました。
「なんで男同士で」と言われる時、真樹はどう思っていたんだろうと考えると、少し涙腺が緩んでしまいます。
・オッドアイ
色違いの片方の目に、遠い親しい誰かの影を見た。ループする夢の中で渚はこう語っていました。
そして、夢のループから抜け出した時、渚はその瞳に「真樹になれなかった誰か」と「真樹がなりたかった誰か」を見た。
これは、「渚と恋をして、現実を失いかけていた友人の真樹」と「渚と恋をして、夢の真実を知ってしまった恋人の真樹」でしょう。
その遠い目をしていた彼女から、近くをはっきりと捉える懐かしい彼女に戻ったその過程に、
ずっとここに一緒にいたいという思いに、渚を送り届けるという決意が勝る、真樹の心情が詰まっているのですね。
・はじまりのばしょ
夢の渚が始まった場所で老樹と出会い、物語の結末もとい歩へと至るその流れは
まるで歩へバトンタッチをするような潔さもありながら、永遠を願ってしまう欲深さも交じる、真樹の率直なる思いを感じました。
恋人としての終わりを告げる、その瞬間はクリア後に見ると、また違った色を放っているのではないでしょうか。
○つかさ
「大樹は誰かの願いを果たす存在」「ここ(夢)は自分の感情に折り合いをつけるモノ」のような、そんな
過去と後悔、望みを叶える大樹、これらを強く意識させるような物語と感じました。
前向きになってくれるつかさ、そしてEDのお話に心が温かくなりました。
このルートを通すことで、私の中でこの作品の指針のようなものがはっきりしました。
これは、ヒロインが幸せになれるお話だな、と。
こんな風に考えたのは、新島さんの別作品をプレイしたあとで、無意識に恐怖していたところがあったためかもしれません。
○はるか
とことんはるかに感情移入しました。
ただアリア(有田)の心のつかえをとるだけの話にならず、夢を叶えようとするはるかに眩さを感じてしまいました。
アリアの「人殺し」という発言には相当くるものがありましたが(正直最後まで引き摺った)
○羊
クリスマス・イブの話がでると弱々しい反応になったり、つかさルートで、「願いなんてそう上手くいくわけない」とつぶやいている彼女を見て、凄まじく嫌な予感がしましたね。
「ああ、この子のENDは不幸なんじゃないか」と。夢幻に思い出を残して、終わってしまうのではないかと。
でも、そこにとどまらず、閉じかけた羊の心を開くシーンはただただ涙を流すのみでした(スクショを見直しているだけで泣いた)。
私は基本的にヒロインへ感情移入するタイプなので、主人公がヒロインへ、強く訴えかけるシーンにはとことん弱いんです。
このルートクリア直後は強い幸福感に満たされていたのですが、ナツユメをクリアしたあとこのルートを振り返り、強い不安に襲われました。
夢から覚めたあと、羊は幸せになれるのだろうかと。
でも、エピローグで羊は言いました。
夢から覚めて、横に寝ている先輩を見つけたと。
結末を知っていると、そこに本当に渚はいるわけでない(そばに渚が寄り添っていることを感じている)、と読むことができます。
ですが、直接的な解釈をすれば、渚生存ルートとも受け取れます。私はこれを推したい。
夢を見ていた猫が、目を覚ましたとしても、幸せであり続けられますように。
○歩
歩を幸せにするための文句なしのHappy End 死別ENDの中ではトップクラスに主人公が輝いていました。
「俺は彼女の幸せな夢になりたい。」
考察の余地が大いにあることは重々承知ですが、言語化できないので書くのはやめにします。