色眼鏡かけてるんじゃないですか?
無印D.C.というか朝倉音夢というべきか、ともかく前作の存在は、その道のオリジネーターなりマイルストーンなりに位置づけられていると言ってしまっても言い過ぎではないわけであり、そんな偉大な(異論はあるにしろ)前作を「超える」作品が、かつての原画家と脚本家の抜けた現在のサーカスに作れるのかと問われれば、それは結果など見るまでもなく「NO」と言わざるを得ない。これは決して無根拠な妄言などではなく、「D.C.W.S.」および「D.C.S.V.」というトホホな出来のFDの発売、または事前情報段階で明らかに判明している前作のぱkもとい設定引継ぎ部分の多さ、という実績あっての推測であり、D.C.2の発売前にあっては、“どんな地雷を投下してくれるのか”と手薬煉ひいた多くの人々がワクテカしながら待っていたと思われる。
ところが、いざ発売されてみると少し様子が違った。まず、そもそものアンチ以外で「駄作」と評する意見をあまり見なかった。前作のパクリ云々という指摘は予想通りだったが、それにしても「地雷」という文字は見かけなかった。というより、全体を見てみれば、むしろ中の上。まずまず良作と呼べるくらいの評価が大勢を占めていた。これは正直言って予想外。売上も悪くなかった。
ところで、自分がこのゲームをプレイしたのは最近になってからのことで、それには「中の上程度の評価しかされていないゲームをあせってする必要がどこにある?」という至極もっともな建前が付いていたからで、本音を言えば「朝倉姉妹は萌えるけど他は微妙すぎ」という、朝倉音夢で萌えに目覚めた人間としては納得の理由も添えられていたからだった。
前口上はこれくらいにして本題に入ろうと思う。
いや、面白いよ。これ。
身も蓋もない。
こういう言い方をしたのは、まず「面白かった」という事実を大前提にして話を進めていきたいからである。べつに「すごく面白かった」でも「超面白かった」でもいいんだが。
面白かったのは良いとして、じゃあ前作と比べてどうだったのと行きたくなるのが人のサガで、いくつかの観点から見ていくことにする。
まずシステム。前作と同じ。以上…… というか比べるまでもなかったが。個人的にはサーカス特有の全シーン回想ありのシステムは好きだ。他のメーカーもやってくれたらいいのに。
音楽。これは素晴らしい。前作も素晴らしかったけど、今回もそれに劣らず……じゃ比較になっていないが。BGMは前作からの使いまわしアリ。美春のテーマ他数曲か。「また会えるよね?」があったのは普通に嬉しい。良い曲なので。ボーカル曲は全8曲ということでD.C.P.C.と同じ曲数。ただし、質は2のほうが上。全曲シングルカット可能というか、他のメーカーにも分けてあげたいくらいの贅沢な使いっぷり。由夢エンディングで流れる「IF~I WISH~」が白眉。
演出。これはもう言うまでもなく2が上。後姿の立ち絵とか意外と役に立っている。
グラフィック。七尾奈留との比較。これは避けて通れない。
立ち絵はおおむね良かったと思う。特に音姉。なぜかこの人だけ非常にバリエーションが豊富な気がしたのだが気のせいだろうか。手の仕草とかがやたら萌えるんですが。あ、E.T(杏)はいただけない。一方、一枚絵はというと、やや出来にばらつきあり…… 特に音姉。またかよ。結構不安定。とはいえ、一般的なレベルでは十分合格点かと。
次、掛け合い。キャラ同士の。
これは圧倒的に2が勝っている。この手のゲームに良くある寒いとかイタいとか滑ってるというシーンはほぼ皆無。テキスト書いた方、分かってらっしゃる。しかしこれは豊富なにぎやかし要因を配置した設定の勝利とも言えるだろう。
シナリオ。
これが一番難しい。前作あっての続編、というのが如実に現れる部分なわけで、当然前作との被りも多くなる。物語の根幹にかかる部分は致し方ないとしても、そうでない部分、たとえば「ことりのミスコン告白」とか「音夢と同衾してる夢」とかあのへんを一字一句再現されると「ぉぃぉぃ」と突っ込みたくなる。突っ込ませるのが目的だとしても全力で釣られるともさ。まぁ、そんな細かいことは別として、シナリオとしては、今作のほうが良い出来だったのではないかと。「~に似ている」という意見を結構見たが、既に方々で使われている手法である以上、似ていることは重要ではなく、「見せ方」が重要なのだと思う。要は最後に感動という名のカタルシスでもってきちんと締めてくれれば、それで良いのだ。
奇しくも劇中で音姉がこんなことを言っていた。人形劇の台本について語っているところ。
「ご都合主義でもなんでも、最後はハッピーエンドじゃなきゃ」
うろ覚えだが、まさしく的を射ているなと。
これはさくらの願いでもあり、純一の願いでもあり、ひいてはD.C.シリーズすべてに通ずるテーマになる―――すべてのシナリオを通して、そう宣言しているのがこのD.C.2というわけなのだ。何を言っているのか自分でも分からなくなってきた。
最後、萌え。
というか、これぞ萌えゲー中の萌えゲー。多くは語りません。語れません。萌え尽きてください。
あと、音姉かわいいよ音姉。
続編の作り方に正解はない。しかしながら、このD.C.2は不正解ルートを直進しながら力技で正解へと持っていった稀有な作品だ。「前作」という色眼鏡を取り払ってみてはいかがだろうか。