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amaginoboruさんのMi・da・raの長文感想

ユーザー
amaginoboru
ゲーム
Mi・da・ra
ブランド
Mink
得点
60
参照数
347

一言コメント

独特すぎるシステムの使いづらさが難。エロさはそこそこですが良作レベルではなく、これなら快適な他作を遊んだ方が、となってしまうでしょう。ですがダブルウィンドウシステムは、心理描写を重視される方なら一見の価値ありです。TS要素のパートも、その恩恵を存分に受けた描写がなされています。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

偶然手に入れた謎のビデオは。再生される性的な内容を実体験できるものだった。
ビデオの存在を義妹の優美に知られてからは、彼女もビデオの登場人物となり・・・
という展開。

インモラル系の話で、EDは優美にしかありません。また主人公には既に彼女がいて、
優美も中盤で親友キャラと交際をはじめるため、終盤は割とドロドロ展開です。
特に陵辱パートは顕著。

エロス・タナトスというパラメータがあり、ビデオ再生中の選択肢で性欲に忠実だと
エロスupタナトスdown、現実的な選択をするとその逆です。
エロス過多で陵辱パートに、タナトスが多ければ優美と結ばれるルートになります。
なお主人公以外のビデオ登場人物は、現実では夢を見ていると認識しているため
やりたい放題です。

以上、簡単な本作の説明です。



プレイ後の感想ですが、システム面が斬新すぎて非常に使いづらいです。
インターフェースがVHSのボタン風になっているのですが、イジェクトボタンで
「タイトルに戻る」など、かなりわかりづらい。しかも警告なしで戻るため、
クリックミスで今までの進行がおじゃんになることも。

他にRecボタンでセーブ、再生+早送りでスキップと、こちらもわかりづらいです。
さらにスキップモードはは画面転換でボタンが消えるため、止めたいところで
止められない不親切仕様。既読スキップ?そんな便利なものはありません。

ビデオを見るタイミングやフラグ状況で展開が変わるので、攻略チャートを
見ない限りはS&Lで総当たりなのですが、セーブスロットはわずか10個。
20世紀のゲームだけあって、2週目以降のプレイに非常に厳しい作品です。
回想モードもないので、お目当てのシーンは10個のスロットを使って調整する
ことになります。


ゲーム内における独自システムも扱いづらいものが多めです。
マウス操作でおっぱい揉んだり服を剥いだりできるのですが、周回プレイではこれが
かなり面倒です。楽しいのは最初だけなんですよね。進行上同じシーンを何度も
見せられるので、面倒臭さもひとしおです。

簡易に早送り・巻き戻しのできるダイヤルシステムも、円を描いてマウス操作する
必要があるため、やはり使いづらいです。しかも1週以上前に戻せないので、定期的に
ダイヤルを止め、少しずつ戻す必要があります。シークバーならこんな不便も
なかったのですが。



とまぁ独自システムが仇となっている作品の典型なのですが、唯一ダブルウィンドウ
システム(以下2窓)だけは秀逸です。
ビデオの中ではメッセージログが2分割され上段は優美視点で、下段は主人公視点で
モノローグが流れ、1クリックごとに同時進行するようになっています。

本作はこのシステムのおかげで、心理描写の表現が非常に深くなっています。
基本ビデオ再生時は2人とも体が動かせず、登場人物の動くとおりにしか動けません。
そんな中、優美がどんな思いで性的な行為を強いられているのか、主人公が自らの
酷い仕打ちに対し、どんな思いで見ているのか、同時に実況されます。

言葉で表すのが非常に難しい良さなのですが、これが実にエロく、そして面白い。
攻められる側と攻める側。性的行為を嫌う優美と、義妹や恋人に酷い仕打ちをして
無意識に興奮している主人公。二つの心理描写を上下に、時に交互に現わし、時に同時に
表すことで、心理の描写をより深いものにしているのです。

特に印象深いのが大正のビデオですね。主人公の恋人・夏織への虐待を
最初は嫌がる優美ですが、主人公を奪う彼女への敵愾心が徐々に増幅し、気づけば
作中人物の心理とシンクロして虐待を楽しむように。
そして堕ちきった時、すでにS属性に目覚めていた主人公の心理と完全一致し、

「もう、逃げることはできないのだから・・・」

と上下同時に表示された時にはゾクッときました。上手いなぁ、と。

この2窓システムは画期的だったと思います。おそらくは過去にも同様のシステムが
あったでしょうし、また本作以降にもあったと思われます。なのに定着していないのは、
やはり手間に対する結果が少ないからなのでしょうか。私としては是非復活させてほしい
システムの1つですね。そのぐらい、本作の描写には見所がありました。


最後にエロについてですが、SMや陵辱描写は温めなものの、総じてエロい出来かなと。
作中人物の動きに戸惑う描写多いため、どちらかというと行動を制御して羞恥を煽る
のが好きな人向きかも。潔癖な優美がエロ行為をしたりされたりするのは、なかなかに
倒錯的な良さがありました。


以上、2窓システムは非常に独創的ですし、エロシーンも上手く作られていますが、
他のシステム要素があまりにも扱いづらく、お世辞にもオススメできる作品とは
いえません。ゆえに点数は低め。システムの不便に我慢できる人であれば、2窓の
特殊性を体験してみてください。他のエロゲとは違うものが見えてくると思われます。




TS要素について。
対象は「現代」のビデオ。優美と主人公の体が入れ替わるという王道モノ。
しかし件の2窓システムが、背徳感と不安をガンガンに煽ってくれます。
初めてビデオを見た時点では、異性の体になっているのがわかるだけで、誰の体
なのかは二人ともわかっていません。
しかし2回目、大きな姿見を見つけて正体を確信するのですが、その際のセリフが

「お兄ちゃんの体になってる!?」
「優実の体になっている!?」

さっそく2窓が大活躍です。お約束シーンを上手いこと見せてくれます。
その後お互いオナニーして終了するのですが、問題は3回目以降です。
主人公は相変わらず女体探索するだけですが、優美の方は部屋を出て、他に人が
いないか探し始めます。

ここの2窓表現は、プレイヤーにとってはドッキドキものです。潔癖症である妹の
体を使ってオナニーをしているところを目撃されれば破滅です。
主人公は快楽に溺れろくに周りを見ていませんが、優美の行動が見えている
プレイヤーはエロ行為に没頭することができません。
しかしこの時点では、優美が1階に降りたところでタイムアップ。主人公の存在には
気づかずに終わります。

以降しばらくは状況に進展はありません。優美が1階に降りて終わるのがわかっている
ため、プレイヤーもようやくTS要素に没頭できます。選択肢を駆使してエロ行為です。
変化といえば、他時代のアイテムを持ってきて使えることぐらいでしょうか。
「大正」からは蝋燭、「昭和」からは内視鏡(クスコ?)と浣腸が入手可能です。
「明治」「平成」のいずれから縄も手に入りますが、これは使用することが出来ません。(多分)

更にパラメータやフラグ条件が揃うと、優美は遂に自分の部屋へ移動をはじめます。
このとき主人公側の描写は今までと大差ないため、いつも通りとメッセージを飛ばして
進めていると、いつの間にかオナニーを覗いている優美に驚かされるはず。
妹の体を弄って快楽に耽る兄と、その様子を見て自分のをしごいてしまう妹。
ここの描写はなかなかに倒錯しています。特に主人公は、蝋燭を自分で垂らしたりと
かなり変態入ってきています。

そして遂に妹が部屋の中に踏み込むのですが、ここで心と体が元に戻るため、以降の
展開に面白みはありません。理性のねじ切れたお兄ちゃんが妹を嬲るので、その手の
シチュが好きな人は、といったところ。



以上、シチュとしては鉄板ですし、文章自体には突出したエロさはありません。
しかし2窓による心理描写に面白みを感じた方であれば、本作を高く評価するでしょう。

なのに点数が低いのは、やはりシステム面が扱いづらい事と、攻略サイトのほとんどが
死んでいて、目的のシーンへたどり着くのに苦労する事、そしてリターンが少ないから。
対象シーンがほんの僅かなんですよね。
点数をつけるのがとても難しいTSエロゲでした。プレイできてよかった作品ですけどね。