そ、そうきたかぁ......。プレイ時間は2~3時間ほどと短いものの、内容は本編と同じ家族計画のそれ。ワンコインで遊べる今なら迷わず購入をオススメできますね。本編の結末に満足できた方ほどこの終わり方は心に刺さるのではないでしょうか。
■前置きという名のいいわけ
本編の感想では結末よりもその過程から受け取った感情について色々と
書いたのですが、別に結末が嫌いというわけではなく、むしろ好きで心地よく見終える
ことができた読み手です。なので本編の後日談を書いた本作の感想では素直に、
本編の結末を好む側の視線で感想を書いています。
■感想とか
いわゆるFD的な作品だと思ってプレイを始めたので見事に虚を突かれました。
3択×2回で意図的に3周見せようとする仕掛けなども周到で、事前情報なしで
これ食らうのは気持ちよく裏切られた気分になれて嬉しかったです。
やってくれるなぁ!とw
内容についてですが、ラストのシーンも良かったのですが、最も印象的だったのは
司が号泣するシーン。あの司が寂しさで泣きじゃくるのは本当に高屋敷の家族を
愛していたのが伝わってきますし、伝わってくるからこそ1人であることの寂しさも
尋常じゃないほどに伝わってくる。悲しいじゃなくて、寂しいの感情ですよね。
そんな1人の寂しさ抱いたまま逝ってしまうわけで、けれど最後の最後に明莉という
家族は確かにできたわけで、でもそのせいで明莉を1人にしてしまったわけで、
それでも明莉が1人で生きていくための術は僅かながらでも伝えられたわけで。
もうここは本当に感情がグチャグチャになる。
最期の最後まで酸いと甘いが混在する人生だった沢村司。けれど
「まずまずの人生だった」といい切れる程度には幸せだったのが見届けたプレイヤーと
してはとても嬉しかったですね。気持ちよく読み終えることができました。
末莉に関してはおそらく人気でヒロインに抜擢されたのでしょうが、家族を得た末莉の
幸せだけを書くのではなく、本編の時と同じく彼女の心にこびり付いている負の感情を
書いてくれていたのがありがたかったです。
具体的には3Pのシーン。最初すんなりと3Pを承諾しちゃって「は?」となって
しまったのは自分だけではないはず。そのまま半ばギャグチックに事が進むものだから
「いつものお笑いかぁ」と思わせてのアレです。昔の末莉。あぁ、この作品も
『家族計画』だなと実感させられたシーンでした。(景でオチる場面も含めw)
そして明莉。
自分も辛いのに周りの人間のために自らが問題を背負い込むところ、自分も辛い目に
あっているのに家族を信じるところ。本当に沢村家の、司と末莉の子孫なんですよね。
けれど沢村の血にも河原の血にも人を貶める存在はあって、そういった者達が自分の
辛さに負けて他人に不幸を押し付けてしまう。また繰り返されてしまいます。
けれど明莉は、やはり末莉のように一人で生きていく決心をして、司のように困って
いる人を捨てきれずに拾ってしまって。司亡き後の高屋敷の家にどんなドラマが
待っているのか想像がついてしまいます。未熟ではあれど、あの沢村司が認める明莉の
物語は続きが見たくありつつも、同時にここで幕引きとなる美しさにもまた得心
できました。
『そしてまた家族計画を』とは、そんな明莉の家族計画であり、あの世に旅立った
司の家族計画でもあって。辛さと寂しさと幸せが常に横並びする家族の物語、
それが『家族計画』であることを最後の最後まで実感することができました。