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amaginoboruさんのはなマルッ!の長文感想

ユーザー
amaginoboru
ゲーム
はなマルッ!
ブランド
TinkerBell
得点
65
参照数
734

一言コメント

見た目こそ萌え然としていますが、中身は色々な意味でハード。可愛らしいヒロインによる、一般的なキャラゲーを好まれる方は要回避です。私的には嫌いではない、むしろ好ましいシナリオギミックですが、該当ヒロインのキャラ付けが弱く、物語に動かされていたのが残念でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

OHP情報も見た目も完全に女の子なのに男の娘。事前情報なしに衝突した方には
ご愁傷様という他ありません。スミレの影に隠れてはいますが、椿の養父レイプ済み
設定もなかなかにえげつない。予備動作なしにレイプグラを投げつけてきたのには
驚きました。

あおじる氏の(今からは想像もつかない)可愛らしいグラ目的で購入された方は
不満かと思われますが、私としては全然アリですね。びっくりギミックとしては成功
していますし、各所シーンもなかなかに見応えあったので。特にスミレのおまけエロ。
警告がない方も別の意味でショッキングなのがまた。モブキャラがレベル高すぎるw

それに純粋なキャラゲーとしても、ヒマワリと桃ちゃん先生はセオリーながら良質
でしたので。ヒマワリはエロゲあるあるの病弱設定ですが、共通からキャラが丁寧に
掘り下げられていて、感情移入するに十分なヒロインでした。

桃ちゃん先生はキャラが立っていたことに加えて、唯一シリアスなしで終始穏やか。
可愛らしいグラとマッチングした、キャラゲーとして良質な内容でした。購入者が
望んでいたシナリオが最後の最後、というのもなかなかに酷くはありますが。


一方で椿・スミレの個性が薄かったのは残念でした。ヒマワリの個性を押しすぎた
結果、二人のキャラが飛んでしまっています。ドジっ子属性や動物に絡まれるなどの
レッテルこそ準備されているものの、彼女ら「ならでは」の良さが見えないんです。

だからせっかくの不意打ちギミックも仕掛けばかりが印象的で、受けるヒロインの
心情がほとんど伝わってこない。悲しむ彼女達の内面に感情が入りこめず、魅力的に
感じられないんです。

なればと物語を追ってみても、椿はヤンパパと対決する無難な締め。スミレはヒマワリと
決着をつけてエンドと、こちらも肩すかし。ヒマワリちゃんの容赦ない罵詈雑言の方が
印象的でした。事情ありとはいえ、メインヒロインが口にしていいセリフじゃないよ
ヒマワリちゃん。「お兄ちゃんのお荷物にしかならないスミレちゃん」は酷すぎるw

ヒロイン達へ寄り添いたくなるよう共通から誘導し、その上でギミック発動していれば
良作判定だったのですけどね。キャラゲーとしてもイチャコラが生きて楽しめますし。
あるいはシナリオ面で盛り上げてほしかった。その両方が成されてない2ルートは、残念
ながら良質な個別と評することができませんでした。


他にも「選択肢でエロい方を取るとバッドエンド」「ヒマワリちゃんの嫉妬が過ぎて
お話が息苦しい」「気合入れて作られたアニメーションのせいでスキップが使いづらい」
など、小さな不満もちらほらと。トータルでは良作に届かない、惜しい作品です。

ただヒマワリ・桃ちゃん先生ルートはキャラゲーとして上々なので、お値段次第では
手に取ってみるのもアリですね。昨今のガチキャラゲーにこそ及びませんが、作中の
雰囲気も悪くないですし。手放しで面白いとはいえませんが、十把ひとからげではない、
独特な作品を作ろうという意志は伝わってきたので。



蛇足
なにげにBGMが良質でびっくりしました。VA(というかkey)を想わせる音質で、
シリアスシーンに用いられる曲はシンセ系の音が効果的に使われていました。
それ以上に良かったのが日常系BGM。何度も聴くことを意識したかのような、耳残りの
良い曲調です。

中でも「時には晴れた日も」「もも」「つばき」「もみじ」あたりが良好。ループを
用いた牧歌的な曲調が、日常エロゲの「らしさ」を殊更強く印象づけていました。
(「つばき」だけはややアダルティな、落ち着いた雰囲気もあります。)耳の邪魔を
しないから、普段流しておくのにも良好ですね。

だのにシステム周りが雑で、セリフ中はほとんどBGMが聴こえないんですよね。
モッタイナイ。同設定を解除するかボリューム調整してプレイするのがオススメです。
聴かずに進めててしまうには惜しいクオリティです。