おバカすぎるコメディ、多少切なさを含んだハードボイルド要素、chapterを追うごとに明らかになる事実と、エンタメ系として上質な作品です。ただエロとしての性転換に期待してはダメ。あくまで物語を進めるための要素としてのみ存在しています。
内調の凄腕エージェントが学園に潜入し、真実を暴く物語。ただし女学生に性転換
します、的な。エロゲ的につい色々と想像してしまいがちですが、性転換要素を
使った性的な面白さはほぼ皆無。ゼロではありませんが、その辺を期待しての購入は
オススメしません。
ですが非エロなら「ならでは」のお約束は色々とあります。正体がバレそうになったり
(あるいはバレたり)、教師と女学生の顔を使い分け調査対象の二面性を暴いたり、
好意的な仲になったりと様々。
条件付きで大人と子供を使い分けられる江戸川コナン、といったところでしょうか。
性転換キャラのメリットを上手く使っています。
その主人公セプテンバーが、いい具合にカッコイイのも本作の特徴です。
中盤まではドタバタコメディ要素が強く、それこそ(女装的な意味で)変態チックな
部分もありますが、Chapter2の個別ルート終盤は渋いところを見せてくれます。
そして何より、自分の都合を押し付けるウザヒロイン美雪を、拒絶しながらも最後は
助けるのがイイ。惚れた女の理不尽を受け入れるのは、この手の主人公なら当然ですよね。
決めるところはしっかり決めてくれる、ナイス主人公です。
ヒロインや脇役も主人公に負けず劣らずの濃い個性を持っています。特に面白かったのが
室長と秘書ですね。室長は変態だし、秘書はポンコツビッチだしで、朝や夜の定時報告が
いちいち笑えますw
パンジーや高田事務員はちと濃すぎる気もしますが、これはまぁ仕方ないかなと。
シナリオも真実の見せ方が丁寧で、いい具合にワクワクさせてくれました。
序盤で空気を掴ませ、中盤から断片的に情報が明かし、最終章で全てを明らかにする
というお約束がしっかり組まれています。
初見は「?」となるシーンにも種明かしがあり、適度に驚きも提供してくれるのも
いいですね。
意外とドンパチも多く、こんなに殺していいのかよ的な部分もありますが、その辺は
プレイヤーの好みでしょうか。リアリティよりもエンタメ性重視の作りです。
ただ古い作品ですので、グラフィックはかなり貧弱。加えて独特なキャラデザインも
人を選ぶかと。男性体での絡みシーンも十分に用意されていますが、エロ要素としては
少々使いづらいかもしれません。
またシステム面が独特で扱いづらいのも欠点。どこに何があるかわかりづらい、
オートスキップ未搭載、CG閲覧をスナップモードで自作する必要がある、など
当時としてもかなり不便。過去ログが全日分あったりと、変なところ凝ってたりも
するのですが。
以上、多少欠点はありますが、スパイ系エンタメが好みならオススメしたい作品。
笑いに謎に恋愛にハードボイルドにと、様々な分野で楽しませてくれる良作です。
女体化エッチに嫌悪感を抱く人も、男性体で行動することで多くは回避できますし、
敬遠することなくプレイすることをオススメします。
以下ネタバレという名の蛇足。
蛇足1
さをりシナリオのラストにはやられました。事件の後片付けをしてくると別れを告げ
出立するセプテンバー。場面は学内に変わり、零子から決別するさをりの姿が書かれて
います。そして零子の「ありがとう」と凄惨な笑み。
プレイ時点ではあの表情と言葉の意味はわかりませんし、セプテンバーどうなったんだよ
と消化不良だったのですが、Chapter3で表情の意味を知った時に、全てが理解できるように
なっていました。
さをりEDの時点で、零子の存在は神崎に取って代わられてるんですね。
そして神崎が生存している時点で、さをりEDにおけるセプテンバーの生死はいわずもがな、と。
そういうことか~、となった瞬間でした。
他にも百の14日目の豹変や、パンジーと高田の正体。さをりと晃が双子であること、
零子の植えつけられた記憶と、ソフトタッチながらエグい要素の多い作品ですね。
この辺が次々と明らかになるChapter3は本当に見ごたえがありました。
蛇足2
28歳のメインヒロインという珍しい本作。ただサブヒロインが全て学生で、
若干ハードボイルドが薄れてしまったのが残念。Chapter2の3ヒロインはいずれも
いい子ばかりだったんですけどね。
蛇足3
TS要素について補足。百とのエッチシーンは彩子フタナリ状態ですが、他ヒロインは
女性体を選べばレズエッチになります。全部攻め側でTS的面白さはありませんが。
唯一Chapter3の男女逆転エッチはややフェチ要素ありでしょうか。相手が美雪で
不快感が薄まっているのもひそかなポイントです。
蛇足4
面白さに反して知名度がイマイチなのは、やはりエロゲで性転換という設定が原因
なのでしょうね。勿体ない話です。