テキストで人物像を書く前半と、グラを交えてイチャエロを描く後半が真っ二つ。共通後半を境に完全分断された、構成に致命的な欠陥を抱えている作品です。要素の一つ一つは悪い出来ではないのですが。
プロローグから中盤まではシナリオ先行で進行します。女子校から共学に変わった
ばかりの学校に転入した主人公。男子編入の賛成派と反対派、真っ二つに分かれた
クラスで一人ひとりと向き合う様が丁寧に書かれています。
経験から人と成りを分析することに長けた主人公のようで、心中で語られるヒロインの
分析が実に興味深い。他名義での作品においても心理描写に妙を持つライターさん
ですが、本作においても如何なく発揮されていました。
ですが主人公君は結局は男性なわけで、女性固有の思考や感情、女性コミュニティに
おける駆け引きなどには、やはり理解が及びません。そこを聡いヒロインや先生が
解説することで、様々な見解や考え方やを楽しめるように書かれています。
発売前にヒロイン選抜投票をやったとかで、16人ものヒロイン候補が登場するの
ですが、その大半を開幕3～4時間でキャラ付けできているのは凄いですね。一次印象
ながらもしっかり掘り下げていますし、出番も分け隔てなく用意されています。プレイ
する目的だったこともあり、この辺りが本作をもっとも楽しめた時間でした。
しかし「恋愛教室」なるイベントが開始する直前から雰囲気が一転。丁寧に描写されて
いたヒロイン達は一気にペラくなり、主人公も深謀遠慮なタイプからエロゲ風チャラ男に
チェンジ。一般的な萌キャラゲーに変じ、以降は個別に入りヒロインとイチャラブして
終わります。
この急な方向転換が本作一番の問題点です。方向性を変えるための物語的な「渡り」が
用意されているわけでもなく、ホント唐突に路線変更しますからね。一例を挙げると、
腹芸に長け政治に強いカリスマお嬢様ヒロインが、異性の目の前で躊躇なく下着姿と
なる知足らずお嬢になりますからね。裏がありそうな性格はどこいったよ！
他ヒロインはここまで酷くはないにせよ、それまでの個性は事実上なかったことに
されて個別は進みます。もうちょい連結させる努力はしようよ...ｗ
一応フォローしておくと、個別自体はそこまで悪くはありません。良作とはちょっと
評しづらいもののエロはちゃんと用意されてますし、不快になるシーンもありません。
ヒロインも前半と微妙に変わってても可愛くは書かれています。短いので物足りなさは
あるかもしれませんが。
シナリオ重視の前半と、イチャエロ重視の後半。この2つが繋ぎもなくバッサリ両断
されてしまった結果、前半と後半の関連性が一切なくなってしまったこと。それが
低評価を食らった最たる理由かと思われます。他にも進行バグや回想シーン未搭載とか
いくつかありますが、その辺は中身が良ければ多少は目を瞑れる部分ですので。
おそらくは経営層、あるいはプロデューサー辺りからシナリオとキャラの両立を求め
られたのでしょうが、それに応えることができずブン投げられてしまった結果かと
思われます。部分部分は決して悪い出来ではないのですけどね。特に前半は独特の
面白さがあっただけに、その先が見られなかったことを残念に思います。