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amaginoboruさんのいれかわ お姉ちゃん、ぼくの身体でオナニーしちゃうの!?の長文感想

ユーザー
amaginoboru
ゲーム
いれかわ お姉ちゃん、ぼくの身体でオナニーしちゃうの!?
ブランド
シルキーズSAKURA
得点
80
参照数
1744

一言コメント

入れ替わり系に良作名作の多いTSエロゲですが、本作もその一つですね。しかしその要点は他作品に比べ少々亜流。序盤こそオナニーやトイレなどのお約束で固められているものの、後半は一般的なエロシチュに入れ替わりをスパイスして新たな妙を引き出しています。他作品がTS要素の一点売りだとすれば、本作は他シチュとのセット売りでTSの良さを教えてくれる抜きゲーです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

家の中で双子の姉と衝突して体入れ替わり。異性の体にムラムラしてオナニーして
徐々にエスカレートして。鉄板も鉄板ですがシーンの一つ一つが要所を抑えている
ため、前半だけでも十分用途たるクオリティです。お姉ちゃんの声もベテラン巧者の
みるさんで安定の演技。

システム周りに多少不具合こそありますが、全体的にレベルの高い作りこみで安心
してプレイできました。TSエロゲは中身が良くてもゲームとして出来の悪いケースも
多いので、安心して遊べる作品はそれだけで嬉しかったり。

そんな本作一番の見どころは「従来のエロシチュに入れ替わりを加えた場合の面白さ」
にあると思います。



◆4通りの組み合わせ
女体化・入れ替わり・憑依に問わず、多くのTS作品は女体を堪能するシチュを中心に
シーンを組み立てています。オナニーやトイレは当然として、女性用の衣服や下着を
身に付けたり、女性側としてセックスしたり、輪姦される側になったり。

興奮する勘所も「男性より強烈な女体の快感を堪能」「女体が火照ってチンポを欲し
がる男の自分」などのシチュに倒錯感を覚え股間をおっ起てます。要は自分本位の
シチュが中心なんです。

たとえ竿役やタチネコがいて物語上はキャラが立っていても、いざエロになると相手の
視点は外に追いやられてしまう。入れ替わりなら相手が男、レズシチュなら相手が女で
自分が女体なら十分。あとは相手が投げる言葉やシチュに酔えばいい。フェラや水着
ボテ腹を強要されたり変態となじってくれればいい。

女としての評価と快楽を与えてくれればいい。変わった自分に酔っている、といった
ところでしょうか。


対して通常のエロは相手の反応を見て興奮します。当然ですが。恋い焦がれる様、
快楽に酔う様、恥じらう様、怒りを覚える様を見た上で次のアクションを起こしその
反応を楽しむわけです。

同じく恋心を伝え幸せそうな表情にしたり、更なる快楽を与えてアヘ顔にしたり、
恥じらいを快楽で飛ばして正気に戻った時の表情を楽しんだり、隙を見せ希望を与えた
ところで心をへし折ったり。相手を自分好みに変えて興奮しているともいえます。

しかし本作はTSモノでありながら相手の反応をも重視する非常に珍しい構成をとって
います。加えて入れ替えることで変わる側・変える側を逆転させつつ進めるため、
スタンダードなエロシチュからも独特な倒錯感を醸し出せているのです。


例えば女装シチュ。入れ替わった状態で姉へ女装を依頼し、似合っていることを
客観的に確認。直後に自身の女体が興奮を催しセックスへ移行します。

主人公の女装ネタは「女の格好をしている男の羞恥心」「男だけど女装してみたい」
「男の娘カワイイ」などの欲求を満たすものです。対して本作は姉に自分の体を女装
させ、客観的に似合っていることを確認し、女装男子へ女として興奮する状況を作って
エロシーンへ突入します。

自分の女装を女体から見て反応するなどナルシーHENTAIそのものですが、だからこそ
興奮の勘所が新鮮です。女装した一人称視点じゃない、自分の体を女装させて三人称
視点+女体から見て得られる性的反応。鉄板シチュのようで実は捻りの入りまくった
目新しい一場面でした。

一方姉はというと、自分の服を着るのに恥ずかしがって着た後も恥ずかしそうに
してるのに弟から誘惑されてチンポおっ立てるんです。「やだお姉ちゃんってば、
自分の服で女装してチンポ立ててるキモーイキャハハでも似合っててかわいーっ」
な状況なのですよ。自分の服で羞恥心を覚えるとか実に罰ゲーム。

状況の異常さ。お姉ちゃんの気持ち。そして主人公の反応。まさにカオスです。
ちなみにエンディング、弟君自身が女装にハマります。お姉ちゃんの女装を見て自信を
つけたとかお前何いってんだ状態ですが、そんなところも本作の妙です。

最後に当シーンのエロCGへ言及すると、女装体の印象が「男の女装」なのが好印象です。
「チンコの生えた女の子」じゃないんです。似合っているとはいえそこは男性。女性と
同じに見えるわけがないし、シチュとして見えてもいけません。

「男だとわかるけど似合っていて可愛く見える」からこそ、弟は女装に自信が持てて
女体が反応したのですから。恥ずかしがっているお姉ちゃんも含め全てがグラへ的確に
起されていて、シチュとグラの完全一致した最高の仕事でした。


他にも純愛ルートのハメ撮りも同じ反応が楽しめました。記念に入れ替わりセックスを
動画に残しておこう、というシチュ。録画される女体弟が恥ずかしがるのを皮切りに、
動きやセリフの端々に女装シチュ同様の倒錯感・興奮が見て取れます。体が戻ったあと
見返すとき、どっちがどんな反応をするんでしょうね。想像するのもまた一興です。

あと姉が言い寄られている相手に電話で断るシーンも面白い。シーン自体はNTR系
エロゲなどでよく見る通話しながらエロですがこれまた新鮮。断り方と姉の反応は
セオリーそのものなんですけどね。

「他に好きな人がいるから」と断って意中の娘に喜ばれるシーン、普通は断る相手も
女の子です。でも入れ替わった状態かつ言い寄られているのは姉。男を相手に断って、
体は男の相手から喜ばれるんです。でも中身は女の子。パっと見は普通の入れ替わり
エロですが、改めて状況を考えると凄いことになってます。


これらのシーンに共通しているのが、男と女・心と体の組み合わせ4通り、それぞれの
状況から行動・反応させている点です。男の心だから、女の体だから。ここまでは他の
入れ替わりゲーと一緒。加えて本作は元の女性側、つまり女の心だから、男の体だから
をも並列で書いています。

先の電話シチュなら「女の体だから、男の告白を断る→男の心として姉が好き→女の
体としても断る理由として適切→他に好きな人がいると断る→女の心として好きな
男に好きな人といわれて嬉しい→でも体は男→男なのに女の体で男の告白を断り、男
から喜ばれるシチュ」の流れが漏らさず書かれているのです。

体は普通の男女だから行為こそセオリーですが、入れ替わった状態でお互いの心も
丁寧に書いているため新鮮味があります。戻ったあとも行動や心情を入れ替わり時の
結果を受けて描写しているので、やはりセオリーの中に特別な妙が見て取れる。
そこには元男一辺倒の作品やシナリオ重視の物語では味わえない面白さがありました。



◆体の共有による心の一体化
そしてもう一つ。二人の心を混ぜ合わせたかのような描写が楽しめるのも特色です。
具体的には快楽堕ちルート、セックスアイテムで体を開発するシチュ以降ですね。

主観で感じる異性体と客観で弄ぶ自身の体にハマりこむ二人。弟だけでなく姉も弟の
体を開発していくのが新鮮です。自分の体にパンストを履かせて足コキさせつつ、男体
にもアナルビーズだかバイブだかをブチ込んで実験。姉だけでなく弟も開発されて
いきます。普通は女体だけですから。

その後いったん体は元に戻ります。んで今度は元の体でのセックスにハマります。
開発されきった女体に堕ちる姉。女を責め自分のものにする楽しさに浸る弟。ここで
お互い本来の性を開発された体で実感します。弟君は自身の体をまだ弄りません。
快楽漬けにした姉の体を客観で堪能している感じ。

男と女、両方の快楽を味わった二人。このまま快楽堕ちエンドかなーとプレイ中は
思ってたんですけどね。まさか入れ替わりプレイを仕込んでくるとは思いもしません
でした。セックスの最中に入れ替わる、男女両方をリアルで楽しめるTSプレイです。

快楽堕ちした姉をズコバコ突きまくり、呂律も回らないぐらいトロットロにした
ところで入れ替わり。姉が受けていた女体の快楽をダイレクトに食らい、一気に攻め
られる側となりアヘトロおちんぽしゅごいの~状態に。姉もこみ上げるチンコの快感に
我慢できず自分の体を突きまくり。

このシチュ、ようやくエロゲに来ましたね。堕ちた女をサドっ気出しつつ攻めまくり、
フニャフニャにしたところで逆転。自分が一瞬でその状態に落とされちゃうんですよ。
色々なものを失いすぎてゾクゾクしますね!(HENTAI

そのまま弟君は快楽の虜に。開発されきった女体に逆らえず、眼前の自分に甘えて
オチンポをねだるダメダメな状態に。しかしお互い高ぶって射精する直前でまた入れ
替え。再び攻める側に戻り、精子をぶちまけてフィニッシュです。

そして最後は入れ替われる状態のまま家を出て二人暮らし。お互いがお互いの体を
貪る快楽堕ちバッドエンド風味、となるわけですが。


この流れで面白いのが、堕ちる過程を3段階で描写している点です。まず女体で
堕とすまでは普通の入れ替わりゲーと同じ。加えて元の男体に戻り、今度は男性として
女性を快楽漬けにして、男として屈服させる愉悦を味わっているのです。

加えて女体⇔男体を行為中に体験し、一瞬で立場が入れ替わる面白さも見つけて
更なる深みに。TSエロゲの多くは女体快楽にハマっておしまいです。しかしそこで
満足することなく、入れ替えの妙を用いて更なる性的倒錯の世界を見せてくれました。


そしてもう一つ。こちらが本題なのですが、二人の個性が希薄になっているのが興味
深い。男女二つの快楽以外の望みを持たないがために、与えられた役割で個性が決め
られているように見えるのです。

姉の体にいるときは与えられる快楽に浸りつつおねだりし、弟の体の場合は男として
攻めつけながらチンコの快楽を味わう。たとえ心がどちらであろうとやることは同じ。
強気か弱気かの差はあれど、体だけで個性が決まってしまっています。女装ルートの
エピローグはそれが特段強く伝わってきます。

こうなるともはや「2つの体に2つの意志」という結びつきにしか見えません。意志に
男女差はなく入る体で性別が決まる。2つの体をシェアリングする色のない2つの魂。
心と体の4分割を書いた純愛ルートとはまるで真逆の結末です。

心の消えたセックス中毒者はエロゲのお約束ですが、入れ替わり要素で理由を結果に
結びつけることで登場人物を掘り下げに見事成功しています。だから一見ただのエロ
バッドに見える結末でも、個性のなくなった理由を考えると薄ら寒さを覚える。
こちらもメインシチュを十二分に生かしたルートといえます。



◆その他気になった点
堕ちルートは微妙に分岐されていますが、その差異がごく僅かだったのは少々残念
でした。入れ替わりが直った上でセックス中毒になるエンドがあるのですが、道中が
ほとんど同じでラストもCG差分のみ。文章のみの分岐です。

こちらは姉の体を快楽漬けにしたのち元に戻り、女のセックス依存者一人ゲットだぜな
結末。自身が女体で再三開発されアヘアヘ言わされてたところ戻って立場逆転な展開、
変則的な調教ゲーとなっていて、これはこれで十分面白かったです。

しかし女装+入れ替わりルートと内容がかぶりすぎたことで、どっちつかずな印象を
受けた方も少なくないと思います。とはいえミドルプライスですし、これ以上望むのも
贅沢かなとも。なまじ内容が良かっただけに欲が出てしまったかも。


あとは弟の声。やはりベテランの一色ヒカルさんが担当されているため演技は問題
なし。ですが声のトーンが女性に寄りすぎて、姉と区別がつきづらいのが勿体ない。
もう1歳ほど声の年齢上げてもよかったような。

しかし一色ボイスに注文をつけるとか贅沢にもほどがありますね。TSエロゲでこんな
布陣、2度ないかもしれないのにw 



◆まとめ
以上から「従来のエロシチュに入れ替わり要素を加えることで、新たな面白さを提供
してくれるエロゲ」と評します。女装・電話・道具プレイ・快楽堕ちなどの鉄板シチュを
心と体の組み合わせを用いて新たな見どころを与えてくれたエロゲです。

ゆえにTSエロゲとしてはやや傍流に属します。序盤こそTSお約束シチュが用意されて
いるものの、後半は普通のセックスっぽいシーンが多いので。自分視点の快楽だけを
追うのではなく、相方の挙動にも目を向けることでより楽しめるかと思われます。

しかし入れ替わりの醍醐味である「心と体の差異」を追うのであれば、これほど適した
作品はありません。ほとんどの作品は主人公側の挙動のみで、入れ替わった相手は
エロ道具にされてしまいますので。

抜きゲーでお互いを表現することでエロを成立させるTS作品(ストライクゾーン狭すぎ
な気もしますが)を見たいならオススメです。名作と呼ぶに値する、素晴らしいエロゲ
でした。