星継駅蒐集箱でプレイ。星継駅シリーズの2作目。作中で更に物語が分割されていて、その全てが駆け足気味。脈絡薄く急接近する作中人物達が唐突で、尺の短さが惜しい内容でした。
総プレイ時間10H強で1部あたり3~4時間ほど。前作に当たる擾乱譚にも展開の早いシーンは
ありましたが、今回はより顕著で性急さが気になるレベルです。
それでも1話目にあたる現代編はトゥアンと瑛が昔なじみで二人の心の動きは自然でしたし、
未来編もゴドーと瑛の特異性を考えればまぁ納得です。ド派手でドタバタな展開で強引に
持っていった感もありますが。
問題は過去編。出会って間もない相手に随分な愛着を持っていて唐突感がぬぐえません。
特にシラギクとクララ・マリーの因縁→和解→別離の流れは早すぎる。いつの間にそんな
親密になったのよ、と。並列で設定も次々と消化していて、ぎゅうぎゅうに詰め込んでいる
のがわかります。普通のエロゲであれば幼い双子の愛しさで帳消しに出来るところですが、
「物語」を大切にするシリーズだからこそ、尺を取り丁寧に紡いでほしかったです。
それでも「未知への憧れ」の見せ方はやはり上手く、特に最終盤の物語と未知を憧れで
ジョイントさせる手法は見事。紅殻以来となる久しぶりのテーマですが、あえて宇宙を
ほとんど見せず、かつその不安と高揚感を伝える見せ方。流石という他ありません。
憧れを忘れ日々を生きる人々、そして読み手への賦活剤には十分だったかと思います。
こうなってくるといよいよ3作目「疾走軌」が気になるところですが、プレイ前の懸念と
して声優さんの少なさが挙げられます。正直本作でもシラギクの声はややミスマッチな
印象を受け、ゴドーとキャスティングを入れ替えた方がよかったんじゃ?という印象です。
まぁそうなると今度はアージェントと瑛が被りますが、そっちのが良かった気が。
ましてや疾走軌は「乗り換え待ち」の内容からして沙流江が加わるわけで、口調の異なる
3人を捌けないんじゃという懸念が。野月さんは演技巧者であっても幅はお世辞にも広く
ないので少々心配です。
そしてグラフィック面では立ち絵の画一さがいけてません。シラギクと瑛は故意でしょうが、
アージェントも同じポーズがあって、ゴドーは左右の手を変えただけってのは流石に拙い。
髪をかき上げる仕草が使いやすいのは理解できますが、キャラを限定していただきたいところ。
それでなくとも同一性の高い人物が揃っているのだから。
以上、短中編のメリットが上手く生かされていた擾乱譚に対し、本作はデメリットが
前に出てきてしまった印象。加えて前述のグラや声の重複ぶりなど欠点懸念が散見され、
クオリティはやや低めになってしまっています。ただつなぎの役割は十分果たせていて、
疾走軌の内容次第では評価が良くも悪くもなりそう。とりあえず現時点では「一歩足らず」の
評価とさせていただきます。
蛇足
打線は追加点を取れず、中継ぎは失点するもなおリード、といったところでしょうか。
逃げ切れることを願いつつ疾走軌を楽しみにしたいと思います。