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amaginoboruさんの星継駅疾走軌の長文感想

ユーザー
amaginoboru
ゲーム
星継駅疾走軌
ブランド
raiL-soft
得点
75
参照数
555

一言コメント

星継駅シリーズのラストですが内容はむしろ外伝風味。「時代を超えて集まった面々によるもう一つの物語」的な立ち位置です。内容も非常に明るいもので、旧作と比べるなら信天翁航海録が最も近しい。もう一度レイル作品の笑いが見たい方にうってつけですね。擾乱譚・年代史はプレイしなくとも何とか理解できますが、やはり読み終えてからの方が楽しめるでしょう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

『駅』の過去現在未来から集められた主役達が巨大な列車の中に閉じ込められるお話。
異界を語ることが多いレイル作品、今回もその不思議や恐怖、神秘を見せてくれるのかと
予想していました。が、ふたを開けてみれば中身は濃ゆいメンバーと列車車掌のドタバタ
お笑い物語でした。

星継駅シリーズは比較的笑いの要素が強い作品ですが、本作は更に特化した形です。
ゴドーのゴリラ!な暴れっぷりやアージェントの嫉妬&巻き込まれ属性を、とことん
見せてくれますし、新キャラのキモい(※名前です)もこの上なくキモい。
それなりに不幸な子なのに全然同情したくないあたりがなんとも「希」調ですね。同席
するメンバーも従来通りの反応を見せてくれて、終始笑わせてもらいました。

その分旧作品では主題だった異界の要素は薄め。今回もレイル作品ならではの神秘性や
恐怖などを見せてはくれますが、笑い成分が強すぎて横に押しやられていたような。
霞外籠や紅殻町、花散谷のような空気を求めてプレイすれば、擾乱譚や年代史以上に
落胆することでしょう。信天翁と比べてすら、クライマックスの盛り上がりを考えると
格落ちしている印象です。お話自体は面白かったのですけどね。

エロに目を向けてみると、さすがに人数が多すぎたようで浅く広くな印象です。あと
未遂のシーンがかなり多め。キモいの誰得エロシーンといい、お話のためのエロが
多かったような。元より使いづらいレイル作品のエロですが、今回は輪をかけて扱い
にくくなっています。それでもアージェント?の足コキはグッドでした。ちなみに
シラギクと瑛の絡みは淫走軌オンリーで未収録です。ふざけんなし。


点数は旧レイル作品より低めにしていますが、これは私が同ブランドに期待している異界の
要素が少なめだったことによります。ですが出来が悪いわけではなく、希氏のテキストで見る
コメディ作品としては実に上質。あちこちで笑える上にテンポもよく、作品のバランスは
信天翁よりも良いぐらいです。純粋なコメディエロゲとして見ても良好。十分笑いが
取れていて物語もおろそかになっておらず、このジャンルとしては特に楽しめました。

ということで、プレイ判断基準を間違えなければ存分に楽しめるかと思われます。
「信天翁みたいなエロゲをまたやりたい」という方にはぜひオススメしたい作品です。
ただシリーズ過去2作品に触る必要があるためボリュームはちと重め。幸いシリーズ
通してノリは軽めなので、気を張らずにゆっくり進めるのがよろしいかと。

逆に異界の四方山に重きを置く、従来のレイル作品を期待する方には物足りない
でしょう。物語も雰囲気も悪くはないもののトーンダウンは否めません。希氏の少々
はっちゃけたテキストを楽しむぐらいの感覚でプレイするのが良いかと思われます。



蛇足
シリーズの感想を常に野球に例えてきましたが、今回は珍プレーや乱闘、観客のドタバタで
散々楽しんで満足しちゃった、みたいな終盤でした。試合は勝ったしいい試合だった
けど、他の部分が面白すぎた、的な。でも見て損したとは思わなかったですね。むしろ
大満足ですね。星継駅シリーズ、よかったです。


蛇足2
野月まひるさんの3役はやはり分担した方が良かったような。沙流江はこの上ない
ハマり役だったので、シラギクと瑛を他の方に振ってほしかったですね。やっぱりお金が
なかったのかな。秋野花さんは性格が両端なのもあって違和感なかったのですけどね。