話の流れが「AIR」と似通っています。ノリが合わなくても、頑張って2ヒロインほどクリアしてみてください。そこからが鬱ゲーとして本番です。
美術部3人の個別シナリオは正直イマイチ。あくまで本題の伏線としての役割で、単体としての出来はかなり微妙でした。
ですが陽詩美シナリオから始まる鬱々とした雰囲気は見事。
彼らの世界崩壊に対する恐怖や怒り、脱出不能な状況への絶望と諦め。
そしてスウシナリオでプレイヤーが感じる切なさ・やるせなさと、プレイしつつも目を背けたくなるような描写ばかり。
主人公達やプレイヤーをかなりの勢いで苛め抜いてくれました。
ただ最後の四千日目だけはやや不満。スウの台詞や主人公が激昂する理由が感動を呼ぶためなんですよね。
ここまでやったんだから、最後まで崩壊する世界を書き通して欲しかったなぁと。
賛否両論なラストの書かれ方については、私は賛の側です。
スウが停止するからこそ、最後のリボンとデッサンにより切なさを感じられるのでは、と。
その上でFDを出し、ハッピーエンドをしっかり補完しているのも非常に好印象でした。
個別に評価したいのがBGM。状況・心理描写共に舌足らずなテキストを、オリジナル曲・名クラシック共に上手く補完しています。
VENUSによる躍動感がよく評価されていますが、CG1枚絵シーンなどを見るとBGMも頑張っているのが良くわかります。
以上、トータルクオリティでは他の名作に比べ粗が目立つものの、シナリオは遜色劣りありません。
埋もれた名作と呼ばれるに十分値する作品かと思われます。本作の存在を教えてくれた方に感謝。